リリィとユリウス~恋人になったら何したらいい?~【好感度S】
考え過ぎちゃう子なリリィです。
それと今まであまり出ていなかった下の妹二人にもフォーカスをあててみようかと
学生時代からの腐れ縁であるユリウスと晴れて恋人同士になった私。
だが早速困ったことが起きていた。
恋人になったはいいけど……『何をしたらいい』のだろう?
自宅の居間にて、私は下の妹達と歓談していた。
四女メールと五女リム。
メールはケイトと母親が同じでリムは私と母親が同じ妹だ。
「え?恋人が出来たらする事?何だろう?うーん、模擬戦とか?」
「おいたわしや我が姉よ。あなたは脳みそまで筋肉で出来てしまってますね。何処の世界に模擬戦を日常とする恋人たちが居るんですか?」
「はぁ?あたしは彼氏できたら模擬戦むっちゃしたいけど?てか脳みそまで筋肉とか失礼にも程があるじゃん!言っとくけどあたし、お姉さんなんだけど?」
「姉と言っても1歳しか違わないですからね。はぁ……事実を指摘してあげているのにそれも受け入れられないとは。脳みその筋肉化が進行しすぎて手遅れな様です」
「何ィ!妹の癖に生意気な!」
「何ですか姉の癖に堪えのない人ですね!」
目の前で下の妹二人が掴み合いの喧嘩を始めた。
うわー、懐かしい。
私も小さい頃にケイトとよくこれやったわ。
違う事があるとすれば私達の掴み合いは一定の年齢で終了したことだ。
まあ、お互いある程度理性的に話し合うことが出来る様になったのが大きいと思う。
ちなみにこの二人、情けない事に成人してもこれだ。
「とりあえず二人とも止めなって……まあ、メールのはあんたらしいアドバイスだけどさ。ユリウスは『純粋な』魔導士系だから模擬戦したって試合にならないよ」
ここでいう模擬戦は格闘戦を指す。
ちなみに『純粋な』魔導士の比較対象は魔導士系でありがなら格闘も得意なケイトを指している。
魔導士で、格闘家で、ギルドの受付嬢……何気に多彩ね、あの姉は。
「そもそも、恋人同士で殴りあうだなんて野蛮です。これだから恋のひとつもした事ない姉は……」
「はぁ!?あたしだって恋のひとつやふたつくらいねぇ」
「まあ、あるんですか?」
「あるわけ無いでしょ!!」
「威張って言うことじゃないでしょう……」
この二人は正反対の姉妹だ。
メールは戦士系で直感型、肉が大好きで野菜は苦手。
リムは魔法系で理論型、野菜が大好きで肉が苦手。
よくこうやって喧嘩をしているが嚙み合えば抜群のコンビネーションを見せる。
噛み合えば、だが……
「やれやれ……それでは私の意見を。やはり恋人同士となると薔薇の花園を歩きながら愛を語らうとかどうでしょう?」
流石は我が家一のロマンチスト。
まあ、でも当たらずともという部分はあるかもしれない。
何せユリウスは割とロマンチストな一面がある。
「薔薇なんか食べれもしないじゃん。何がいいんだか」
ちなみに私は若干メール寄りの考えだ。
いや、食べるとかそうじゃなくてあまり花を愛でる習慣がない。
「こいつ………そ、それでですね。やはりどちらともなくお互い見つめ合いそして熱い口づけ……はぁぁん、素敵です!」
まあ、恋愛脳なこの子ならそこに行きつくわね。
うん、わかってた。
「おえ、甘すぎて吐き気がしてきたわ」
「あら、模擬戦なんて脳みそ筋肉発言の1000倍はマシですけどね」
「何ィ!やるかぁ!!」
「のぞむところです!」
掴み合い2回戦勃発。
まあ、リムはちょっと夢見がちな所があるわね。
それにしてもやっぱりキスか……うーん、難易度が高い。
してみたいんだけどなぁ、キス。
ただ、初めてのキスの相手は彼ではなく好きでもない男に無理やり奪われたものだ。
その後にされた行為も含め記憶に深く刻まれ男性恐怖症となってしまっているのでやはり躊躇してしまう。
出来ればユリウスに記憶を上書きしてもらいたいのだが上手くいくかは不安。
なのでそういった行為についてはあまり期待しないように彼には伝えている。
「リム!あんたって本当にむかつく。表に出なさい!」
「上等です。言っとくけど私はヒーラーなので武器使いますからね!」
ねぇリム。ヒーラーっていつから物理職になったのかな?
二人は私を置いて外へと出て行った。
仲良しなのはいいけどあんまりうるさくしてたら怒られるんだけどなぁ。
「……仕方ない。あの人に聞いてみよう」
私は掴み合いをする仲のいい妹達を置いて居間を後にした。
□
「恋人になったらする事?」
2階の広間で編み物をしているレム家の家長、アンママに話を聞きに行った。
彼女の本名はレム・アンジェリーナ。ケイトとメールの母親だ。
我が家は一夫多妻制なので母親が3人いる。
まあ、そういう家だけどこの人が上手にまとめてくれているのでそれに関するトラブルはない。
「そう。確かアンママは父様と恋人だった期間があるよね?」
「あー、うん。最初に結婚したのがあたしだから確かにあるよ」
「何か特別な事した?」
アンママは顎に手をやり考える。
「どうだろうなぁ。あたしはあの人の事大好きで絶対付き合ってやる!ってアプローチしてたけど、いざ恋人になった時に確かに困ったわ。『あれ、何したらいいんだろう?』って」
やっぱりそうなんだ。
付き合うってそういう事なのかな。
「まあ、定番なのはデートよね?ユリウス君、よくあなたを歌劇に誘っていたでしょう?ああいうのに行ってみたり……後は彼の家でまったり過ごすとかもいいんじゃない?ちょっとご飯作ってあげたりとかして」
うーん……どれも付き合う前からしてる。
「あなたは私と似てて色々考えちゃう子だものね」
「アンママもそうだったの?」
「そりゃもう。先の事とか周囲との関係とか色々考えてしまって中々お父さんに告白できなくてね。メイシーが『見ててイライラする』ってお尻叩いてきたくらいよ。逆にメイシーは直感でイケイケな所があるけどこっちはケイトに似てるのよね」
確かにケイトも母様も割とアクティブだ。
母様は何というか判断が無茶苦茶速い。
そして躊躇をせず自分の欲望には割と忠実。
娘の前だろうが甘えたい時は甘えるような人だ。
「あのね、リリィ。大事なのは付き合っているから何か特別な事をするって言うよりも日々相手に好きとか感謝の想いを言葉で伝える事だとあたしは思うよ」
「言葉で……?」
「あたしはお父さんのおかげで若くして死ぬ運命を乗り越えられたの。そしてメイシーやリゼットが家族になってくれたおかげで6人の可愛い子ども達に恵まれて笑い合いながら暮らしているわ。ひとりでは決してできなかった事よ。だからみんなに感謝してる」
感謝か……
私もケイトやアリスが支えてくれたから学校で酷い目に遭って引きこもった時にやり直せた。
そしてユリウスのおかげで未来を夢見ることが出来る様になった。
「感謝を忘れずにいることを意識してご覧。そうしたらこんな事がしたいかとか自ずと浮かんでくるようになるよ」
「ん。ありがとう」
「ところで下が騒がしいようだけどまたメールとリムね。あの子達見てたらメイシーとよくケンカしたの思い出すな」
「母様とアンママが?」
「掴み合いまではしなかったけどね。そしたら今度はあなたとケイトが掴み合いするようになって更に時を経て今度はあの二人。何か楽しいね」
「ん。そうだね」
□□
翌日、職場でミーティングしながら傍らに立つユリウスを眺めていた。
あんまり意識しなかったけど、こいつ思ったより背が高いな。
私より頭ひとつちょっとは高い。やっぱり男の人だな。
あっ……
「それじゃあリリィ君。朝のミーティングはこれくらいで」
「襟、変に曲がってる」
何気なく彼の襟を直し……
「えっと……」
「いつもありがとうね。ユリウス」
自然と彼への感謝の言葉が口から出た。
彼の顔が赤くなっていく。
ああ、何だ。こんな簡単な事なんだ。
今、凄く恋人らしい事をしている気がする。
ただひとつ、大事な事を失念していた。
「だ、団長。流石に朝から熱すぎです」
「あっ……」
「何か部屋の温度上がって来たわ。窓開けないと」
「えーと……」
「これは後で団長から聞く恋バナが楽しみですね」
「あぅ……」
時と場所を考えないといけなかった。
みんなからの冷やかしを受け一日恥ずかしさを感じながら仕事をする羽目になった私であった。
ちなみにこの姉妹ですが異性との交際経験があるのは長姉のケイトのみ。
ただ、彼女は男運が壊滅的に悪いのでロマンチックからは程遠い恋ばかり。最近はふてくされています。




