うしになっちゃった
家の中でボールを投げて遊んでいたら、ママの大切なお皿を割っちゃった。
「どうしよう。どうしよう」って言ってたら、『ボンッ』と大きな音がして、ぼくはうしになっちゃった。
「もー、どうしよう」
「もーもー」と、ないてたらママが来て、うしになったぼくを見て、気をうしなっちゃった。
ますます、どうしよう。
パパが来て、ぼくを病院に連れて行ったら、お医者さんがちょうしんきでぼくの体を調べた。お医者さんは、「おなかのちょうしがよくないみたいですねえ」と、言った。
どうしよう。もとにもどらない。
「念のため、ちゅうしゃをしておきましょう」
お医者さんが言った。ぼくはいたーいちゅうしゃをうたれてしまった。
病院の帰り道、近所に住んでいるはるちゃんに出会った。
「こんにちは」と、はるちゃんが言ったけど、ぼくはパパのうしろにかくれた。
はるちゃんが、「こうじくん、どうしたの?」ってきいた。
ぼくは、「うしになっちゃった」って、答えた。
うしになったぼくを見て、はるちゃんは驚いた顔をした。
「どうしてうしになっちゃったの?」と、聞いてきたので、ママの大切なお皿を割っちゃって困っていたら、『ボンッ』って大きな音がして、うしになっちゃった話をした。
ぼくはボソリとつぶやいた。
「こんなのひじょうしきだよ。どうしてこんなことになっちゃったんだろう?」
すると、はるちゃんが聞いてきた。
「お皿を割ったことは、もうママにあやまったの?」
「まだだよ」
「あやまったほうがいいよ。悪いことしたら、あやまるのがじょうしきだよ。」
はるちゃんの言葉にぼくは、はっと気がついた。ぼくはママの目をごまかすことばかり考えていた。ちゃんと悪かったことをみとめて、あやまろうなんて、少しも考えていなかった。
「ぼく、帰ったらすぐにママにあやまるよ」
ぼくがそう言うと、はるちゃんは、「がんばってね」って、おうえんしてくれた。
家に帰って、ママに「お皿をわってしまって、もうしわけありませんでした。家の中ではボール投げをもうしません」って、あやまった。ママが、「はんせいしているのね。もう、しょうがないわね。ゆるしてあげます」って言ったら、『ボンッ』って大きな音がして、ぼくはもう、うしじゃなくなっていた。
おしまい
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