35 卵とライスでスクランブル
35 卵とライスでスクランブル
タマゴのアナウンスに従い俺たちは砂浜に戻った。そこにタマゴとシドウの姿はなく、代わりに赤鬼と青鬼が待っていた。
その鬼に脅されるようにして森を背に、俺たちは横一列で並ばされた。その列を囲むのは赤鬼と青鬼。棍棒を片手に立っている。
先ほど合唱をする為に並んだ時と雰囲気がまるで違う。これから1人ずつ処刑されていくといった感じだ。棍棒で殺されるくらいな銃の方がましだろう。
タマゴ《いやー。君たちには失望したよ。ほんと悲しい。僕はショックだよー》
そう言うタマゴの声は棒読み。いつの間にか島からビッグ烏骨鶏に戻ったタマゴ。奴はまたモニターの中で椅子に座っている。
砂浜に埋められていたはずだが姿は元通り。
汚れもなく綺麗になっていた。折れたように見えた背中もなんともない様子。さっきのタマゴと同じ人物とは思えない。
タマゴ《これから何が起こるかは分かっているかな?》
ウラハ「タマゴさん違うんだ!俺はこいつらに脅されて仕方なく──」
漆「どうせ殺すんでしょ!? さっさと殺せよ!」
タマゴ《あっひゃひゃ!すごいねー。流石罪菌だ! 全く反省していないや!》
ウラハ「俺は反省しています! 何でもしますから許してください!」
タマゴを殺すためのオムライス作戦は最悪な結果に終わった。
俺のせいでシドウはこの場から消えた。そして全員殺されるのだろう。
もう何もかも終わる。そう思うとウラハ輝陽の手の平を返した態度にも怒りすら感じない。
タマゴ《そこのデブッちょ罪菌がうるさいからハッキリ言うけど死ぬのは1人だけだよ》
ウラハ「……や、やった。助かった!!」
タマゴ《その1人がウラハだったりして〜》
ウラハ「──え?」
タマゴ《冗談だよ。その1人はね〜。ねえ、誰だと思うノリタク?》
誰かって?そんなの1人しかいない。さっきそう説明された時点で覚悟していた。
それにだいたいこういう時はこの場にいないやつが該当するんだ。俺に聞いてくる辺りほんとタマゴは、クソ野郎だな。
「──シドウだろ?」
タマゴ《ピンポーン! 花丸大正解!》
みんなの横目の視線を感じる。俺のことを気にしているような視線。
別に俺にとってシドウはそんな特別な人間じゃない。あいつは誰とでもすぐ仲良くなれるタイプだから俺とも親しく見えただけだ。
──いや、違うか。みんなが俺を横目で見たのは、俺がシドウを処刑台に送った男だからか。
タマゴ《それじゃあ緊急ミニゲーム!〝お布団パンパン〟開始!》
またいつもの盛り上げるための吹奏楽の演奏が流れる。これを聞くと悪いこと──マイジ博和が処刑された時を思い出す。
そしてまた、その時のように黒船の上が騒がしくなっている。
どこからか出て来た赤鬼が何かを持っている。ああ、なるほど。あれは十字架だ。
船から遠く離れた砂浜からでもその形が分かるほど大きい十字架を船首付近へ鬼が運ぶ。
運び終えたところでモニターにその様子が映し出された。それは予想通りの光景だったがやはり目を逸らしたくなる。
アスカ「シドウ君!」
ギヨウ「ちょっと! 何でよりによって十字架なんかに」
キケツ「ん〜。悪趣味だね〜」
その十字架にはシドウが縄で結ばれていた。
顔には見覚えのないアザがいくつか出来て、彼の表情は既に死んでいた。こちらのことにも気が付いていない。
あいつは今の自分の状況が分かっているのか、分かった上で死を受け入れているのだろうか。
いずれにせよ、明るくてうるさい──そんなシドウ大誠はもうこの世にはいない。
サイセ「あの鬼が持っているのって・・・」
ギンター「ここから先はモニターを見ない方がいい。目と、なんなら耳も塞げ」
設置された十字架を船上にいる赤鬼が取り囲む。そんな彼らの手には棍棒──ではなく金属バットが握られていた。
タマゴ《鬼さーん鬼さーん準備はいいかな〜?それじゃあ。レディ〜ッ……ゴッー!》
鬼たちは狂ったようにバットを振り上げてシドウへと群がる。
そして次から次へバコン、バコンと鈍い音がモニターと船の方から二重で島まで聞こえてきた。




