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真実の愛らしい

家族とあいさつをすることもできず。

旅のための荷物をまとめることもできず私は普段着のまま獣人国の馬車に押し込まれました。


私を守るというよりも私が逃げないために護衛がきっちりと周りを固めています。


なにが起こったのかほとんど意味がわからないまま馬車は進んでいきます。


いまわかっていることは竜王様の番として私が見いだされたという事と、私は番の義務を果たすために連れ去られているという事だけです。


私は何故そんなことになってしまっているのか馬車に乗っている人に聞こうとしました。

そもそも竜王様は私を見るのも嫌だという感じで別の馬車に乗っています。


わたしと同じ馬車に乗ったのは竜王様の腹心の一人だったようで、獣人には番と呼ばれる魂の片割れとも呼べる存在がいる。

番と出会った獣人はそれを求めてしまう。

だが番をなんらかの事情で失うと狂ってしまうか衰弱してしまう。

だから高貴な者に番が見つかったら城で保護しなければならない。


そして竜王様には愛するものがいるので魂の求めを消し去るために片角を折った。


そう淡々と話してくださった。

私への同情心は全くなく竜王様がいかに、いたわしいかという話ばかり聞かされた。

それにまるで私も竜王様を求めている様な前提で話されてしまってとても困った。


何とかその誤解を解こうとしたが上手くいかなかった。

少なくとも獣人の国にとって私はとても名誉で嬉しい事になっているという前提で全てが進んでいるという事が分かりました。


私は家に残してきてしまった家族が心配でした。

うちの家族は貴族としてはとても珍しい家族の仲がとてもいい家でした。


父と母が悲しんでいないか。姉は、小さな弟は……。と考えるだけで心配でした。


* * *


大きな宮殿に着きました。

来たことは無かったけれどそこが獣人国の宮殿なのだとすぐにわかりました。


意思も何もなく連れてこられた私は宮殿の端にある部屋に押し込まれました。

その部屋はよく言えばシンプル、悪く言えば何も無い部屋でした。


少なくとも人の貴族の常識では大切に扱う人間にあてがう部屋ではありませんでした。

周りに人気(ひとけ)はまるでありませんでした。

あの恨むような目。そしてこの部屋。

この国が私にどういう扱いをしたいのかはすぐに察することが出来ました。


先ほど角を折っていた竜王様が私の前に再び現れました。

頭には包帯が巻かれ手当てがなされている様でした。

全てが間違いだったと言われるのを少しだけ期待したけれど私に対する憎々しいというのを隠さない視線がそれが違うものだと物語っていました。


「俺には愛するものがいる。幼いころからの婚約者カトリーヌだ」


うなるようにその人、私の番は言いました。


「だから俺は絶対にお前を愛さない」


であれば手放して欲しい。

ただ番というだけでこの国に無理やり連れてこられて閉じ込められて、憎悪を向けられる。

何故私がこんな目にあわなければならないのでしょう。



「お前は番の義務さえ果たせばいい。絶対につけあがるな!!」


番は、この国の竜王様はそう言いました。

何も持たされず、この場所に閉じ込めるように押し込まれた私にどうやってつけあがる要素があるのだろう。


竜王様はなるべく私を見ず、匂いも嗅がないようになのか、顔をそらしたまま足早にこの部屋を出て行った。


どっと、涙が溢れました。


「ううっ、あああ、わああああああああああ」



私は声を出して泣きました。

獣人国は武力が高いとされる国です。

きっと誰も私を迎えに来てくれることはないでしょう。


何故、何故……。

勝手に番と判断されて、勝手に番の義務を決められて、何故私は悪意を向けられないとならないのでしょう。

番の義務……。


あの人にはすでに愛する婚約者がいるそうです。

その人がお妃様になるという事も分かりました。


私につけられた侍女は監視も兼ねているようでじとりとした目で私を見てくるばかりです。

番の義務について聞くと、強い子を産むことだと端的に教えてくださいました。


吐き気がしました。


獣人の国は私を国王の子を産むものとして奪ってきたようでした。

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