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65 鬼で罪人退治!

65 鬼で罪人退治!



 「砂浜(ここ)で鬼を迎えても人数が少ない俺たちが不利。まずは森へ隠れよう。そして鬼を各個撃破だ!」


 レイナ「どれくらいの鬼を殺せば良いんでしょうね……」


 漆「ボートらしき光だけでも3つ。まさか1つのボートに鬼が1人なんてことはないだろうし、最悪1人で10人殺すかもね」


 「ここで話している暇はない! 早く行くぞ!」


 俺とレイナはナイフをしまい森へと逃げる。だがあいつは来ない。振り返ると更に大きく眩しくなった光を漆が見ていた。何か考えがあるのか。何か悩んでいるのか。いやそんな様子じゃない。ナイフを両手に握りしめた彼女の背中は、覚悟を決めていた。


 かっこつけやがって馬鹿野郎。そういうのを(さむらい)って言うんだよ。俺はつい、その勇ましい彼女の肩に手を乗せた。


 「まさか、1人で戦う気じゃないだろうな」


 漆「鬼がどれくらいの戦闘力か、少し確かめようと思ってね」


 「なら俺もここで戦う」


 レイナ「私も! どうせなら皆さんと一緒に死にたいですし」


 「それ、笑って言うことじゃなくない?」


 笑ったままのレイナにツッコミを入れると、漆まで吹いて笑う。


 「お前ら! どういう状況か分かってんのかよ!」


 漆「でもそうじゃない? どうせ死ぬならさ、あんた達と一緒に死にたいよ」


 「けどそれを笑って言ってるってことは、()()なんだよな?」


 レイナ「当たり前じゃないですか。私たちは3人で生きて出るんですから」


 漆「あらやーねー。ノリタクさんまさか本気にしたの?」


 「なわけ。てかノリタクさんってやめろ」


 俺も含めてとにかく何か話していないと落ち着かなかった。いや、落ち着きはしないけど気が済まない。とにかくじっとしていられない。どんどん迫る白い光をただ立ち止まって待つのが怖かった。


 鬼には来て欲しくない。殺す瞬間が訪れて欲しくない。でもその一方で、早く殺させてくれ、早く終わらせたいという気持ちもあった。


 漆「ボートが来たわよ。それも3つほぼ同時にね」


 レイナ「1つくらい沈んで欲しかったです」


 漆「そうね。海に沈んで溺死した方が、楽に死ねただろうにね」


 ここは殺人の島。神なんていない島。神風なんて吹かない。無事に上陸した3つのボートからは赤鬼や青鬼たちがぞろぞろと降りて、ざくざくと砂浜を踏んだ。


 「漆さん勘が良いな。鬼の数ピッタリ30じゃないのか?」


 漆「背中を合わせろ。早く」


 彼女の声が低くなる。一緒に訓練をした時の、スイッチが入った時の漆だ。それを知っている生徒の俺たちは言われた通り動く。3人の背中を隙間なく密着させる。


 つい、後ろへ後ろへと足を進めたくなり互いに背中で押し合う。その俺たちの周りを30人の鬼たちが円を作って取り囲む。


 完全に狩る側に追い詰められた狩られる側。俺たちは狼に囲まれた羊。しかしこの狼たちは知らない。そんな羊の中に、全くひるまない虎が潜んでいることを。


 漆「なあ、圧倒的に数的不利な状況になった時はどう抵抗するのが生き延びられると思う?」


 「わかんねえよ。バズーカーでもぶっ放したい気分だぜ」


 漆「──正解。遠距離で戦って1vs1(タイマン)の状況を作り出せ!」

 

 その瞬間、正面、右、左、と全ての方向に漆はナイフを投げた。目で追うのがやっとの早技。いや、神技。サーカスや体操選手のような軽い身のこなし。


 ダーツの如く的を狙って放たれたナイフは近寄る鬼たちの顔面に次々に命中。鬼の顔面から血を噴かし、砂浜に赤い水たまりを生んでいく。流石の鬼たちもそれには後ずさりをする。


 だが、俺とレイナは鬼達以上にその殺人ショーに怯んでいた。なぜなら漆がナイフを10回投げただけで、10体の鬼が血の水たまりと化したからだ。彼女の殺人ショーは、殺し合いコンテストで間違いなく最高の見世物(みせもの)だろう。


 漆「それじゃあ残りも片付けようか。あ、2人は私の援護頼むよ?」


 反射的に背筋を伸ばしてその命令に了解した。が、何が援護だ。援護なんて必要ないじゃないか。素直に何もしないでくださいって、言ってくれて構わないよ。


 漆幸香(うるしこうか)──こいつは俺たちを戦力と見ていない。最初から1人で全部の鬼を殺すつもりだったんだ。

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