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第五話『バトルバケーション』前編


彦一との事件も解決し、遠時達の学校に夏休みが訪れる。

しかし、仲間との楽しい旅行で待ち受けていた新たな戦いとは!?


ゲットバトルドリーム第五話始まります。

「うわ~~!すごいわよ遠時。高いわ~」

「ああ、高いな。周りの市民から苦情がきそうな高さだな…」

「あんなとこに泊まれるなんて感激やな~緑」

「そうですね。中にもいろいろあるみたいですしね」

「フフ。喜んでもらえて嬉しいね、お兄ちゃん?」

「…………眠い」


『日夜タワー』

ここ最近、海の上に建てられた高層ビルで真ん中に小さいビルがありその左右に巨大なビルが建っている。

内部には宿泊できるホテルのほかに温泉やプール、水族館にゲームセンター、ショッピングモール等々をそろえた建物で開園二週間で世界中からの予約が殺到する大人気スポットである。そんな場所に何故俺達が向かっているかって?


それは今から十日前の出来事がきっかけだった。



七日の命をかけて必死に鳴く蝉の声が校長の話をかき消す体育館に「神谷遠時」はだらけていた。

夏休み前日の終業式ほど時間の無駄と思えるものはない。

そんなことを考えていると校長の話も終り生徒会長の話に移る。

だらけていた背中が一気に伸びて見事な直立不動になる。

檀上に上がった黒髪の青年「神童彦一」の目がコチラに向けられたからだ。

あの生徒会長は俺の場所を覚えているみたいで檀上に上がるたびに睨んでくる。

彦一の話中にうっかり寝てしまって、顔面にマイクが飛んできて以来、生徒会長の話だけはしっかり聞かなければならなくなってしまった。

「なので、いくら夏休みだからと言って我が校の恥になるようなことは絶対にするなよ。特にバイクの免許とるとか」


ああ、お前がな!




「遠時~!夏休みやで、どっか遊びに- グエッーー!?」

「遠時!夏休みよ。遊びに連れてってよ」

集会が終り、さぁ帰るぞっというところで勝岡と香美市の攻防が始まる。

今のは香美市のローキックが勝岡にジャストミートした模様。

「酷いやないか香美市ちゃん!いきなり蹴るなんて」

「私にちゃんを付けるんじゃないわよ。気色悪い!虫酸が走るのよ!!」「じゃあ絵里」

「死ねー!!」

俺に当たったマイクよりも強烈な右フックが顔面に直撃する。

「なんで殴るの!?香美市ちゃん自分で言うてたやないの、遠時が何時までたっても名前で呼んでくれへんって!だから、僕が呼んだあげてるんやんか」

「滅びろ!ゴミくずー!!」

そろそろ刃物が出できそうなので止めに入ろうとするとクラスの男子に呼ばれた。

「おい!神谷。可愛い子ちゃんが教室前に待ってるぜ」


可愛い子?

俺の知り合いの女子に「可愛い」はいても子はいたかな?


周りに茶化されながら教室を出る。

そこにいたのは生徒会長の妹「神童亜理子」だった。

「ああ~。確かに子だ」

「あの…何言ってるんですか?」思わず声にでたので「なんでもないぜ」とカッコよく誤魔化す。

後半の方は嘘です。

「で、何のよう?」

話を変える。

「えっと、あのですね-

「うわ~この子めっちゃカワイイな!!今度遊びに行かへん?」


ハイ!勝岡登場


かなり驚く亜理子。

香美市の方はどうやら暑さに耐えられずに水分補給を行っていた。

「なっ!いいやろ?遊びに行こうよ~」

「ええ~いや~ちょっと…」

助けを求める視線を送ってくる亜理子。

仕方なく蹴りの準備をした時だった。


ガシッ!

勝岡の頭がつかまれる。

「誰の妹口説いてんだ?」

最強の生徒会長「神童彦一」が勝岡にアイアンクローをかける。

「うわっ!お兄ちゃんどこから出てきたの!?」

「そこの窓から」


ここは二階ですけど!?


つかんでいる手に力がこめられる。

「ギャーーーン!」

メシメシメシっと普段では耳にしない音が教室中に聞こえる。

「彦一さん!勝岡が死にますよ!?」

「大丈夫だ。こんなに生徒がいるんだから一人ぐらい消えても誰も気付かないさ」

白い歯キラーン!

「ぜんぜん大丈夫じゃねー!!」

止めようと彦一のもとに駆け出す。

ガシッ!

「なるほど。お前も消えたいんだな?」

ギリギリギリギリ…

「痛たたたた-」

今、彦一の両手には二人の男子高校生がわしづかみされている状態である。

「もう!!お兄ちゃん。そんなことしに来たんじゃないでしょ!」

「あっ…そうだったな。チッ!!」


なぜ舌打ち!?


彦一のアイアンクローから開放され頭蓋骨が無事かどうかの 確認をしていると、亜理子から紙が渡された。

「『日夜タワー』宿泊券?なんですかこ-」

「遠時!!ちょっとそれ見せて!」

言い終わるよりも先に香美市は叫び声あげた。

宿泊券を強奪し、凝視するほど約二秒。

香美市の肩がプルプルと震えだす。

「間違いないわ!あの『日夜タワー』の宿泊券じゃない!?どうしてあなたが持ってるの!」六枚の紙を亜理子に突きだす。

「『日夜タワー』ってなんなんだよ?」

亜理子にしようとした質問を香美市にする。

「なんでしらないのよ!新しく海の上に建てられたホテルでね、すっごく楽しそうなのよ。私も行きたかったんだけど予約がいっぱいだったのよ」


そういえば世界的な建物を建築したってニュースを聞いたことがある。

「なんでそんなスゲーもん持ってるんですか?」

香美市と同じ質問をする。

「それはですね。父が日夜タワーの建築に関わっていてですね。えっと、何の仕事だったかな…」

「タワー内部の防犯セキュリティだよ」

間一発に彦一のフォローが入る。

「あっ!そうそう。それ」っと亜理子は言った。

「防犯セキュリティですか。彦一さんの親父さんすごいですね。そんなの作れるなんて」


やっぱり親父さんも天才なんだな


「まぁ、作ったの俺だけどな」

「あんたが作ったのかよ!?」

「父さんがどんなに考えてもうまくいかないから俺に頼んできたんだよ」

「それで、作れてたのかよ…」


訂正。やっぱりこの人だけが天才!!


「お父さんに経営者の人から贈られたものですが、事情が事情ですから、私達に譲ってくれたんです」

ニコニコ笑いながらコチラを見る。

「夏休みお兄ちゃんと行くんですけど、それでも四枚余るんでこの前の謝罪もかねて一緒にどうですか?」

「「いいの!?」」

顔を見合わせて声もそろえる。

「渋々だがな」

ボソッと彦一は呟いた。

「それやったら、僕も一緒に-

「あぁ!!」

「なっなんでもありません。ごめんなさいごめんなさいごめんなさい…」

でしゃばった勝岡を一言でねじ伏せた彦一であった。


「それだったらみゆきさんと緑さんも誘うんですよね?」

「ええ~!別に誘わなくてもいいよ」

香美市がブツブツ言う。

「そう言うこと冗談でも言うな!」

「マジなんだけど?」

「オーイ!?」

この女はまた失礼なことを…

「いいじゃないですか亜理子先輩。音羽先輩おもしろいし」

「その通りやな~。香美市ちゃんも酷いこと言うなぁ~」


「うわっ!?音羽先輩!どこからでてきたんですか?」

「そこの窓から~」


だからここは二階!!

「聞いてたけど、『日夜タワー』に泊まれるんやって?」

ズイッと亜理子にせまって言う。

「チ、チケットはあと二枚残っ-

「じゃあ私と緑で決定やね。私達部活あるからえっと…じゃあ十日後の9時に学校集合な!うわ~楽しみやわ。それじゃバイバイ~」

廊下をスキップで移動しながらみゆきは消えていった。

「……なんだったんだ。あの人は」

「少なくとも、みゆきが喋ると文字数が多くなるのが問題だな」


えっ!?文字数ってなんですか?

「ホントだね。読者に申し訳ないね」

「ストップ!!もうだめだから!この話終了!!」というわけで俺達は『日夜タワー』に宿泊することになった。






「遠時!遠時!魚がいるわ」

香美市が当たり前のことを言う。

「ガラスが割れないか心配です」

「大丈夫だろ。世界的な建物だぜ」

駅には大勢の人が電車から降りてそれぞれに歓喜の声を漏していた。



宿泊するホテルに案内され、俺は彦一さんと一緒だった。

「イヤー!広い部屋ですね。眺めもいいし」

「これでも小さい方だぞ。もっとでかい部屋もあるしな」

荷物をベッドに置き着ていたコートを脱ぐ。

「やっぱり一番広いのは最上階ですか?」

「確か俺達がいるビルの最上階はパーティー会場のはずだ。もう一つのビルの最上階はセキュリティルームだと思うが」


彦一は独り言のように呟いた。

そして、鞄から水着を取り出した。

「よし!行くか」

「了解っす!!」

俺達の楽しい夏休みは始まった。



プールでの遊びも終り昼食を食べていると彦一の携帯が鳴った。

「もしもし。あっ父さん?なに……わかった。まかせて」

携帯を切り、荷物をまとめ始める彦一。

「お兄ちゃんどうしたの?お父さんから」

「ああ。ちょっと問題が出たらしくてな。俺が見てくるよ」

そう言って店から出て行こうとする。


これはマズイ!男子が一人になってしまう。それは気まずい!

「彦一さん!俺も行きます」

「ちょっ?遠時!」

有無も聞かずに店から出ていった。

「来てもすることはないぞ。まぁ、男一人はつまらんか」

なんとなく察してくれた彦一であった。



地下駅の従業員専用通路の扉の前に遠時は立っていた。

彦一と違い遠時は中に入れないため電車から出てくる人達を眺めていた。

ここにいれば世界中の人間に会える気がした。

「ん?」

降りてきた人達の中でひときわ目立つ二人組を見つけた。

一人の男は金髪のオールバックで黒いマントのような物を着ていた。

もう一人の男は絵に書いたような中国人で小さく髪を結んでいた。

「ここのホテルの人かな。おもしろい服装だし」っと独り言を呟いた。



その時だった。


ドゴーーーン!

上の方から轟音と震動が訪れる。

周りから溢れだす悲鳴。

「なんだ?何が起きたんだ?」

その答えを教えるように覆面を被り銃を持った奴等が現れた。

「俺達はテロリストだ!死にたくなければ言う通りに動け!!」


俺達の地獄のような夏休みはこうして幕をあげた。



十分前-


「で、何があったんですか?」

地下駅の制御室で彦一は画面を監察していた。

「あのですね。最上階のセキュリティホールと連絡がとれないんです」

役員の人間が状況を報告する。

「そうですか。ちょっと貸してください」

キーボードを叩き始める彦一。

カタカタカタ-


「これはメインコンピュータになにかあるな…。ハッキングか?なんだこのボックスは?」

独り言をブツブツと言いながらクリックする。

すると三十秒から減っていくタイマーが表示された。

「おい!まさか、これ…」

操作スピードを高速化しタイマーがかけられている場所を調べる。

設置場所は陸からホテルをつなぐ道路と全ての制御室だった。

タイマーが十を切る。

「伏せろー!!」


ドゴーーーンー!

設置された爆弾が爆破された。






「クッソ。こっちにもか」

物影に隠れながらテロリストの様子を伺う遠時。

宿泊客はエレベーターに乗らされ、テロリスト達は探索にあたっていた。

(捕まえられるのが嫌だったから隠れたものの、見つかったら殺されるかな~?)

その場から移動しようとした。

ガバッ!

「ぐむぅー!」

口を押さえられ、引きずられていく。

「ぐぅ!ゆむー!」

「うるさい!黙れ」

その声の主はボロボロの服を着た彦一だった。

ある程度まで遠時を運び口から手を離す。

「大変です、彦一さん!爆発が起きてテロリストが-

「知ってるよ」

「あっ…そうすか」

彦一は辺りを確認する。

地下鉄の入り口のシャッターが降りており電車が出れない状態だった。「あのシャッターを開けないと不味いな」

「どうしてです?」

「さっきコンピュータで状況を見たが陸に続く道路は破壊されている。となると警察が入って来れるのはここの道だけだ」

辺りを再度確認して彦一は言った。

「じゃあ、シャッター壊すんですか?」

「あのシャッターはそう簡単には壊れないよ。無理に壊そうとすれば周りのガラスが割れて、みんな仲良く海の底だ」

そう言って物影から立ち上がる。

「えっ!何やってるんですか?見つかりますよ」

「シャッターを開けるには最上階のセキュリティホールで操作しなくてならないんだ。行くしかないだろ」

堂々と歩きだす彦一。

「なら隠れて行きま-

「貴様ら!そこを動くなー!!」

「ほら、見つかった」

ドゴッ!バキッ!グチャー!

「問題ないだろ」

テロリスト瞬殺!

物影からゆっくり出ながら「能力使って大丈夫なんですか?」と言う。

「神の奴がなんとかするだろ」

彦一は遠時に眼もくれずに歩きだす。

「待ってくださいよ」

後を追う遠時。


「こいつは驚いた」


静寂を打ち破る声が響く。

振り向くとあの妖しげな二人がいた。

「私達ノ部下ハミンナ殺ラレタヨウネ」

「まぁ、能力者とただの人じゃ無理だろ」

金髪のオールバックと中国人は暗く笑う。

「お前らは何者だ?能力者か?」彦一が間合いをつめ始める。

「そのとおりだな。まずは自己紹介だ。俺の名前はヴァン・デプレス。こっちの方はキム・コウガ。よろしくな」

ニヤッと笑いだす。

コウガと言う男はペコリと頭を下げる。

「神谷遠時です」

「生徒会長だ」

自己紹介じゃねー!

ヴァンは大笑いをする。

「貴様らの目的はなんなんだ?」

彦一は切り替えて二人を睨む。

「おおっと!?怖い怖い」とおどけるヴァン。

「簡単ダ。理想国家ノ建国ダ」

「今回こそは叶えてみせるぜ」

コウガとヴァンは真っ直ぐ彦一を見て言った。

「理想国家だと?」

「俺達は全員、政府や国に裏切られた奴等の集まりなんだよ」

ヴァンは悔しそうに言い、さらに続ける。

「だから、俺達は裏切った国ヘの復讐と自由を求めてるんだ」

コウガは目を閉じてうつむいている。

「そうか…」と彦一悲しそうに言う。

「ちょっと待てよ!ヴァンさん、今回は叶えてみせるってどう言うことですか!?」

二人はキョトンとした顔になり、その後にまた笑いだす。

「ソウカ。オ前ハ始メテナノカ」

「横の生徒会長さんもそうなんじゃねーの」

ケラケラと笑いながら彦一を指差す。

彦一はなにも言わず攻撃のタイミングを測る。

「この戦いは今回が初めてじゃねーんだよ。これで三回目。俺達は前回も参加してたんだよ」

「こんな戦いがもう二回もあったのか…」

信じがたいことだった。

「ソロソロ始メルゾ。アマリ時間ヲ、カケルワケモイカナイ」


手を袖からだして構える。

「やるしかないのか!」ビシュー!

ヴァンと遠時は唖然とする。

向かって来ようとしたコウガを彦一が蹴り飛ばししたのだった。

「おいおい、生徒会長さん。いきなりすぎだろ」

ヴァンは苦笑しながら黒いマントで身体を包む。

「遠時!そいつは任せた。俺は中国人の方を殺る」

言い終わるよりも速く走りだす彦一。

「クッソ!戦うしかないのかよ」


戦場に足を踏み出した。



「へぇー。やっぱり生きてたか」

瓦礫の中から出てくるコウガの前に彦一は立つ。

服の埃を払いながらコウガは彦一に近ずく。

「生徒会長ノ癖ニ礼儀ヲ知ラナイ奴ダナ。イキナリ蹴ルトハ」

「戦いなんだ。礼儀なんて糞喰らえだ」

拳を構え敵を見据える。

「行くぞ。『アタラクシア』発動!」

脚のリミッターを外し高速で攻めにかかる。

右に周りコウガの顔面に向けて腕を振り抜く!

だが、コウガは避けない。

右手の一撃が直撃する。

ベキッ!

「なっ!?痛っー!」

放った彦一の拳から異様な音がなる。

殴られた箇所を気にすること無くコウガは指を突き立てて彦一の胸を貫こうとする。

それをかわすべく後ろに大きく跳躍する。

「ヨク、カワシタナ。普通ナラ動揺デ動ケナイ、ハズダガナ」

「その能力…“硬化”か?」

砕けた拳を再生させる。

フッとコウガは笑い上着を脱ぎだす。

「ソノトオリダ。私ノ能力『アトミックアームド』ハ貴様ノ攻撃デハ傷ツケルコトハ、不可能ダ」

コウガの身体が鉄のように硬くなっていく。


両者共に走りだす。

コウガが左手を、彦一が右手を突きだす。尋常ではない速さで放たれた二つの拳がぶつかりあう。

「ぐっ!」

「無駄ダト言ッテイル。貴様ガ勝ツコトハデキナイ」

余裕の笑みでさらに追撃を試みる。

顔面に向けての右の脚の蹴り!

当たれば顔は粉砕されるだろう。

「……ガードは無理か」

両腕を前にだし、防御の姿勢をとる。

ボギッー!

右腕が折れた感じがした。

「チッ!」

体制を立て直す彦一。

「貴様ハ変ワッタ奴ダ。腕ガ折レテイルノニ悲鳴モアゲナイ。貴様ハ何者ナンダ?」

異形な物を見る目で彦一を睨む。

「何者でもねーよ。ただの生徒会長さ」

彦一の目付きが変わる。

「『アタラクシア』70%開放!!」

左腕が膨張を始める。

「行くぞ。コウガ!俺の一撃、受けきれるか!!」

「オモシロイ。来イ!」

両手を広げて胸を硬化させる。

「おおおぉぉぉーーー!」

彦一の拳が振り抜かれる。

その拳は真っ直ぐにコウガの鋼のように強化された胸に直進して、激しく衝突する。


鼓膜を破るような轟音がビル中に木霊する。

「ガァァァ!?」

胸を押さえて膝を付くコウガ。

彦一が繰り出した一撃は鋼を貫き体内部にまで貫通していた。

「ドウナッテイル?貴様ノ左手ハドウナッテイルンダ!」

吐血を繰り返しながらも話す。

「だから、何もねーよ。ただ、昔の古傷が消えてないだけだ」

右腕の骨折を再生させ、無傷の左腕で服の汚れた箇所を払う。

「じゃあな!運がよかったら助かると思うぜ」

言い終わると背を向けて歩き始める。


新たな戦い場へと男は歩き始める…







崩壊した地下駅で二人の戦いが続いていた。

「すげな、お前。俺をここまで殴れるなんて思ってもなかったぜ」

口の血を拭いながらヴァンは微笑む。

マントの中に収納されていた二本の警棒を握り全力で向かって来る。

先程のように自らの時間を外し、敵を迎え撃つ遠時。

大きく横に振られる警棒をしゃがんでかわす。そのカウンターで右手の拳を放つ!

拳は真っ直ぐヴァンの顔面へと直撃する。


「うぐっ!」

ヴァンはうめき声をあげながらのけ反る。

「降参してください。あなたでは俺には勝てません」

能力で全てをスローで見ている遠時にとってヴァンがどれだけ強かろうとも結果は一目瞭然だった。

「へへへ……なら、俺も本気だすかな!」

叫びながら二本の警棒を一本につなげる。

「『エナジーソーサー』発動!」

その瞬間、遠時の視界が黒に覆われる。

能力の力ではなくヴァンのマントが遠時の視野を奪っていた。


これは危険だ!


すぐさま横に跳ぶ。

マントの上から何かが一閃し両断する。

少し飛び退くのが遅く、左脚が浅く出血する。ヴァンの姿を捕らえる。

ヴァンはつなげたことで長くなった警棒を片手にいやらしい笑みを浮かべる。

「よく避けたな。一撃で終わらせるつもりだったのに」

長くなった警棒の先からは紅色の炎のような刃が放出されていた。

その形はまるで鎌のようだった。

「俺の能力『エナジーソーサー』は自分の生命エネルギーを武器にできる操作型だ。死にたくなかったら命乞いでもするんだな」

「悪いんですけど、そう言うの嫌いなんですよ」

「そいつは残念だなーーー!」

さっきの繰り返しのように全力で向かって来るヴァン。

「行くぜ!俺の能力の真骨頂-


間合いを詰められる。

遠時は攻撃を避ける体制を整える。

二重奏デュオ)!!」

素早く上からと横に振られる鎌。

だが、

「甘い!」

ギリギリまで鎌をひきつけ一歩で後ろに回避する。


この一発で終わらせる!!


拳を握り締め前方に飛び出したその時だった…


振りおろされたはずの鎌の刃だけがそのまま直進してきた。

「なっにーー!?」

いくらスローに見えていても前方に飛び出た身体が止まらない。

紅い刃は遠時の胸に十字の傷をつけ、体ごと吹き飛ばした。

地下駅の柱にぶち当たる遠時。

「ごふっ…」

想像以上に傷は深かった。

「侮ったな神谷遠時。だから言ったろ死にたくなかったら命乞いしろと」

ヴァンは鎌をクルクルと回しながら近ずいてくる。

脚に力をいれ、なんとか立ち上がる。

「まだ、ここからです」

今度は遠時から走りだす。

鎌から紅の刃が放たれる。

軽くかわして自分の攻撃場所に移動する。

ヴァンの目の前にピッタリとくっつく。

「これなら、鎌は振れない!」

一気に攻撃を仕掛けようとする。

「俺に死角はない!」

左手を腰に回して三本目の警棒を取り出す。

三重奏トリオ)!!」

新しい警棒からも刃が現れる。

下から上に一閃される鎌。

遠時はギリギリの所で反応し、かする程度ですまされる。

が、新たな鎌の刃も遠時に向け放たれる。

「くっ!そー!!」

遠時は転がりながらも攻撃をかわす。

「よく避けた。だが、これならどうだ!!」

何度も鎌を振り続ける。

それに合わせていくつもの刃が飛び出す。

「おらおらおらおらーーー!」

崩壊した地下駅が紅色に染まっていく。

「嘘だろ!?畜生ーー!!」

スローに見えていても回避する場所がない!


ドゥーーー!!

刃は弧を描きながら遠時に直撃した。

「終わったか…」

ヴァンは煙が立ち上る方を見ながらゆっくり歩きだした。

命中しなかった刃が地下駅を壊していく。


瓦礫が崩れ落ちるなかで「神童彦一」は戦いを見続けていた。

いまだに煙が上がる場所では人の気配はない。

「こんなものじゃないだろ遠時。お前の言う正義を証明してみろ」誰にも聞こえないぐらいの小さな声で彦一は呟いた。





何も見えない真っ暗な世界で頭の中で誰かが叫ぶ

「ここから逃げろ!」

うるさい!

「速くしないと死んでしまう」

黙れ!

「生きることが何よりも大事だ」

そんなこと分かってる。

「死にたいのか?」

違う、俺はただ-

「貴様は、ただ?」

目の前の人達を救いたいだけだ!

「目の前の人達?誰だ?」

香美市やみゆきさん、緑さんに亜理子。今捕まっている人達。そして、このテロリストだ!

「テロリスト?何故救う?こいつらは敵だぞ」

この人達は間違ってる。裏切られても復讐はしてはいけない。他の人達を傷つけてはいけない。だから、それを今伝えたい。

「何故そこまでする?」

「それが俺の正義だからだ!」


一気に視界が明るくなる。

「なら、その正義に力を貸そう。我が剣貴様に使えきれるかな?」

「上等だ!さっさと力を貸しやがれ!!」



立ち上る煙が一瞬にして晴れる。

驚いて振り返るヴァン。

瓦礫の中より立ち上がった遠時はヴァンを睨み付ける。

「さぁ、全力で向かって来てください。それを俺が全力で叩き潰します!!」

遠時が右手を前に突きだす。

「行くぞ!固有スキル『英雄の試練ランスロット)』発動!!」

その瞬間に強烈な閃光が走り、台風を思わせる突風が吹き抜ける。

風が集まり遠時の右手に一本の刀が現れる。

「なんだよ。それ?」

刀は西洋風な感じで黒色の鞘に収めてあった。

「この刀は俺の正義の形だ。見ろ!この刃ー!」

遠時は刀を抜こうとする。

ギギ…ギギギーーー!

「抜けない!?」

「ぶぁっはははははははーーー!」

腹を押さえて床に転がりながら大爆笑するヴァン。

遠時は何度も抜こうとするが鞘から刀は離れない。

「クッソ!どうなってるんだよ」

ヴァンは床から立ち上がり鎌を構え始める。

「忙しい所、悪いな。俺も時間が無くてね。恨むなよ!」

間合いを詰めて一気に攻撃を仕掛けてくる。


今は能力を使ってない!!

通常のスピードで振り下ろされる鎌を避けることは不可能だった。

咄嗟に鞘に入ったままの刀で鎌を防ごうとする。

紅の刃が鞘にぶつかった時だった。

紅い刃がまるで粘土のように形を変えて二つに解れていった。

鞘はそのまま先の警棒を難なく切り落とした。

「…………はぁ?」

ヴァンの表情が驚愕の色に染まる。

「そこだ!」

隙を見てヴァンの腹に鞘のまま斬りつける。

ドゴッ!

ヴァンの身体も真っ二つに斬り落とした。…ではなくただの峰打ちだった。

「…………はぁ?」

自分の顔も驚愕に染まる。

腹を押さえながらヴァンは後ろに下がって距離をとる。

「どうやら、その刀は人間には意味無さそうだな」

「そうみたいですね。でも、-


刀を握り直す。

「勝てる見込みは出てきました」

お互いに顔を見合わせてニヤッと笑う。

「面白い。なら、俺も最高の技を見せてやる!」

どこからともなく四本の警棒を取り出して、二本につなげる。

つながれた警棒からは今までに無いほどの紅の刃が燃え盛った。

四重奏カルテット)!」

二つの鎌を振り回し、刃を放ち続ける。

逃げる場所など何処にもなかった。

「俺は逃げない。立ち向かってみせる!」

飛び交う刃全てを弾き落とす。

しかし、それよりも速く地下駅が紅く染まっていく。

「消え失せろー!」

ヴァンの鎌を振る力が強まる。

紅の刃が遠時に傷をつけ始める。

「数が多すぎる!」


このままじゃ負ける!!


「貴様は何を勘違いしている?それは斬るための物じゃない。貴様の力はなんだ?」


突然聞こえてきた声。

「俺の力?デスティ二-チョイスのことか?ってことはもしかして…」

一人で呟きながら一つの答えにたどり着く。

持っている刀を前方から迫りくる鎌の刃にむける。

「能力発動!我が剣『英雄の試練ランスロット)』よ、視野の全ての物質の世界軸を凍結!!」

知らず知らずの内に頭に浮かんだ言葉を発する。

刃は言葉通りに動きを止め、空中に浮かんでいた。

「どうなってやがる!?」

今までに聞いたことの無いような声でヴァンは叫び声をあげる。


遠時は刃をかわしながら敵のもとに全力で走った。

「俺は負けるわけにはいかないんだー!!」

ヴァンも同時に走り始める。

両者との距離が縮まっていく。

遠時の剣の間合いより先にヴァンの鎌の間合いに入る。

「もらったーーー!」

二つの大鎌を一気に振り下ろす。

刃は体制を屈めて走っている遠時を完璧に捕らえていた。

遠時は避けずに屈めたまま、剣を頭の上に構え、直進した。

ギギイイィーーン!

紅く燃える刃が鞘と衝突する。

今度は斬り裂けずにぶつかり合いが続いていた。

「どうしてだ!?何故防がれる!」殺せない悔しさに言葉を荒げる。

「悪いんですけど、あなたと俺じゃ背負ってるものが違うんです!」

自分の叫び声と共に刀を横に大きく振る。

ズバーーー!

二つの鎌が綺麗に両断された。

「ぜあー!!」

ヴァンの肩に目掛けて一閃。

バキッ!

ヴァンは肩の骨が砕け、口から血を吐き出し地面に膝を付く。

吐き出した血が自分の頬にかかる。

「クッソ!俺はまだ負けてねー!!勝負だ、こらっ!」

「あなたは誰のために戦ってるんですか!!」

叫ぶヴァンを一喝する。

「あなたは分かってるはずです。こんなことしても無駄だと。理想国家なんて造ろうと思ってないはずです」

「そ、そんなことは……」口ごもるヴァン。

さらに追い討ちをかけて言う。


「復讐をする人があんな楽しそうに笑えません。あなたはもう裏切られたことを許しているはずです」

「…………」

ヴァンは何も言わず遠時をじっと見つめる。

「今のあなたはどうすればいいか分からずに戸惑っているだけでしょ」

ヴァンの眼から涙が溢れだした。

その涙は止まること無く流れ始めた。

「すまない…すまない……その通りだ。俺…はなんてバカなん…だろうな」

ヴァンは所々むせながら話した。

「ありがとう、神谷遠時。ありがとう!」

泣きながら頭を下げるヴァン。

「いいんですって」頭をあげさそうとしたその時だった。


頭に強烈な頭痛!!


「あっ!…がぁ、いっーーー!」

悲鳴をあげながらよろめく。

「神谷遠時!?」

心配してヴァンが近寄る。

「大丈夫ですから。ただの頭痛ぅ……」

脳を突き破るような激しいノイズ。

「大丈夫じゃないだろ!どうしたんだ」

焦り始めるヴァン。

「なにもないですってホントに。なにも、なにも、なにも、なにも、な~~んにも……ないですからぁぁぁあハッハッハハッハッハ!!」


俺が、僕が、私が、自分が、おれが、ぼくが、わたしが、じぶんが、オレが、ボクが、ワタシが、ジブンが、……………………壊れた。

「うわぁ~~~血血血血血血真っ赤真っ赤真っ赤赤赤!吐いたの?ねぇ?あなたが吐いたんですか?だったらもっともっともっと吐いて…アカクシヨ!」


自分の身体の制御なんてすでにできない。精神の安定なんて不可能だった。

今、自分は傍観者だった。


「おい!どうしたんだよ?冗談じゃ面白くないぜ」

後ろに後ずさりながら驚きの声をあげる。

「面白い?オモシロイわけないじゃん。これから、おもしろくするんだよ」

鞘がついたままの刀をヴァンにぶつける。

ゴキッ!


ヴァンの右腕が逆向きになる。

「うぎゃーーー!」

「あっはっはっはっはっー!良い声ですよ。さぁ、もっと楽しもうよ」

右足、脇腹、を壊していく遠時。

ヴァンは死ぬほどの痛みに叫び続ける。

「そんなけ叫んでちゃ喉も潰れますよ!あっ!潰して欲しいんですね?ついでに目もいっときますね」

喉元に向け鞘を突き刺し、指で目を潰す。

「えう゛@!d088ユヤ%(*$2_wdj.pkmwjwがぁー!」

怪奇な言葉を発しながら悶え苦しむヴァン。

「ふふふ…あはははは…………はははははははははぁぁぁぁぁ-


笑い声が地下駅を包む。そして、瞳の色が一瞬にして変わる。

「殺そう」

ヴァンのもとに一気に駆け寄り、押し倒す。

唯一無事な左手で喉の出血を押さえているヴァンの目には遠時の姿は映らなかった。

「バイバイ!」

ドガッー!

轟音と共に吹き飛ばされ、壁に直撃する遠時。

「やはり世界に呑み込まれたか…」

彦一は壁に寄りかかっている遠時を眺めた。




「痛っうー。ここは?」

「地下駅だよ」

起き上がるとすぐ横に彦一が座っていた。

「そうだ!ヴァンさんだ。あの人知りませんか?」

「死んだよ」

静かに言い、指をさす。

立ち上がり見に行くとそこには見る無惨な死体が転げていた。

「そんな……誰が?」

「覚えてないのか?お前が殺ったんだ」

「そんなはずない!!」

全力で否定した。

「俺は倒しはしたけど殺してはいない」

殺すはずがない。

分かり会えたのに殺すはずがない。

「確かにお前は殺してはいないさ。世界が殺したんだ」

「世界だと?」

「そうだ」と言って立ち上がりこちらに近ずく。

「お前の『デスティ二-チョイス』の能力は人が生きる時間、世界軸を操るとこができる。つまり-


彦一は目の前で脚を止める。

「お前は“神”と同様なんだよ」

目眩がした。

自分の力の強大さを理解していなかった憤りと恐怖が込み上げてきた。

「始めの状態それはまだ世界軸に触れる程度だから、止められるものは限定され、時間も限られる」

話を進めながら後ろに立つ。

「だが、お前の固有スキル『ランスロット』は、もはや神具とも言っていいくらいの能力だ」

遠時はゴクッと唾を飲み込む。

「あの刀はお前と世界軸との距離を強制的に引き付ける磁石のような物だ」

「距離が縮まればどうなるんですか?」

「言ったろ。世界軸とは人が生きる時間でありそこには意思がある。距離が縮まればその意思が自動的に脳に読み込まれていく。一つの脳では世界は処理できない。よかったな刀が抜けなくて」

「抜いていたらどうなっていたんですか?」

「簡単だ。ただでさえパンパンの風船にさらに空気を入れたらどうなる」

遠時は沈黙した。

パーーン

彦一は手の平を叩いて音をだす。

「まっているのは崩壊だ」

言い終わると階段へと歩きだす。

「速く来い。亜理子達を助けに行くぞ」

「彦一さん」遠時は死体見て涙を流しながら尋ねる。

「なんだ」と後ろを向いたまま言う。

「何故、そんなことを知ってるんですか?」

神童彦一は確かに天才だが、これは知識とかの話ではない。

知っていることがおかしいことなんだ。

「そんなことか。知ってる、もなにも当たり前だろ?」

振り返り微笑みながらその言葉を告げた。



「俺の前回の能力は『デスティ二-チョイス』。そして、前回のゲットバトルドリーム優勝者だ」


その微笑むを俺は忘れないだろう……



続く


遅くなってしまってすいません。

どうも、青春太郎です。

今回の話も長くなりそうなのでお付き合い願えたら幸いです。

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