34 ケチャップをかけないとね!
34 ケチャップをかけないとね!
ウラハ「・・・赤鬼だ。赤鬼が来るぞ!」
サイセ「3体もいるよ!?」
ギヨウ「どうすればいいのよ!」
ギンター「落ち着け!!」
ギンターは怒鳴ったが立って慌てる彼らにはまるで聞こえていない。赤鬼はマイジ博和を処刑した時に現れた鬼。
あの悪夢を覚えているから、赤鬼に殺されるという恐怖にみんなのまれている。
漆「シドウ! ビビって力抜くんじゃねえぞ!」
3体の赤鬼が棍棒を振りかざして一斉にこちらへ走ってくるんだ。落ち着いていられるわけがない。
──うん。今は逃げるべきだ!
ウラハ「悪いけど僕は逃げるよ!」
キケツ「どこにだい?」
ウラハ「どこでも良いだろ!!」
ギヨウ「サイセちゃんもほら! 来なさい!」
チカイ「でも今逃げたら作戦は失敗して──」
「逃げてくれ! みんな逃げてくれ!」
キケツ「・・・すまないね。私も行くよ」
逃げようとしていたウラハたちは俺がそう叫ぶなり素直に森の中へ逃げ出した。
でも彼らを責めることはない。しょうがないんだ。あの赤鬼に捕まったらきっと殺される。赤鬼を見ると死を感じるんだ。
だからシドウたちには申し訳ないが俺も逃げたいよ!
チカイ「まさかノリトさんたちはこの状況で残るつもりですか!?」
「いいや、みんな逃げるぞ! タマゴを抱えながら逃げればまた後で──」
シドウ「俺が1人で殺る。だからノリトたちは逃げてくれよ」
シドウは何故か笑っていた。喜んでいるように見えた。こいつだって絶対逃げたいはずのに。死にたくないはずなのに。
恐怖が迫っている中、なんでそんな余裕なんだよ。この、馬鹿野郎が!
「何馬鹿なこと言ってんだよ!シドウも一緒に──」
シドウ「タマゴの上に乗っているから分かるけどさ」
シドウ「こいつ今すっげ〜力で、起き上がろうとしてんだよ。だから、俺はいいよ」
「そ、そうだギンター。一緒に赤鬼を止めよう! 漆も一緒に!」
ギンター「赤鬼は棍棒という武器を持っている。こちらには何もない」
漆「仮に私とこいつで1体の赤鬼を止められたとして、後の2体を誰が止められるの?」
「じゃあこのままシドウを見殺しにするのかよ!」
シドウ「ノリト翼!!」
「な、なんだよ!こんな時に急にノリタクって」
シドウ「こんな時でも良い人でいんなよな」
シドウ「俺たちは犯罪者だ。今更1人見捨てても、俺たちが犯罪者である事実は変わらねえから安心しろって」
「違う! 犯罪者とかそういう問題じゃない!」
そうは言いつつも俺の足はシドウとタマゴから離れ始めた。視界の中で徐々に大きくなる赤鬼に対して体が反射的に逃げようとしている。
ギンターと漆も後少し、俺のことを待ったら行ってしまうだろう。アスカさんもすでにタマゴの足を押さえるのをやめていた。
「──ごめんシドウ。本当にごめん」
俺はそれだけを言ってシドウから逃げた。他の3人も俺に続く。
森の手前で待っていたチカイさんとも合流すると、とにかく森の中を突き進んだ。
所詮俺もこんな人間なんだ。自分が助かれば誰かが死んでも別に構わない──そう思っている人間なんだ。
シドウ見捨てて自分は生き残ろうとする俺の行動は、殺人コンテストと何ら変わらない。
──けれど、それは誰だってそうだろう?だって生きたいっていうのが生物の本能じゃないか。シマウマだって群れの1体を犠牲にして、多数が生き残る。
そう、これが当然の思考なんだよ。今俺たちがシドウを見捨てて逃げることだって別に悪くない。俺は正しい!
俺の選択は間違っていないよ。
……分かっている。こんなのはただの言い訳だ。でも辛いんだ。こうでも思わないと走る足が止まる。
ギンター「シドウは良くやった。まさにサムライだ」
アスカ「振り向かないで。まだ終わっていないのよ!」
振り向けるものか。俺は今、自分を正当化するので精一杯だ。
チカイ「・・・タマゴはちゃんと殺せたんでしょうか」
漆「あいつならやってくれる。もし殺せていなかったらあのバカ男のことは、私が殺してやる」
──もしも、タマゴが生きていたらどうしよう。ちょうどそう思った時だった。
???《ぷっぱか! ぷっぱか! ぷっぱかプー!》
耳を疑いたくなる声が島に流れる。いつものアナウンスの声よりも真剣な口調で、もはや歌っていなかった。迫力はないものの、怒りが伝わる冷静なトーン。
でもこれは間違いなく奴の声だ。
タマゴ《緊急ミニゲーム。シドウ大誠くんによる〝お布団ぱんぱん〟を開始します》
タマゴ《殺されたくない罪菌の皆様は至急砂浜までお戻りください》
超威圧的な敬語口調でタマゴはそう述べた。機械越しの声はタマゴの無事を証明すると同時に、シドウに何かが起こることを意味していた。




