48 鬼
48 鬼
キケツと赤鬼がサウナルームに腰を落としてからモニターの時刻では10分が経とうとしている。
あのサウナルームはタマゴの説明では90℃。そろそろ苦しくなってくる頃合い。
頑張っているキケツには申し訳ないが見せられている俺たちはもう見るのが苦しい。
意外だったのはこのミニゲームが〝ただの我慢対決〟だったことだ。これまでを踏まえれば何かしらあると思ったが何もない。
キケツがいきなり赤鬼を殺すということもしなかった。
漆「ひ〜ま〜。とっとと部屋から出れば良いのに」
レイナ「出たら負けて死ぬんですよ?命がかかっているんですから・・・」
漆「ならあのままあそこで死ぬかもね〜」
「タマゴ!もし仮に、赤鬼があのサウナルームの中で死んだらそれは、キケツの勝ちってことになのか?」
タマゴ《……それはキケツの勝ちにならないよ。あくまでも先に部屋から出た方の負けだからね!》
タマゴ《あの部屋の中でどちらかが死んでも、その瞬間に勝負は決まらないよ》
漆「じゃあ死体を先に部屋から出せば良いわけだ」
この会話がキケツに聞こえていたのか分からないが彼は急に椅子から立ち上がった。かと思えば隣に座っている赤鬼に掴みかかる。タマゴはこれを止めさせようとはしない。
レイナ「喧嘩ですか!?」
漆「バーカ。吸血鬼の狩りが始まったんだよ」
キケツが鬼に覆いかぶさった時は俺も取っ組み合いの喧嘩が始まるのかと思った。
だが、キケツは鬼の頭と体を両手で押さえてその首元に噛み付いた。その光景は伝説の怪物である吸血鬼というよりも、ライオンやトラと言った猛獣。
品も何もない。ただただ食らいついく。
だが赤鬼もそのままシマウマのように殺されはしない。見た目通りの怪力で足だけでキケツを押し返すことに成功した。
けれどそれで精一杯。壁に寄りかかり、首を気にして俯いている。
モニターの映像からでは流血は確認できないが両者致命傷はなさそうだ。
それでも赤鬼に休んでいる暇はない。立ち上がったキケツはもう、鬼の目の前に立っている。
赤鬼は身構えるがキケツはそれを見て蹴りをいれた。1、2、3、4発。
高く上がったキケツの足が赤鬼の顔を集中的に蹴り続ける。もちろん赤鬼は両手でガードしているが防戦一方。攻めることができない。
何回蹴られたのか分からないが赤鬼の両腕がダランと床についた頃、距離を更に詰めたキケツの膝が赤鬼の顔にめり込んでいた。
漆「きったねー顔。もうあれじゃ鬼だかなんだか分かんないじゃん」
サウナルームにうつ伏せになった赤鬼。その肉体を舐めるようにキケツは見ている。
彼は頭部から手でなぞり何かを探している様子。そのキケツの手は鬼の膝の裏側で止まった。
覗き込むように鬼の膝裏に顔を近づけたかと思ったら彼は再び噛みついた。いや、今度は食いちぎった。
両手を使い食事をするように赤鬼の膝裏を貪る。
漆「や、やりやがった。食いやがった」
レイナ「嘘ですよね? 食べているんですか!?」
「食べてるよ。信じられないけど、赤鬼を食べてる」
人が獣と化して肉を食すその光景。同じ人間の姿とは思えない。ドン引きだ。
そんな俺たちの視線などお構いなしになおも食事を続けるキケツ。その食欲はとどまることを知らない。
「もう良いだろタマゴ! キケツの勝ちだ。早く終わらせろ!」
タマゴは俺に応じなかった。何の言葉も発しない。
俺を無視をしたのか声が入らないほどこの状況を楽しんでいるのだろうか。そうこうしているうちに鬼の左足は胴体から離れていた。
切断されたのではなくまるで足を引っこ抜かれたかのようにえぐれている。満たされたキケツはようやく部屋から出ようと扉を見ていた。
一応ルールは覚えていたようで赤鬼の死体を引きずっている。
レイナ「やっぱり先に赤鬼の死体を外に出すんですね」
漆「あの状況であの冷静さはすごいね。私だったらこんなゲームのこと忘れそう。そもそもあの暑さ──」
〝〝〝 爆発音 〟〟〟
「な、なんだ!?」
レイナ「さ、サウナルームが爆発しました」




