64 3人の3日目
64 3人の3日目
とうとう3日目を迎えた。今日の内に俺たち3人の誰か1人が2人を殺さないと明日全員が処刑される。だが俺たちは誰かを殺して自分だけ助かることよりも、全員で最後まで抵抗することを選んだ。
明日俺たちは、タマゴを殺す。そのための漆によるナイフを用いた最後の戦闘訓練も先ほど終了した。今は配給された夜ご飯の天丼を3人で星空の下、砂浜に座り食べている。
別に大したものはないけど決起集会だ。キャンプファイヤーでも作って、それを3人で囲めれば良い雰囲気だったんだけどな。俺たちに囲まれた小さな木の枝たちも、そんなことを訴えたそうに目の前で寂しく燃えてくれている。
漆「てかさー。私ここであんたらと一緒に食ってていいのかな」
「別に今更計画がタマゴにバレてもすることは変わらないだろう。最後の夜になるかもしれないんだし仲良くしようぜ」
レイナ「最後の夜とか言わないでください。この島を出たらちゃんとしたお店でやりましょうよ! 打ち上げ!」
漆「でも私ら犯罪者じゃん?国に戻ってもどうなるのかね」
何気ない一言でふと現実に戻る。波の音だけが喋り続けるゆったりとした気まずい時間。
確かに島から出た後のことは具体的に考えていない。島から出られればそれで良いと思っていたけれど、現実的にそれも考えないといけなかった。
「こんなこと言ったらアレかもしれないけど、俺たちはもう十分に罰を受けたと思う」
「この島で殺し合いをさせられて、ずっと生きた心地がしなかったんだから」
漆「・・・そういやずっと気になっていたんだけどさ、ノリトってなんの罪を犯したの?」
レイナ「ノリトさんは罪を犯してませんよ。ずっとそう言って──」
「俺は、家族を殺した」
天丼を口に運ぶ2人の手が止まった。再び訪れる気まずい沈黙。それから逃げるように俺は天丼を口にせっせと運ぶ。
漆「──言う時はあっさり言うもんだね」
レイナ「本当に殺したんですか?」
「・・・うん。殺してないって、嘘ついててごめん」
レイナ「だ、誰にでもありますよ。隠したいこと」
そう言って彼女は笑ってくれたけど、失望しているだろう。このタイミングでやっぱり言うべきじゃなかったかな。でも、ここまできたら言っておこうと俺の直感が告げていた。
「俺も漆に聞きたいんだけどさ」
漆「何? 彼氏ならいないけど?」
・・・お、そうか。漆は真面目な顔でふざけたことを言う。冗談は冗談だと分かるように言ってくれ。
「真面目な話なんだけどさ、どうして俺たちに協力してくれたんだ?」
「漆なら俺とチカイの2人を殺すことは簡単に出来ただろ?」
レイナ「それ、私も気になっていました。正直今でも最後の最後で裏切るんじゃないかって、すいません」
漆「いや、警戒するのは別に良いよ。私だってあんたらが2人で殺しにくるんじゃないかって警戒はしてる」
漆「そんな私があんたらに協力した理由はここで1人生き残っても、私はこの先の人生で一生後悔すると思ったから」
「生きて後悔するよりも最後までやれるだけやって、死んだほうが良いって?」
漆「あんたは結構悲観的だけど私は正直、明日タマゴを殺せるとマジで思っているよ。だから別に死ぬなんて思っていない」
漆「それにそういうサムライっぽい考え方?戦って砕け散るとか私には分かんないし」
レイナ「漆さんって実はとても真面目で良い人ですよね」
「ほんとにな。最初からそうしていれば良かったのに」
漆「は? 別に私はなんも変わってないけど? 最初からこうだけど?」
タマゴ《いや〜。全くだよ。最初からそういうツマラナイ人間でいてくれれば、僕も最後まで期待しなかったのにさ。本当に君にはガッカリだよ漆幸香》
一緒に焚き火を囲んでいたかのようなノリで、そいつの声が突如流れた。この場にいないのは分かっていても立ち上がって周りを見渡す。やはり側には誰もいな──
漆「何かが海から来る。アレは・・・光?」
レイナ「もしかして救助船ですか!?」
「だと良いけど、そんな気の利いた救助船はいないだろうな」
漆「もし船だとしても、私たちを地獄へ運ぶ鬼が乗っているよ」
タマゴ《ぷっぱかぷっぱかぷっぱかプー! 鬼さん鬼さん出動!》
レイナ「まだ3日経ってないですよ!?」
漆「良いんじゃない?少し早く島から出られると思えば」
「そうだな。明日には良い朝を迎えられそうだ」
ナイフと包丁を構えた俺の体は、今にもそれを落としそうなほど震えている。両脇にいる2人もそれは同じだった。余裕なことを言ってはみせたが、全く余裕じゃない。
俺は予定外の事態に対応できない男なんだよ。




