3 さあ皆さんも一緒にぷっぱかプー♪
3 さあ皆さんも一緒にぷっぱかプー♪
いきなり現れた超巨大な黒い船。宇宙人が侵略しに来たと思わせるその恐怖の塊は俺たち12人を地震の時以上にパニックにさせた。
太った男「な、なんだよあれは……」
おばさん「軍艦じゃないの!?」
爽やか野郎「そうかあれが昔教科書で見た黒船か! じゃああれはアメリカの軍艦だな!」
スーツの女「どうしてアメリカの軍艦がここに現れるのよ」
赤い髪の女「もしかして誰かさんの迎えだったりしてね〜」
眼鏡のおじさん「それはどういう意味?」
赤い髪の女「ちっとは自分でも考えてから聞けよおっさん」
俺はその黒い船にビビって声も出なかった。だから冷静に話している彼らが信じられない。
本来ならば俺みたいに黙り込んでしまうかそこのおばさんみたいに怯えるのが普通だろう。
先ほど地震だと叫んだ中学生の女の子なんて尻餅をついて起き上がれないでいる。
特にあのチャラそうな赤い髪の女には言ってやりたい。なぜお前はこの状況でヘラヘラしているんだと。それから初対面の人におっさんは失礼だろ!
外国人「あれは潜水艦だな」
その一言でまたもや全員が黙って彼を見る。そういえばこの人は日本語で話していたんだっけか。
話し方に何も違和感がなかった。とても上手だ。もしかして日本で暮らしている人?どこの国の男か分からないが、彼は今も鋭く青い眼差しをあの船に送っている。
彼はヒゲや頭髪に白髪が混ざっているが体力が相当ありそうな肉体。背もこの中で一番デカいから威圧感が半端ない。このメンバーで一番睨まれたくないのは彼だ。
外国人「ついでに言うとあの潜水艦はアメリカではない」
スーツの女性「あなたはあの船の国籍が分かるんですか?」
外国人「分からない。国旗がないからな」
周りの人間が彼に感心していると赤いピアスを左右に揺らしながら、赤いワンピースを着た赤髪の女が1人で彼に近づく。
まるで喧嘩を売っているヤンキーのような歩き方。態度こそあれだがあの屈強な男を相手にまさか本当に喧嘩を売るわけではないだろう。
きっとあの外国人は単純な力比べならこの中でダントツ。それは誰でも見れば分かる。
赤い髪の女「そこの白人さん。なんであんたあれが潜水艦で、しかもアメリカ国籍じゃないって言い切れんの?」
外国人「何か問題か?」
赤い髪の女「いや、今自分で言ったしょ?国旗がないって」
赤髪の女、あの見た目にしては鋭いな。ただチャラいだけじゃないらしい。確かに彼女がいうようにあの黒船には国旗がない。だから普通はどこの国籍の船かは分からない。
日本かもしれないし中国かもしれない。イギリスかもしれないしもちろんアメリカ国籍の船という可能性もある。そう、アメリカの船ではない──と言い切ることは出来ないはずなのだ。
だが、あの外国人はそう言い切った。それも確かな自信を持って。
赤い髪の女「普通の人間じゃ見ただけで潜水艦だと分からない。なのにあんたはそれに加えて国籍まで見ただけで分かっていたわよね?」
外国人「そうだ。あの船は潜水艦でアメリカ国籍ではない」
赤い髪の女「つまりあんたさ、それなりの人ってことっしょ?」
赤い髪の女は外国人の男の正面に立つと腰に両手を当て、彼のことを下から見上げる。加えて挑発的な口調。まさに一触即発という状況。
男は冷静にしているがあの女の口はそろそろ止めた方が良いだろう。もしも殴られたら彼女が無事では済まないだろうし。
外国人「それなりの人──というのはどういう意味だ?」
赤い髪の女「私が予想するにズバリあんたは米軍ね。それも特殊部隊の人間! どう? ビンゴ〜?」
別に喧嘩を止めるようなキャラな俺ではないけど見ていてあの女は不愉快。だからなんのためらいもなく彼女の腕を後ろから引っ張り、彼から遠ざけた。
「そんなに質問攻めして失礼だろ!」
赤い髪の女「はあ? そういうあんたこそ初対面の私に向かって失礼っしょ? てかなに、あんた高校生?うっわ〜。童貞くっさ!」
彼女の腕を力強く握っていたはずの俺の手はいつの間にか簡単に外されていた。彼女も単純な腕力に自信があるのだろうか。キツい口調で言ったつもりだったが態度は全く変わらない。
そんな彼女に俺は拳を振り上げた。
「お前!失礼にも程が──」
〝パチン〟
その音が響いてからハッと理性を取り戻す。後悔しながら殴ったものを確認すると、俺の握り拳は大きな白い手の平の中にあった。
外国人「そうだ俺は米軍だ。所属先は言えないがな」
「ご! ごめん! 別に殴ろうと思ったわけじゃないんだ!」
外国人「問題ない」
「そ、そうか。少し深呼吸してくるよ……」
感情に任せて殴ったのに彼はその手を全く痛そうにしていなかった。
別に俺の力が通じなくて悔しいだなんて思っていない。相手は自称軍の兵士だ。いや、あっさりと俺を止めた今の行動で彼が軍人であることが証明された。
しかし外国人のその告白に俺はもちろん他のみんなも理解が追いついていないようで、戸惑っている。赤髪の女は満足したのか無言で彼から逃げるように離れていった。
吸って、吐いての深呼吸を繰り返し落ち着いた俺は、みんなが感じているはずの疑問を彼に尋ねた。
「なぜアメリカ軍の兵士がここに?」
外国人「それは俺にも──」
突如、森から海へ強風が突き抜ける。空に飛び立つ鳥たちの羽音。それらが男の声を消す。
風が過ぎると遊園地で流れていそうな明るい曲と共に、機械を通して子供の声が島のどこからか登場する。
???《ぷっぱか♪ ぷっぱか♪ ぷっぱかプー♪》
爽やか野郎「なんだこの変な歌」
清楚そうな彼女「ラッパを吹いている真似でしょうか」
???《ぷっぱか♪ ぷっぱか♪ ぷっぱかプー♪》
小さな女の子「癖になりそうなリズムかも」
赤い髪の女「マジで?あんたのそのセンス壊れてるから病院行きなよ」
???《ぷっぱか♪ ぷっぱか♪ ぷっぱかプー♪ じゃーん! 今から僕がなんでも教えてあげるよ!》
いきなり現れた聞き覚えのない声。あたりを見渡すが誰もその声の主を発見できない。
そんな俺たちに何も説明をしないまま幼い子供の声が島中に響き続ける。




