51 終わりなき殺人コンテスト
51 終わりなき殺人コンテスト
アスカ《どこにいるの!? 出て来なさい!》
タマゴ《僕はここさ。最初からこの船──ビッグ烏骨鶏の中にいるよ?》
船に映し出されていたモニターの映像が切り替わり、見慣れた姿のタマゴが現れる。しかしその制服の色は見慣れた黒でない。頭から靴まで全身黄色で揃えたタマゴが今までとは別の社長椅子に座っている。
漆「アスカが斬ったのは偽物だったみたいね」
「いや、分からないぞ。そもそもあの映像のタマゴだってバーチャルの存在かもしれない」
レイナ「そんなことってあるんですか?」
タマゴ《──残念だけどねノリトくん。僕は君が期待するような大した存在じゃない》
タマゴ《つまらないけれど、僕は普通の人間なんだ》
アスカ《ならその姿を見せなさい!!》
タマゴ《え〜。嫌だよ。だって外に出て行ったら君に、斬られるだろう?》
モニターの右下の隅──ワイプとして表示されているアスカを画面の中のタマゴが指差して笑う。自分の指で首を斬る動作までして余裕がある。
アスカ「じゃあせめて、さっき私が斬ったニセタマゴが何なのかを言いなさい!」
タマゴ《あー。あれは僕が万が一の時のために用意したいわゆる影武者だよ》
レイナ「その影武者って……人間なんですか?」
タマゴ《もちろん。さっき赤い血が出るのを見たでしょ?あ、クローン人間でもないよ。色々と僕に近づけるために、整形はしてるけどね》
タマゴ《まあ、だからつまり、アスカ妃美子は何の罪のないただの子供を殺した──ってことになるね》
ワイプからちょう画面全体に映し出されたアスカ。彼女の手は開き、持っていた日本刀はコトンと落ちた。彼女の膝は血の溜まった床につき、すぐ横に転がっている子供の頭を見ていた。
タマゴ《あっはは。どうしたのアスカさん? ただの子供を殺したと思った途端、おかしくなっちゃった?》
タマゴ《でもそもそもおかしいよね。殺しても問題のない人だったら、首を斬っても、罪悪感も何も感じないなんてさ。命は平等だよ?君が殺したそのただの子供と僕。どちらも同じ命だよ?》
「──お前が言うなよ。命で遊ぶお前が言うな!」
タマゴ《ノリト君。君たちは死んで当然の存在。何度も言っている通りこの島に来たやつらはみんな糞だ。ゴミクズ以下の犯罪者。罪の菌──罪菌だ》
タマゴ《罪菌は死んで当然。殺されて、処刑されて、当然。人間じゃないんだよ》
子供は椅子から立ち上がって強くそう訴える。その姿勢からは〝犯罪者〟という存在に対する強い怨み、憎しみ、怒りが感じられる。
俺は彼のその姿を見て人間らしいと感じてしまった。バーチャルの存在にはない心というものをこいつを見て感じた。
この小学生くらいの少年を一体何がこうしてしまったのか。俺は単純にタマゴ──いや、この少年に興味を持った。
「俺は、俺たちは、お前に何があったのか知らないよ。だから教えてくれないかお前のことを」
こいつに人の心があるならば、話せば通じるんじゃないか?俺たちが歩み寄ればこいつもこちらを理解してくれるんじゃないかと、そんなわずかな可能性にかけた。
今までのことを考えれば対話をしてくれるとは思えない。それが出来ていたらここまで人は減っていない。
それくらい俺だって分かってはいるさ。でもこのタマゴは今までのニセタマゴとは違う。
タマゴ《僕のこと?君達に話そうとは思わないよ。でもそうだな〜。最後の1人には教えてあげようかな》
漆「つまりまだ私たちに殺し合えってことね」
タマゴ《その通り。でもその前に、アスカ妃美子を殺人の罪で処刑します!》




