72 何が出るかな?
72 何が出るかな?
〝ちーん〟──と、緊張感のない音でエレベーターが到着を知らせる。
ギンターは拳を、漆はナイフを構える。俺とレイナはその2人の後ろに立つ。そのまま開かれるエレベーターのドアを警戒する。
自動とは思えないほどゆっくり開くドア。まるで俺たちの緊張を嘲笑うかのようにドアは時間を使う。だが結局──
ギンター「・・・誰もいない?」
まだ安心は出来ない。ギンターと漆は身構えたまま、その開かれたエレベーターへ接近する。
エレベーターの中に何も仕掛けがないとは言い切れないし、乗った瞬間に何かが起こるかもしれない。ところが前の2人は俺の警戒を無意味だと言わんばかりにあっさり乗り込んだ。
漆「普通のエレベーターね」
ギンター「仕掛けも何もなさそうだ」
エレベーターに乗った2人は中の天井、壁、床を目と手でチェック中。俺も廊下から中を覗いてみたが2人の言った通りだった。
そこにはただの灰色の空間があるだけ。工事が終わったばかりのように綺麗だ。
何もなさそうなので俺とレイナもそれに乗り込む。中は温度が廊下よりも下がった気がしたがその程度。ほんと、普通のエレベーター。階数のボタンは1から4。きっとタマゴは最上階の4階だろう。
レイナ「どうしますか? 全ての階に行きますか?」
「4階に行こう。他の階はこの戦いが終わってから行けば良いよ」
漆「珍しく同感」
ギンター「それが適切だろう。叩くべき敵の居場所が分かっているのだからな」
最後にレイナも笑顔で賛成してくれた。3人の視線が俺に集まる。まあ、そう焦るなと1つ息を吐く。こちらも贅沢に時間を使って4のボタンを押してやった。
またのんびりと動き始めるドア。ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり閉まるドアは。俺たちに最後に廊下の景色を見ておけと言っているようだ。だがその時間は俺たちにとってちょうど良い。
いよいよタマゴと会う。どんなに時間をかけたってこの緊張はなくならないけど、おかげで少しはマシになりそう。
「そういえばこのエレベーター、開け閉めのボタンが無くないか?」
皆、数字のボタンの周囲に注目し他の壁を見てそれを探した。同じく何か不吉な予感があったのかもしれない。
一旦エレベーターから出ようかと思ったがドアはすでにほぼ閉まっている。
漆「これが最先端のエレベーターでしょ? 知らないの?」
ギンター「ああ、その通り。アメリカではこれが普通だ」
レイナ「そうなんですか!?」
いや、2人の下手くそな演技から察するに嘘だろう。絶対嘘だ。だが、その嘘がどうか本当であって欲しい。
漆「どうせまた何もないよ。タマゴは私たちと本気で会おうとしてる。でなきゃとっくに殺してるよ」
まさか漆に励まされて安心するとはな。彼女にそのつもりがなかろうが感謝したい。
けど案外言う通りかもしれないな。俺たちを案内して何の仕掛けもなくて──と言うかそもそも、あのボートで上陸できた時点でタマゴは俺たちに会うつもりだ。
ギンター「だが、万が一の場合に備えてドアの前には俺が立っておこう」
レイナ「どうしてですか?」
漆「ドアが開くと同時にリボルバーで脳天ぶち抜かれたり、レーザーでサイコロステーキとかあるかもでしょ?」
「やめろよ縁起でもない。ホラー映画の見過ぎだ」
漆「まあ、何かしらありそうじゃない?だから体のデカいギンターが前に立つのはいい作戦」
ギンター「俺はこの時のためにこの暑苦しい鬼の着ぐるみを着続けている」
違和感がないほど鬼の着ぐるみはギンターのものになっていた。あの着ぐるみは、着ぐるみというには鎧のように作られている。生身よりは──
〝ちーん〟
エレベーターの到着音が響く。あっという間に4階に到着していた。




