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 ~~~卜伝戦後 立花唯視点~~~



 山を下りた私はタクシーを拾い、すぐに家に帰った。家の前につくと、たくさんの警察が入っており、現場の証拠を集めている。道場内から何人もの人が救急車に運び出されている。中に入ると部屋は切り傷でズタボロになっており、特におじいさまの寝室の部屋はそれがひどく、左側は大きな穴が開いている。ここで壮絶な戦いがあったことが見て取れる。

 なんで?どうしておじい様が倒れているの?

 そして部屋の右側にはおじいさまの死体があった。動かない肉となった、おじい様だったものを見つめる。


「うそ...」


 信じられない...おじい様ほどのものが戦った末に殺された?一体誰に?なぜそんなことを?

 おじい様は私が知っている中では誰よりも強く輝かしい人間だ。私だっていまだに一本もとったことがないほどの。

 私の檻の中に閉じ込めた人間の一人でこそあったが、私に最大限配慮し常に優しい祖父として接してくれて、父親の行き過ぎた教育をよくいさめてくれていたのを知っている。

 ぐちゃぐちゃの感情とこんがらがった思考がより混乱を加速させる。


「すいません...僕が...」


 部屋の中にいた井上はクッ、と顔を下にし目を合わせて放そうとしてくれない。


「説明して...」


「相手は一人で黒い鬼のような男でした」


「道場の人たちはかなわなかったの?」


「20人近くいた道場内の人間は夜襲ということもあり、全員倒されてしまいました・・・」


「なんでよ井上...なんで守れなかったの?」


 わかっている、井上は強くはない、海嶺高校の副会長になったのも真面目さが会長に買われて会長の特権で入っただけだ。その井上がおじい様に勝てるような奴にかなうわけがない。でもつい誰かにあたって怒りでごまかさなければ、このたくさんの人がいる中で大泣きしてしまう、私の弱い姿は見せられない。私はおじいさまが死んだとしても、まだ次期【剣聖】になるために私のイメージは落とせない。


「すいません...僕はこんなにも弱い...!」


 井上は悔しそうに崩れ落ち、ぽろぽろと涙が地面についているのが見える。

 その姿を見て、悲しさが移り、もうここからいなくなりたくなった。このままだと私まで泣いてしまう。

 放心状態で、よろよろと歩く。

 途中で雨が降り、朝だというのにまだ暗い、びしょぬれにながらどこに向かうかも考えずに。


 気が付いたら知らない公園にいた、雨が降っているせいで人気がない。疲れたのでベンチに倒れるように座る。

 ここがどこかなんてどうでもいい、もうこの世界からいなくなりたい。結局仲直りしようとしていた井上とも仲直りするどころかあたってしまった。


「私があの時油断せずにさっさと倒していれば...!」


 馬場との戦いが脳裏に浮かぶ。自分のふがいなさに悲しくなる、憎しみの心よりも、悲しさが先にくる。

 あの戦いに負けず、私が拉致されなかったらこんなことにはならなかっただろう。

 もし私がいたらおじい様を助けてあげられたはずだ。せっかく強くなったのに、その強さも生かせずに大切なものを失ってしまった。死ぬ直前おじい様は何を考えて打たのだろう、いつもいるはずの私がいなくて怒ってただろうなぁ。

 涙が頬をスッっと通る。

 雨と混ざってもう自分がどれだけ泣いているかもわからない。

 ごめんなさい...全部私のせいだ...私がいれば...

 人生が果てしなくつらい、血反吐を吐くほど頑張っても、努力しても、何も得られない、縛られるだけのこんな人生...


「もういいや...」


 このまま楽になろう、この心の絶望が消せるなら、それでいい。

 私はシックでギターケースから短刀をだし、首に向ける。

 今行くよ...おじいちゃん

 私が死のうとするその時後ろから声がする。


「おい、死ぬのは俺の告白の返事してからにしろって」


 ベンチの後ろには傘をもった、真田勇気が立っていた。

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