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67 鬼退治

67 鬼退治



 頭にナイフが突き刺さったままの鬼は一歩一歩砂を丁寧に踏み俺たちへ接近する。動きはとろい。走れば余裕で逃げられる。それなのになぜか逃げ切れる自身が湧かない。


 レイナ「・・・なんで。なんで死なないんですか!?」


 「落ち着けレイナ! ナイフを持て!」


 レイナが持っていたナイフは落ちて砂に刺さった。ナイフの存在を忘れた彼女はパニックになり叫び、過呼吸になりそうだった。


 だがもっと動揺していたのは漆の方。


 漆「──られない。信じられない。確かに脳みそをぶち抜いた手応えはあったのに、なんで歩けるの」

 

 それでも誰の介護も必要とせず、自分で鬼と距離が取れるところは流石プロ。それどころか彼女は死んだ鬼に刺さったままのナイフを回収して、再びあのデカい鬼へ狙いをつける。


 漆「くたばれ怪物!」


 沢山のナイフをめちゃくちゃ、めちゃくちゃに投げた。さっきまで1発を大切に撃っていた狙撃手のような彼女は、マシンガンを撃ち散らかす臆病者に変わった。


 疲労のせいもあるのだろうが数撃ちゃ当たる戦法を使うなんて漆じゃない。それでも投げたナイフが全て鬼の体に刺さっていくのだからすごい。数撃てば当たるどころか、数撃った分当たる。


 鬼の手足や胴体には無数のナイフが刺さり夜空の月の光を反射している。だが、それでも血は一滴も出ない。

 

 「こいつ、まだ動けるのか!?」


 滅多刺しの状態でも歩ける鬼を見てレイナは更に怖がり震えて俺から離れられない。いや、離れられないのは俺の方か。


 漆「おもしれえ! この手でぶっ殺してやんよ!」


 「待て! 1人で突っ込むな!」


 ナイフを片手に漆は鬼に突進。まるで俺だった。体に刺さっているナイフを丁寧に抜いている鬼はそんな漆を気にもしない。余裕なのか、油断なのか。結果的に漆は鬼への先制攻撃に成功した。


 鬼の股下に入り込んだ漆はそのまま拳を鬼の股間目掛けて突き上げる。


 漆「終いだな!」


 鬼の背後に立った漆が勝ち誇る。確かにあれが人間の男だったら人としても男としても終い──だが、鬼には関係なかった。鬼は振り返って小走りで漆へ迫る。そんな鬼に漆も向かっていく。2人がぶつかるその寸前、漆はふわりと飛んだ。


 手に持つナイフと自身の膝を鬼の顔に突き出して跳んだ。鬼のあごに漆の膝が直撃。流石の鬼もくらりと立ちすくむ。その揺れる脳天に暗殺者は勝利の旗というナイフを突き刺す。不死身かと思われた鬼は砂浜の上にどすんと倒れた。


 レイナ「・・・すごい。さすが漆さん」


 「しっかし、なんだったんだろうなこの化け物は」


 漆「本当に鬼だったんじゃね?」


 笑って戻ってくる漆の背後、急に起き上がった鬼が両手を組んで握り拳を振り上げた。彼女の名前を呼ぼうとした時、すでに遅し。拳はハンマーの如くドゴンと漆の頭を砕いた。


 「・・・うるし」


 レイナ「漆さん!!」

 

 赤い髪の毛が散る。漆は砂の上にパタリと倒れた。その瞬間がスローに見えた俺は包丁を持ってレイナのことを後ろへ突き飛ばす。


 「逃げろレイナ! 逃げ続けろ!」

 

 レイナは首を横に降る。俺はそれ以上は何も言わなかった。そんなことを言い合っている時間すらないと分かった。


 彼女が生き残るためにも、俺は時間を稼がなきゃいけない。そう思うと不思議と怖くなかった。それどころか鬼の目の前に立っても、案外殺せるんじゃないかと感じた。


 「殺す。殺してやるよ」


 特訓の成果。出るか分からないけど、漆の前で、零那(レイナ)が見てる前では死ねない。──漆、落ちてるナイフ借りるよ。


 鬼は倒れた漆を無視して俺の元へ来た。狙いは分からないが全員を殺すまでは止まらない、そんな殺戮機械(さつりくマシーン)と言ったところか。はは。やっぱりこんな怪物に1人で勝てるわけないよ。立ってくれよ漆。


 だが、待っていても漆は起き上がらない。なら、彼女がくれた()()()()()通りにやるのみ!


 〝いい?あんたは素人なんだから仕掛けちゃダメ〟


 鬼が手を出してくるのを待つ。これで良いんだろ?そしてナイフを構えるんだよな。


 〝敵はあんたを弱者だと思ってる。だからその油断を利用する。最初の1発はかわして〟


 「蜂のように刺す!」


 鬼の大振りのパンチを避けるのは公園のブランコを避けるように簡単。そのまま懐に入って包丁をあごに刺す!──が、包丁はあごを守った鬼の腕に刺さってしまった。でもまだナイフがある。

 

 「なんで死なないんだよー!」

 

 ダメ元でナイフであごを狙った。ジャンプする勢いで刺し込んだ。が、手応えがなかった。さっき包丁を刺したときもだ。まるで中身が空気のボールを刺したような感じ。人の肉とか骨とかは何も感じない。というよりそれ以前に刃が先の方しか入らない。肉に届かない。

  

 〝パキン〟


 頭の中でそんな音が聞こえた。何かが、俺の後頭部にぶつかった。多分鬼が俺を上から殴ったんだと思う。痛みとか何も感じない。でも鼻血が舞ったのが最後に見えた。その後に聞こえたのは鬼が俺を通り過ぎて行く足音。そして、守りたかった人の悲鳴──

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