70 鉄のお城
70 鉄のお城
ギンターが操縦するボートはどこまでも広がる闇の上を進む。揺れる夜の海の上を迷わず直進。目指すはそう、ビッグ烏骨鶏。
あの島からでもその大きな姿を確認できたが──近くで見る黒船はビッグなんてもんじゃ申し訳ないほど巨大だった。
長く太いその船はまるで海の上に建てられた黒い鉄の城。魔法よりも科学が似合いそうなハイテクな魔王が住んでいそうな外観。
レイナ「今更ですけどやっぱりあそこに行かなきゃダメなんですよね。このままどこかに逃げたりとか・・・」
「早く帰りたい気持ちは分かるよ。でもタマゴとは決着をつけるべきだ」
漆「ま、逃げたところでどうせこのバカデカい軍艦で追いかけてくるっしょ」
漆「それにこのボートのエネルギーが切れて海の上で漂流、なんてこともありえなくはないし」
ギンター「もし嫌ならば、船の入り口でチカイは待機しても良いんだぞ。その間の安全は保証しかねるがな」
レイナ「大丈夫です。私も皆さんと一緒に最後まで行きます」
レイナ「ところで・・・船の入り口はどこにあるんでしょう?」
ギンター「あそこだ。もうすぐ着くぞ」
ギンターはビッグ烏骨鶏の後部を指差す。ボートはそこを目指し黒船に徐々に近づく。
漆「にしてもザル警備ね。確か潜水することも出来るのに浮いたまま。さらにはボートの搬入口まで開けたまんま」
「あえて──だろうな。奴は俺たちを待っている」
漆「そんな度胸のあるビビリさんに対面できると思うとテンション上がるわ〜」
それは虚勢ではなかった。胸の前で拳を叩き合わせた彼女は言葉通りにワクワクだ。
ワクワクという意味でなら俺もそうだ。タマゴに会う事に関してはある種の期待がある。タマゴが本当はどういう人間で、どういう風に話すのか。モニターで見てきたタマゴと同じなのか。そして奴の正体はなんなのか。そう考えるとおかしいけど、楽しみになるんだ。
そんなことを考えているといつの間にかボートは黒船に上陸していた。みんなすでにボートを降りて鉄の城の入り口に立つ。
レイナ「タスク君。どうかしました?」
「いや〜。この鬼のヘルメットを置いていくのかと思って」
ギンター「鬼の胴体の方は耐久性が高いから着ていくが、そんな物は持っていても仕方がない」
漆「おいおいまさかノリタクさんビビってチビって──」
漆が殴りたくなる笑顔で寄ってきたのですぐにボートを降りた。こいつの緊張感の無さは呆れてもはやリスペクト。だがそれに助けられる俺がいる。少しは足が軽くなったよ。
「ついにここまで来たんだな」
そんな言葉が漏れた。何を安心しきったのか、もう脱出した気分。今までミニゲームで鬼と対決してきた彼らもこんな気持ちだったんじゃないだろうか。
やっとスタートラインに立てたのは分かってる。ここからが勝負なんだ。
俺も死ぬかもしれない。誰かが死ぬかもしれない。それでも俺たちはこの闇の中へ進まなければならない。
例えその先に光がなくとも。
「行くぞ」
ギンターと漆が先頭を行く。俺とレイナはその背中について行く。真っ暗な城の中へ、俺たちは1歩を踏み入れた。




