40 何鍋が出来たかな?
40 何鍋が出来たかな?
砂浜についた俺を待っていたのは予想していた未来とは全く別の光景。だって死んでいるはずの男が元気に俺を迎えたんだ。
キケツ「やあ、おはようノリトくん。昨夜はどうも。サイセちゃんはまだ来ないんだね」
「お、おはようございますキケツさん。もう少しで来ると思います」
・・・どうしてだ。どうしてキケツ藍也がここにいる。だって俺は昨日、お前をサイセという罠で釣って砂浜に送り込んだ。
だからお前はギンターに今頃鍋にされて──そうだ。ギンターはどこだ? ギンターはどこに!?
「漆! ギンターは!?」
漆「さーねー。それもこれから分かるんじゃないの?」
漆はトボけていた。砂浜にある鍋を見ながらイタズラにそう言ったが、そんなのは嘘だ。
ギンターがあんなひょろいキケツに殺されるわけない!
アスカ「何かあったのノリトくん?」
「ああ、いやなんでもな──」
アスカさんが残りの人たちを連れてきた。これで全員が砂浜に揃った。チカイ、ギヨウ、サイセ……そういえばウラハがいない?
「キケツさん。ウラハはどうしたんだ?」
キケツ「・・・ここにいないということは、どっちかなんだろうね」
「どっちか? それって殺したか、殺されたかってことですか!?」
キケツ「この島ではそれ以外にありえないだろう?」
今この場にいないのはギンターとウラハ。ということは今回殺されたのはギンターかもしれないし、ウラハかもしれないということ。
なんだよそれ。昨日ギンターと話した作戦とは違うじゃないか!
タマゴ《ぷっぱか! ぷっぱか! ぷっぱかプー♪いや〜。まだ第2回なのに参加者が減って寂しいね!》
寂しいなんてどの口が言ってんだ。映し出されたモニターに現れたタマゴは歌と共にスキップをしてノリノリ。何がそんなに楽しいものか。
「余計な前振りは大丈夫だ。とっとと本題に入ってくれ!」
タマゴ《あれ?元気になったねノリトくん。良いよ! じゃあ早速、鍋オープン!》
タマゴが指を鳴らすと森の中から青鬼が2体現れた。奴らはそのまま鍋の両端に立つと蓋を持ち上げる。
もわ〜っと鍋から出た大量の蒸気が悪臭と共に砂浜を包み込む。
人間串焼きの時とは違う生臭い匂い。鼻と口をすぐに閉じないと吐いてしまう。
ツンとした刺激臭が目まで刺激して涙が出てくる。これが人間を煮詰めた人間鍋の匂い。最悪な匂いだ。
そんな中1人の吸血鬼だけはこの匂いを楽しんでいる。なんとキケツは両手でこの悪臭を手繰り寄せているのだ。
キケツ「ん〜これは!懐かしい匂いだ。肉もちょうど──」
アスカ「あなた正気なの!? そんな実況しなくて良いから!」
ギヨウ「そうよサイセちゃんだっているのよ! やめなさいよ」
キケツ「これの鶏肉版の鍋は食べるだろう? どうして人間の鍋はダメなんだい? やっていることは同じだよ?」
アスカ「今はそんなことを議論する場合じゃありません!」
ギヨウ「サイセちゃんは鍋を見ちゃダメよ?」
サイセ「見ないよ。興味はあるけど、実際は見れたものじゃなさそうだから」
蒸気が異臭を残して消え去ると鍋の中が明らかになる。黄色のジャージを着たままの人間らしきものが浮かんでいる。
鍋の中は水いっぱい。蓋をして閉じ込められてそのまま溺れたんだろうか。
見た目がブヨブヨしているように見える。若干膨らんだそれはすでに形が人間離れしていた。
タマゴ《みんなも作品を楽しんでくれたかな? それじゃあ発表するよ!第2回殺人コンテストの作品は──》
流れるドラムコールは耳障この上ない。この間もいらない。俺が知りたいのはギンターがどっちになったかだ。
タマゴ《ギンター・アッシュ作。ウラハ輝陽の海水鍋です!》
ほっと安堵したと同時になぜと疑問が浮かぶ。しかしその疑問を彼に聞くことはもう出来ない。彼は既にモニターの中にいる。
ギンターは大きな拳を組んで椅子に座り、光る青い眼をこちらに向けていた。




