63 波に消されたモノは
63 波に消されたモノは
レイナ「裸足になってもらってすいません。どうしても2人で波を感じて歩きたくて」
「全然いいよ。俺も海嫌いじゃないしさ」
考えてみると凄い。俺は今、女性と波打ち際を歩いている。いや、この場合は波打ち際ではなく渚と言った方がそれっぽいか?
そうだよ、完全にデートだよこれ。平成生まれの俺には、なんだか昭和っぽく感じるシチュエーションだけど体験してみると良いなこれ。ほんと、何度も思うけどこの島でなければな・・・。
レイナ「手! 繋ぎたいですか?」
「・・・え?」
隣を歩く彼女が急に右手を目の前に広げた。俺はそれに反射的にびびってしまい左手を少しだけ出して固まってしまう。彼女を見ると「冗談です」と笑顔で言って、訂正するように慌ただしく広げていた手を引っ込めてしまった。
それでも強引に握ってしまえばカッコイイ男だったのだろうか?俺には分からない。でも、この島でなかったら繋いでみたい。そう、俺たちはこの島から生きて出るんだ。
「今から驚くことを話す。でも変に驚かないでね」
レイナ「なんでも話してください」
おそらくタマゴは森の中に俺たちを監視する何かを設置している。けれどこの砂浜や海には、そういう電子機器は設置できていないはず。もしも音を拾う何かが仮にあったとしてもこの波の音が、俺たちの味方をしてくれるだろう。
「俺は漆を殺すって言った。そして実際にそれをした」
「でもそれは演技で、漆を殺すつもりはない。もちろん漆もそれを承知だ」
レイナ「・・・な、なんのためにそんなことを?」
「──タマゴを殺すためだよ。でも、俺にそんな力はない。きっと鬼たちに捕まる」
「だから漆にその力を鍛えてもらおうと、ああいうことをしたんだ」
レイナ「偶然ですけど結果的には、私も少し鍛えられたんですね」
「黙っていてごめん。レイナを巻き込みたくなかったというかその、安全なところにいて欲しくて」
レイナ「気にしないでください平気ですよ。私だって出来ることなら、安全に生きていたいですから。でもここまで来たなら仲間外れはなしですよ!」
「うん。明日、最後の訓練の日だ。一緒に漆を殺そう」
レイナ「2人なら余裕ですね!」
俺もレイナもその一言だけは舞台に上がっているつもりで、タマゴに聞こえるように言った。ぶっちゃけ2人でも漆を殺せる気はしないんだけどな。
「そういえばレイナも何か話あるんだっけ?」
レイナ「あっいや! 別にそんな大した話ではないのでまた今度で!」
「そう?なら良いけど、俺が忘れてたらいつでも言ってくれて良いからね」
レイナ「はい!」
そこには自然なチカイ零那──彼女の姿があると感じた。そういえばさっき話があるから渚に行こうって言ったあれは、演技ではなくて本当だったんだ。
彼女の提案で、その後も俺たちは渚を歩いて島を1周した。そういえば一瞬、赤い髪の毛が森の方に見えたけどあいつは今頃何をしているんだろう。
漆(くっそうあのリア充め私を放置してデートしてやがる・・・今すぐ殺してえ)




