第1話 召喚
※この物語は作者の日頃から溜まっている鬱憤を晴らすため、シリアス作品で書くことが出来ないギャグを発散させるために書かれております。
その為、作者の趣味全開のパロネタ、メタネタが多分に含まれております。その点ご了承の上閲覧ください。
あと、行間を書くのが面倒なので会話多めです。
「ここは……何処だ?」
見知らぬ空間。石のレンガに囲まれた無機質な部屋に僕はいつの間にか立っていた。
確か……コンビニに向かってる途中に目の前が真っ白になって……それから……どうなったんだ?
そしてふと、後ろを見やるとそこには、見知らぬ女性が立っていた。
綺麗な濃い青のショートカット、凛とした出で立ちに思わず見とれてしまいそうになる。
そしてなんと言っても、その姿。明らかに"メイド"と呼ばれる格好そのものだった。
「おめでとうございます」
カランカランとベルを持って私の何かを祝福してくれているようだが……まるで福引に当たったような感じにさせられる。
しかし、この状況、周りの景色といい……もしや……
「貴方は勇者一行の1人として、この世界に召喚されました」
「僕が……"勇者"……!?」
「その通りでございます」
そうか、この展開、やはり異世界召喚か!
そう思うと、なんか興奮してきた。そりゃあ男子高校生だもの、しない方がおかしい。
状況を把握し、思いを馳せる私に対して、目の前の彼女は深々と頭を下げた。
「私は貴方々のサポートを務めさせていただきます『カロリーヌ=ナンカ=ソレッポイ』でございます。以後お見知り置きを」
ん?
なんかツッコミどころがあったような気がするが……ま、まあ、取り敢えず人の名前にケチ付けるのも失礼だし、スルーしておこう。
目の前のカロリーヌさんは私に再び一礼すると、今度は何やら取り出し、私に差し出した。
「まず、勇者様にはこちらの書類をご覧頂き、この国の住民票の登録をして頂きます」
「へ?」
「あ、これから居住していただく家の住所の方はもう既に記入しておりますので、あとは生年月日、名前、続柄、今日の日付等を記載していただければ結構です。続柄は前の世界で例え配偶者がいたとしても、とりあえず世帯主でお願いします」
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれ……なんか違くね?」
「どうしました? あ、もしかして、性別は女性でございましたか?」
「いやいや、そうじゃあなくて……」
「あ、すみません、こちらの世界の今日の日付をご存知でございませんでしたよね。こちらの世界の今日の日付はですね……」
「いや、そうでもなくて……」
僕は一息吸い込み、言葉にする。
「何か……違くないですか?」
「何を言いますか、貴方様にはこれからこの世界で生きていく為にも、こういった行政機関への手続きは必須事項になります故、貴方には必ず記入して頂かないといけないのです」
「あぁ、いやぁ、分かるんだけどさぁ……」
「そもそもこちらの社会情勢をひとつも知らないのに、我々の手続きに対して口出ししないでいただきたい。それとも、勇者様は自分の世界の住民登録の方法すら知らないのですかね?」
「ま、まあ……未成年だからしたことないし……」
「なんと! これほどまでに異世界の一般知識は衰退していたのですか……なんと悲しきことよ、勇者様もそんな世界で生まれてさぞ悲しかったことで……心中お察し致します」
「お察しされてもなぁ……」
「こちらの世界では子供でも知っている一般常識ですよ? ええっと……メモメモ」
そう言って、カロリーヌさんは持っている手帳に何かを書き込む。
「3人目の勇者様は一般常識も知らないあんぽんたん……っと」
「待て待て待て、心外なことを書くのは辞めていただきたい」
「でも、事実でございますよね?」
「そ、それはそうだけどさ……」
クソッ……ぐうの音も出ない。
流れというか空気というか、とにかく何かが悪いから話を変えよう。
「そ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。僕の名前は──」
「『城ヶ峰 新汰』さんですよね。年齢は17歳。性別は男。公立荒牧高等学校に所属し、得意教科は現代文、苦手教科は化学。彼女は無しで好きなタイプの女性は……」
「待って待って待って!!」
「どうなさいましたか? もしかして、性別は女性でございましたか?」
「事ある毎に僕を女性にしようとしないでくれ!」
息を整え、相手に思いの丈を伝える。
「え、なんでそんなに僕の個人情報知ってるの? 怖っ」
「そんなの普通でしょう。召喚される側の人間の情報くらい知っていて当たり前の事でございます。寧ろ、全く名前も素質も知らない人間を召喚などというギャンブルをしてどうするんですか?」
「いや、確かにそうですけども……」
「というか、『城ヶ峰 新汰』だなんて……プークスクス」
「笑うなよ、人の名前で!!」
この人……さっき僕が我慢したことを堂々とやりやがって……あの苦労はなんだったんだよ……。
というか、プークスクスって笑う人本当に実在したんだ……。これはあれか? 異世界人の名前があまりにもこっちの世界の名前の付け方と違うっていう文化の違いからくる笑いか?
「というか、貴方の名前のほうが大概でしょ。さっきはツッコまかったけど、なんだよミドルネームとラストネームの『ナンカ=ソレッポイ』って!」
「『カロリーヌ』なんて名前、なんか以下にもそれっぽいでしょ?」
「いや、それっぽいけどさぁ……先祖はどういう経緯でその名前になったんだよ……」
「私の家は代々王家に仕える身でして、王家から直々に授かった名前でございます。ちなみに『ソレッポイ』家の初代当主の名前は『セバスチャン=タシカニ=ソレッポイ』でございます」
「うわぁ、タシカニソレッポイ……」
それ、王家に遊ばれてないか?
それはさておき、先程カロリーヌさんから興味深い発言が出た。
「ん? ってことは、僕には何かしらの素質があるんですか?」
「ええ、勿論でございます」
「もしかして何かしら、凄いスキルとかあるんですか?」
異世界召喚と言えば、そう、チートスキル。某投稿サイトではお馴染みの要素だ。
この世界でも、そんなものがあると思うと非常に興奮してしまう。
ワクワクしている僕を他所にカロリーヌさんが口を開く。
「その辺りは、後ほど説明いたします」
「あ、はい……」
なんか冷めた様子で僕を制止する。そんな反応をされたら、僕も萎縮してしまうじゃあないか。
すると、カロリーヌさんは非常に低い声色でこちらに話しかけてくる。
「というか、貴方ももっと驚くことがあるでしょうに」
「え?」
彼女はため息を1つつくと次の言葉を紡ぐ。
「『何故言葉が通じているんだ』とか、まずいっちゃん最初に驚いてもいいところだろ」
「た、タメ口!?」
「こちとら青髪碧眼白肌の明らかな見た目異国人だろ。普通は『日本人なんですか?』とかなるところだろ」
「いや、もうここまでペラペラ話されたら日本人と勘違いしてもおかしくないでしょ。てか、日本を知ってるんですか、貴方?」
「オタクカルチャーデユウメイナ"ニッポン"、コッチノセカイデモ、ニンキ、シラナイヒト、イナイ」
「何故急にカタコト?」
「ニッポンゴ、トクイジャ、アーリマセン」
「そのゴリ押しでイケると思わないでくださいよ?」
「そんなことより、早くここに記入してください。話が前に進みませんよ?」
「え、あ、はい……」
僕は差し出されたペンと住民票らしき紙を受け取る。なんか、思ってたものと違うけど、まあ、致し方ないか。
「この後は勇者契約書にサイン、あと勇者保険にもサインをいただきます」
「ゆ、勇者保険!?」
耳を疑う。初めて聞く言葉だったからだ。
「当然でございます。勇者の戦闘時に出た被害の補填や貴方々の治療の費用は誰が賄うのですか? もしかして、貴方様はそれが払えるほどの財をお持ちなのですか?」
「い、いいえ……」
「ちなみに、人家の壺割りやタンスの中の窃盗は保険適応外ですのでご注意ください」
「そんなハイ○ルやア○フガルドの勇者みたいなことはしないですよ……」
取り敢えず、僕は言われるがままにペンを握った。