話を聞いてください
〜〜3ヶ月前〜〜
失敗は成功の元だとか、失敗は取り返しがつくだとか、失敗を許容する言葉は多々ある。しかしそんなものは自分を慰めえるときに使うものに過ぎない。失敗を許容していたら「失敗してもいい」という甘えが自分の脳内に絡みつきどんどん堕落していく。どんなときっだって失敗を許してはいけないし、そんな自分も許さない。そういう考えだからこそ人は失敗しないようになる。
何が成功の元だ、何が取り返しがつくだ、そもそも一回しかそのチャンスがなければその失敗はただの失敗だ、成功にもならないし取り返しもつかない、ただの失敗以外の何物でもないのだ。
「一回しかない人生を失敗したらそれは取り返しがつくのか?」
「確かにそれはならないね、でも伊吹のした失敗は君の人生すべての失敗になるの?まだチャンスはあるかもよ」
「俺が失敗したのはこの30年の人生そのものだ、30年の失敗を取り戻せるチャンス、あるといいなそんな都合のいい話」
夜になるとこんなくだらない自己嫌悪の詰まった自問自答がが頭の中をぐるぐると回る。
ピンポーン ピンポーン
「んん、うるせえなぁ」
大きなチャイムでぼんやりとしていた意識を覚ます。
床には掃除のできない人間の部屋らしい放り投げた靴下やズボン、かさばって捨てるのが面倒な飲み干した500mペットボトルが散乱している。埃臭い空気や汚い部屋、宙に舞う煙草の灰、床に転がるビールの瓶、その荒んだ部屋は今の自分の心を表しているようだ。
重い腰を上げ、気だるげに玄関に向かう。
玄関前の鏡を見ると顔もたるみ、死んだ魚のような眼、髪や髭はぼさぼさで腹も少し出ている神山伊吹30歳の顔が映っていた。
昔はもう少しかっこよかったんだけどなぁ。
ピンポーン ピンポーン
ああ、そうだった、つい人が来ていたのを忘れていた。
「はいはいはい、何何?宗教勧誘なら俺イキスギ教過激派なんで無理ですよ」
まずは軽いジャブ、きっとこんな深夜にチャイムを連打してくる奴は頭のいかれたクソ野郎に違いないと思い、チェーンをしながらドアを開ける。
「こんばんは」
そこには予想とは裏腹に笑顔の可愛い女の子が立っていた。
髪はショートで黒髪、身長は165くらいだろうか。年は・・・高校生か大学生あたりだろう。まつげが長く、胸も結構ある、高すぎるビジュアル偏差値、アイドルでもやってそうな外見だ。
怪しい、何でこんな可愛い子が深夜俺の家に…もしかして家出少女ってやつか…!とうとう辛い人生を送ってきた俺に神も同情して救いの手を差し伸べてくれたのか!?
「私はこういうものです」
渡してきた紙には、BREAKERS 超能力は捨てろと大きく書いてある、シックのことだろう、最近出てきたよくわからん団体だ、超能力を捨てろということをかかげ能力の発動を大きく禁止、制限する法律の成立を目標としているようだ。
うげ、本当に宗教勧誘みたいなやつきたわこれどうしよ。めちゃくちゃかわいい子なのにこんな団体につかまってしまったのかかわいそうに。
「佐山伊吹さん、あなたを殺しに来ました」
おいおい、何を言い出すかと思ったら・・・やっぱやばい奴だわ、かかわらんとこ。
「素晴らしい思想だと思いますよ、でも俺はいそがしいので遠慮しときます、あっそういえばお隣さんとかそういうの好きだと思いますよ。もう眠いので寝ますおやすみなさいー」
相手の返事を聞く前に一方的にドアを閉めた。
新しい餌をちらつかせたしあきらめてくれるだろう。
完全にカギを閉めて逃げるように布団に入った。これでもう会うこともないだろう。
「そういうわけにはいかないです」
バゴ――――――――――――――ン
轟音が深夜のアパートに鳴り響く。
「は?!」
布団の横を見ると扉が壁に突き刺さっている。
おいおいおいおいおい嘘だろこいつ人様の家にシック打ち込みやがった。てかこいつ超能力を捨てろって連中じゃねーのかよ⁈
「めんどくさい人ですね・・・殺しちゃいますよー」
少女は気だるそうに壊したドアから俺の部屋に上がり込んでくる。
このくそアマ、、、人の家壊しておきながらこの態度普通じゃねえ。俺が人に物を頼むときの態度ってのを教えてやる。
「弁償するんだろうなあ!俺のパンチは痛えぞ!ウラーーーーーーー」
スカッ
「あっ」
俺の渾身のパンチは軽々と横に避けられ、キックで軽々と元立っていた場所に蹴り飛ばされる。
ドンッッッ
「伊吹、まだやり直せるよ」
「うるさいな・・・気持ち悪いんだよ!消えろ・・・!」
遅すぎた、もっと早くに。
頭に一瞬激痛が走りなんだか懐かしいような、記憶が流れる。
何だこの記憶は、もしかしてこれが走馬灯か?
そうだ、思い出した、昔の記憶、映像、俺が輝いていた時代、この世で最強だった時代の。
気が付いたら地面にへばりついていた。しかし今のパンチを当てていても結果はわかっていた、能力を使えるものとそうでないものの差は歴然だ。昔の力があればこんななめた女ぼこぼこにできたはずだ。クソ、あの頃と比べて死んだような日々はもうこりごりだ。もう思い起こすこともない、いやあるわこの女を一回おもいっきりなぐりてぇ。
「あの~大丈夫ですか?死んだみたいな顔してますけど」
「死んだような顔はもともとだ・・・早く殺せよ」
蹴られた腹が痛い、なんて強烈なキックだ。
殺される原因なら山ほど作った、こいつもなんかの復讐者なんだろう。
「いいんですか?よくわからないむかつく女に殺されて」
「・・・別にいいさ」
「昔はキレッキレの最強ペーシェントだったのに、今じゃ不潔そうなただのおっさんですからね」
やはりこいつは俺の過去を知っているようだ。
なぜ俺がこんな落ちぶれた生活をおくっているのか。
なぜ俺がこんな死んだ目をしているか。
そしてなぜ元最強ペーシェントなのにシックを使えないのか。
「本当に殺しちゃっていいんですか?もっと抵抗するものだと思っていましたが」
「そんなに俺の苦しむところがみたいのか、なかなかのサディストだな」
俺がそういうと彼女はため息をついた後目つきを変える。
「そんなんだから好きな人一人も守れないんですよ」
「なっ・・・」
彼女のその一言は俺の絶望を彷彿とさせる。
最強の俺が守れなかった、いや正確には守れたのにそのチャンスを俺は逃した。彼女を見殺しにしたんだ。
「あの人はあの人でこんな間抜けの人を守って死んで・・・って間抜け二人でお似合いですね!」
彼女は嬉々として俺とその人を貶し、ニコニコと笑っている。
それを聞いているとどんどん体の奥からどす黒い感情が湧き上がってくる。
ふざけるな、あいつが死ぬほど守りたかった人間はこんな間抜けじゃない。
今の俺を否定するということは俺のために死んだあいつを否定するということだ。
あいつの死んだ意味を否定することそれだけは・・・絶対に許せない
「間抜けなカップルなので名前は〜」
「おい」
罵倒を続ける彼女の話を遮るように声を出す。
「殺され方はなにがいい」
ゆっくり立ち上がり、髪をかき上げる。
「刺殺、殴殺、焼殺、そうだ絞殺にしようか、そうしよう」
「いきなり何を言い出すかと思ったらもう勝った時の妄想をしてるんですか?」
俺の言葉を彼女はクスクスと笑う。
「お前の主要な攻撃方法は【念力】ドアを吹き飛ばしたのをみるとかなりいい精度だな」
彼女に向け勢いよく走り出す。
「ようやくやる気になってくれましたね、でもすいません、やる気になってばかりで悪いですが早々に終わらせていただきます」
彼女はどこからかナイフを取り出す。
そのナイフは彼女のシックにより3本、浮いたかと思うと弓矢のような勢いで飛んでくる。
ブンッブンッブンッ
体をくねらせ軽々しくその包丁を避ける。
それをみた俺の目の前に立つ彼女は嬉しそうに口角を上げる。
「すごい、さっきと全く動きが違う、でもこれはどうですかね!」
彼女はさらにナイフを増やし、射出してくる。
合計で10本全部避けるより・・・
ちょうど横にあった包丁を持つ。
カキンッッカキンッッ
射出されたナイフを滑らかな動きですべて弾く。
「そんな⁈すごいですね!じゃあ次は」
「次はねえよ!」
彼女との距離は2mまで近づく、もうナイフを射出する暇は与えない。
彼女の首元に向け手を伸ばす。
「お前ら【念力】使いは遠距離、中距離から一方的に攻撃しようとする、そういうやつの弱点は近距離戦って決まってんだよ!」
近づかれた彼女は余裕の表情を崩さず、右足を下げる。
やっぱりな。
完全に手の届く位置まで近づくと大きく体を捻る。
ブンッッッ
大きな横蹴りが俺の頭すれすれで空振る。
「うそっ────」
「そしてもし近づかれた時の対策をもっているってこともな」
蹴りを避けられた彼女は信じられないと言った顔だ、さっきまでの余裕の表情は崩れ、目を丸くしている。
ガシッ
「うっ」
蹴りにより大きく隙が空いた彼女の首を掴む、彼女は絞める腕を離そうともがいている。
「ククク、俺を殺そうとしてんだ、殺される覚悟はできてるんだろうなぁ」
笑いが止まらない、これだ、この感覚、俺はこうやって何人も殺してきた。
もしこいつを殺しても正当防衛だ、ここで殺しても仕方ないでけりがつく。
「ほら無様に許しを請えよ、そしたら骨何本か折るくらいで許してやるよ」
さぁ、生か死か、せいぜい俺を散々こけにして調子にのったお前の無様な姿みせてくれよ。
笑いながら彼女に選択を迫る。
「いい・・・ですよ・・・殺し・・・て」
しかし返ってきた言葉は予想とは違ったものだった。
彼女は苦しみながらも笑顔を作る。
こいつ・・・何をいってるんだ。
そうか、俺がそんなことできないと高を括っているのだ。
殺してやるよ・・・そう、思いっきり・・・!
「だったらお望み通り・・・!」
手に力を入れようとしたその時の一言が俺の手を止めた。
「あなたの最愛の人は・・・これを見たらどう・・・思うでしょうかね」
その一言で封印していた記憶が無理やりこじ開けられ、俺の最も大事だった人の笑みが浮かび上がる。
擦れた過去の最悪な思い出、それを抱いて今まで生きてきた。
「クソッ」
俺は今この女にムカついたんじゃない、不甲斐ない自分に対するムカつきをこいつを殺すことで晴らそうとしたんだ。
俺は力を入れ掴んでいた手を離す。
彼女はケホッケホッと大きく咳をして深呼吸をするとまた話を始める。
「とっとと失せろ、クソ女」
「すいません、実は今のはあなたの力を試させてもらったんです」
「はぁ?」
つい呆れたような声を出す。
あの包丁全部あたってたら死んでた気がするがどうするつもりだったんだよ。
「改めて、佐山伊吹さんいや、【赤の稲妻】私はあなたにある依頼をしに来たのです」
にこやかな顔で彼女はそう告げた。
この時、これが俺の最後のチャンスの始まりだったとはこの時の俺は知らなかった。
処女作で右も左もわからない状態で書いたのでおそらくがばがばなところも多いので批評は覚悟の上です、ぜひ感想ください、反響があるか僕の気が向けばまた書きます。




