◆激戦?!◆
す、すみません…!
「さあ、皆さん。映像は楽しんでいただけましたでしょうか。」
「だいぶ時間が経ちましたね♡」
「規則的か不規則的か、どういう理由で動くのかわかりませんが、上空から見ると、面白いほどに、木立が動いているのがわかります。」
「巣の小鳥達は、いつもの事と言った感じで、平然とした顔をしています♡」
「昔は、ドリアードが住んでいた森という言い伝えがあるそうです。」
「ドリアードですか♡それはまた、さぞかし神秘的ですね!」
「ええ、ドリアードと言えば、私のような、美形に目が無いとか…」
「…うふふ。もしも遭遇してしまったら、樹の中で一緒に住もうと人間を取り込んでしまうそうです。とても積極的な精霊ですね♡」
「そうですか、喜んで、と言いたいところではありますが、幸か不幸か万が一にも、遭遇してしまった場合には、周辺の木立から一目散に逃げることをお勧め致します。」
「今も、どこかに実在するのでしょうか♡」
「いてもいなくても、ここは、ドリアードの言い伝えが残る森!絶対に森に危害を加えないように、慎重に進まなければなりません!」
「ミツバチさんも、驚かさないようにして欲しいところです♡」
「さあ、誰もが注目する中、一番先に動く森を抜け出すのは、一体、どの選手でしょうか!」
「楽しみですねー♡」
「森の出口、そしてそれに続く湿地帯の目印となるものは、この木彫りのトーテムポール!」
「そろそろ出てくる選手がいるかもしれません。我々こちらの出口上空で待ちましょう♡」
「あ♡人影が見えます!」
「これは、動きがあったようです!!」
「さあ、森を抜ける最初の選手は…♡」
「きたー!!!来ました!!最初に動く森を抜けたのは…ブルーラエドだー!!!そして、それを僅差で追うのは、ディアクロー!!この差なら、首位変動がいつあってもおかしくありません!」
「接戦ですねー♡」
「そして、続くのは、シェヴィル!超高速で稼働する足首で、湿地帯へと入っていく!!小さな湿地帯と呼ばれてはいますが、なかなかの広さに見えます。」
「渡鳥が羽を休め、豊かな土壌には生物達が集うこの湿地帯。選手達は、平均台のような細さの仮設道を、片足ケンケンで進みます♡」
「所々、飛び石のようになっているので、足に負担がかかる事間違いなしです。」
「畦道にはぬかるみもあるので、足を取られない様、要注意です♡」
「さあ、続々と、動く森を選手達が抜けてきます!まずは、フラック!その後に、ジェーン!ジェーンを追うようにアルティン!そして2つ順位を落としたのは、グロウ。とほぼ同時にイヴォンヌ!ミシェルは、まだ見えないが、かなり後方か!ミシェル以外は、小さな湿地帯エリアに入りました!」
「表彰台争いも気になりますが、残る全ての選手がここまでとても良い走りを見せています♡」
「素晴らしいですね。ブルーラエド、ディアクロー、シェヴィル、この3選手は、小さな湿地帯も難なく進んでいきます。」
「しかし♡フラック選手も猛追を見せています!」
「ぬかるみの貴公子という異名を持つ男、フラック!ここが勝負どころか!しかし、ここで残りの力を使ってしまうのではないかという、猛追です。」
「お顔が苦しそうなので、少し心配ですね。」
「さあ、続く選手も小さな湿地帯を進みます!ジェーンの走りは、本当に翼があるように華麗に舞っているように見えます。軽々と飛び石も超えていく…」
「きゃあ!あれはなんでしょう!?」
「ジェーンの軽く着いた足の反動で、何かが顔を見せました…なんと!!飛び石に見えたのは、小岩ほどもありそうなカエルの背中だー!!!」
「ああ!!!アルティン選手が!!」
「おっとー!!これは、どうしたことかー!アルティン、巨大なカエルに驚いたのか、沼に落ちてしまったようです…ん?なんということだ!!アルティン!沼に落ちてしまったにも関わらず、片足を上げてV字バランスを取っています!!しかし、重さで沈んでいく…!!」
「…アルティン選手…!」
「片足のまま、コースは外れてはいないので、失格にはなっていませんが、どうやってここから抜け出すのか!立ち尽くしてしまします!リタイアを宣言するか…」
「皆さん!ご覧ください!!アルティン選手の様子に気づいた、ジェーン選手が、戻ってきます!!」
「おっと、グロウも追いついて、アルティンを引き抜こうとしています!!」
「…がんばれ!アルティン選手!!」
「しかし、ズッポリハマってしまって、なかな抜けません!イヴォンヌも追いつき、何か指示しています。」
「どうやら、ブーツを諦めて、足だけ引き抜くようですね…」
「となると、アルティンはこの後の道のりを、魔導具なしで片足ケンケンというさらに過酷なレースとなってしまいます。」
「あ、いま、アルティン選手、引き抜かれました♡ブーツは、諦めるようですね…」
「しかし、皆さん!アルティンの表情に、諦めの色は見えません!!3人に礼を言い、先に行くよう言っています!!」
「ええ♡3選手とも、再スタートしました!!」
「アルティンは、反対のブーツを装着し直し、こちらも再スタートするようです…!!」
「なんと、お互いライバルにも関わらず、協力して一人の選手を助けるという…」
「このレースだからこそかもしれませんね…」
「そうです、片足ケンケン、このレースだからかもしれません!!峠を越えれば、後はゴールまでまっしぐら!山間部は、ひたすら上り、下って、ゴールの王都を目指します…!!」
「ここで、残念なお知らせです。動く森にいたミシェル選手ですが、後ろ向きだった為か、ミツバチの巣にぶつかってしまい、追われていたところ、さらに至る所にぶつかって、木の枝を折ってしまい、最終的に、自身も尻もちをついてしまった為に、失格となりましたのでご報告いたします♡」
「そうですか…残念です。では、先頭集団へと戻りましょう。」
「そうですね♡」
「トップ3選手は、山間部へと差しかかり、ひたすら上っていきます!上り坂はわずかで、長い下り坂が待っています。」
「しかし、山頂付近♡頂はもうすぐそこなのに、辿り着かない。これはもうほぼ登山。地味なのに、最後の最後でやっぱりこれが待ち受けます…。そう、上り最後の難関、これでもかと足に負担をかけるのは、この階段!!」
「登りきったその先は、地獄か天国か!はたまた、楽園か…いいえ、長い下り坂が待つのみです!!」
「はあ♡やはりとても過酷なレースですね…。」
「我々がそうこう言っているうちに、トップ2選手は、山頂から、長い下り坂へと入っていきます。」
「本当に、見事な走りですね♡」
「しかし、ここにきて、どうやら、マッハの足首シェヴィルの調子が悪いようだ…トラブルか?トップ2選手と差が開いていく…」
「足首を気にしているようですね…山頂の階段も、整備されている階段とは言え、歩調が合わないと登り辛いですからね…負担がかかりすぎたのでしょうか…心配です。」
「あーやはり、フラックも、ここにきてかなりの失速…先ほどの猛追で力を使い切ってしまったか…!」
「選手達、ここまできたら、最後まで、なんとか駆け抜けて欲しいですね…!」
「そんなフラックを横目に、ジェーン、グロウ、イヴォンヌが、駆け抜けていく!」
「フラック選手が3選手に手を振っています♡」
「俺を置いて先に行け、という合図なのか。フラックも、最後まで駆け抜けてほしいが、一体どうなる…!」
「アルティン選手も、履きづらいであろうブーツで、懸命に追いかけます!!」
「最後まで、本当に目が離せないレースとなりました!」
「本当にそうですね♡応援している皆さんも、息を呑んで見守っていることでしょう…!」
「さて、アルティンを見届けたところで、再び先頭集団へ追いつきます!」
「そうですね♡アルティン選手は、別のイロンデルにお任せしましょう。」
「数分の間に、ディアクローが先頭となっています。続いてブルーラエド。後続との距離は、かなりあいています。」
「ディアクロー選手!初出場で、この走り♡本当に見事です!!」
「おっと、坂道もだいぶ下って来た所で、分岐点が見えます。道が二股に分かれています。」
「分岐で、緩やかな下り道が続き、降り切ればアジュールの街はもう目前♡あとは街道をひたすらゴールに向かって進むだけ!」
「その分岐は間も無く。物凄いスピードでケンケンをしながら、並走し、火花を散らす二人!」
「果たしてここが運命の別れ道となるのでしょうか…!」
「それぞれが道を進んで行く!ディアクローは、左の道を選ぶ!ブルーラエドは、右の道を進みます!」
「我々も、二手に分かれて中継を続けます♡」
「さあ、私、オールドメゾンが追うのは、ブルーラエド!
おや、こちらは、ブルーラエドの行先に、誰かいますね…
どこか具合が悪いのか?ぐったりした老人が、道端に座り込んでいる!
さあ、どうするのか、ブルーラエド選手!
知らぬ顔で通り過ぎるのか?!このまま横を突っ切っていくのか?
そんなはずは、ありません!ブルーラエド!
スピードを落とし、止まって声をかける!
どうやら、柴刈りの帰り道、膝を痛めて歩けなくなってしまったようですね…
すかさず薪木ごとおじいさんを背中に負ぶったー!!
さすが、ブルーラエド!!先ほどと変わらぬスピードで進みます!!」
「私、ソフィが追うのは、ディアクロー選手♡
おっと♡こちらも問題発生でしょうか?!
ディアクロー選手、行く手に、ぐったりした老婆が座り込んでいます!!
これはどうしたのでしょう…
ディアクロー選手も迷う事なく速度を落とし、おばあさんに近づきます!
どうやら、川で洗った洗濯物が重すぎて腰を痛めてしまい、歩けないようです…
さあ♡ディアクロー選手も、おばあさんを優しく背負うと
先ほどと変わらぬスピードで進んでいきます!!」
「「一体これはどうなるのか…!」」
「こ、これは?!」
「このままいくと、合流地点に、一件の家が見えます…♡」
「もしや、、もしや、、もしや!!それはそうでしょう!2人は、ご夫婦だーーー!!」
「両者、まさかの同時にご夫婦の家で合流です♡」
「いやー、こんなこともあるんですねー。」
「何が起こりかわかりませんからね♡」
「おっと!!ここでブルーラエドが、人の家のドアを蹴り破るー!これは、遠慮のかけらもありません!!」
「ドアが吹っ飛びましたね♡」
「これには、おじいさんは、、激おこだー!!ブルーラエドの体を脚でしっかりホールドし、腕を振りまわし始めた!いつのまにか元気になっている!!」
「目を見張る元気の良さですね♡」
「さあて、一方のおばあさんは、寝たふりしなが、ディアクロー選手から離れません!」
「これは、いい匂いがするのでしょうか♡首元の匂いを、クンクンとさりげなく嗅いでいます!!」
「二人とも、離れない!!これは思わぬピンチだー!!!」
「そうしている間に、後続が、その開いた距離を、じわじわと、じわじわと詰めてきております♡」
「果たして、この結末や、いかに…!!」
お待たせしました!…待ってないか…とにかく、読んでくださり、ありがとうございます!
これまた続きます…