74 人を殺したら死刑で当然
74 人を殺したら死刑で当然
タマゴ「僕の名前はティモ・ミドライグル。ティモ様と呼べ」
タマゴ──ティモ・ミドライグルは俺たち一般庶民にそう命じた。手の平を前に突き出し促す彼は王族のオーラがある。
だからと言って俺たちがこいつの家来になるわけではない。俺の中で奴はずっとタマゴのままだ。
漆「じゃあそのティモさん。あなたは一体何者なの?どうしてこんな大掛かりな殺し合いコンテストを、あなたの様な子供に出来たの?」
ティモ「すぐ人に聞くのは良くないよ? まずは自分で考えてみな?そして分からなかったら調べなよ」
漆「それもそうねー。でも私たちこの後誰かさんに殺されるみたいなの。だから教えてくれな〜い?」
ティモの怒りに触れないギリギリの漆の挑発。いや、挑発かどうかも怪しいが俺だったら少しムカつく態度。
でもティモの気には障らなかったらしい。王様は椅子に座り直して腕を組む余裕がある。
ティモ「僕も人間だよ。普通の人間。別に何か特別な物があるわけじゃない。僕にはこの、ビッグ烏骨鶏しかない」
ギンター「俺は正直お前のクローンがいると思っていたが?」
ティモ「影武者はいたけど、そんなファンタジーな物はいないよ。僕は特別な人間じゃないんだってば」
漆「ならティモ・ミドライグル──貴方を殺せばこのふざけた日常が終わるわけね?」
ティモ「どうだろうね。確かに君たちは人数的にも僕を殺せるだろう。でも、それでふざけた日常は終わるのかな?」
ただでは死なない──そんなことを感じさせる口調。撃てるものなら撃ってみろと言わんばかり。
けど、そんな奴を見て俺は安心した。だってこいつは死ぬ覚悟ができているからだ。
レイナ「・・・私たちはちゃんと、自分の罪を償うつもりです。法律によって決められた罰を受けます」
ティモ「へ〜。偉いね。でもそれでも君たちが犯した罪は消えないんだよ?」
ティモ「いい?罪っていうのは罰を受けたからって許されるわけじゃないんだ」
ティモ「罰を受けたからって、殺された被害者が蘇るわけでもない。君たち犯罪者のしたことはもう二度と、消えることがないんだよ」
「分かってる。俺たちが過去に犯した罪は消えない。それは犯罪者が忘れてはいけないこと」
「だから生きている限り、俺は罪と向かい合って反省したい」
大人しく聞いていたティモの目つきを俺は一変させてしまった。ティモは堪らず吹いて笑う。奴は俺を見て怒って、呆れて、笑わずにはいられなかったんだ。
ティモ「──甘ったれんなよ? そんなの家族が殺された人間の前で言えるのか?結局ね、残された遺族が何を望むかって、自分の大切な人を奪った奴の死だよ」
ティモ「だから君の国──日本には死刑があるんじゃないのか?死刑は遺族にとって唯一の心の救いなんだよ」
「・・・確かにそうだと思う。実際お前のようにそう思っている人間はいるよ」
「でも、死刑は自分が犯した罪から逃げていると俺は思う。だって──」
ティモ「ふざけんな!どの口でそんなおかしなことを──」
「聞いてくれよ!!」
俺は助けを求めるように怯えて、叫んでいた。4人の生殺与奪権を握っているティモに逆らうということは死を意味する。
当然銃で撃たれることを覚悟したさ。だから目を閉じた。視界が真っ暗になってもまだ、俺は撃たれない。確かめる様に目を開けると、椅子から降りたティモが立っていた。
ティモ「いいよ。聞いてやる。〝だって〟なんなんだ?」
こいつは俺を人として見ていた。俺の目を見てしっかり聞く姿勢をとっていた。驚きで口がすぐに動かない。
「あ、ああ。だって、死刑は自分が犯した罪と向かい合い、それが取り返しのつかないことだったと自覚して、反省するための時間を奪っていると思うんだ」
「例え死刑が妥当であろう罪を犯したとしてもずっと死ぬまで生きてその罪に対して一生をかけて、頭を下げ続けるべきだ」
「それこそ最後には涙を流して反省すべきなんだ。それが本当の意味での罪の償いなんじゃないのか?」
無我夢中で一方的に話していたにも関わらず、ティモは最後まで俺を見て聞いてくれていた。
話し終えた今も俺を見てお気に入りであるはずの椅子に座ろうとしない。それどころか彼はその場に膝を着いてしまった。彼は震えていた。
ティモ「……じゃあなんだよ。結局僕もお前らと同じ犯罪者ってことかよ。僕は人殺しの犯罪者は死刑が当然だと思ったんだぞ。だからこんな、こんなバカなことをしたんだ」
レイナ「その自覚があったのになぜ!」
ティモ「最初は正義のためだから仕方ないと自分を説得したさ。でも自分では殺せなかった。だから君たちをあの島に集めて、殺人コンテストをやらせた」
ティモ「犯罪者に犯罪者を殺させるのは我ながら名案だと思ったよ。鬼も作って最後には鬼に殺させた。けど不思議とね殺人コンテストを行なっている時は、罪悪感なんてなかったよ」
ティモは灰色の天井を見上げて笑う。笑ってしまったという感じに、涎を垂らす。
垂れたそれを腕で拭き取ると彼は再び話し始める。お酒が入ったかのように興奮した彼の口はまだ閉じない。




