32 卵サンド大好き!
32 卵サンド大好き!
砂浜に迫る黒く細長い飛行物体。その正体は小型の飛行機だった。いわゆるプライベートジェット機。
子供1人が乗るにはもったいない。と、ウラハがボソッと言っていた。それはきっとあの機体がそれほど高級だからだろう。
でも同感だ。あんなやつドローンに荷物として運ばれてくれば良い。飛行機で来るとは贅沢な奴め。
その飛行機は白い砂を巻き上げながらゆっくりと俺たちの前に降下して着陸。
砂を巻き上げていた風がやむと飛行機の中から1人の男の子が顔を出した。
黄色い髪の子供は両手を上げて砂浜で着地のポーズ。笑顔で褒めて欲しそうにしている。ここが学校なら褒めてやらんくもない。
だがここは殺しの島。そしてお前はその元凶──本当にいたんだな、タマゴ。
タマゴ「スマート烏骨鶏着陸せいこー!」
黒の蝶ネクタイに黒い制服。育ちの良さそうな子供が純粋な笑みを俺たちに向ける。
映像から何度も聞いた〝あの声〟が今まさに俺たちと同じ場所に、目の前に立っている。本当にここに来るだなんて思わなかった。何も反応ができない。
タマゴ「みんなどうしたの? 僕に会いたかったんでしょう?」
シドウ「お、お前がタマゴ・・・なのか?」
タマゴ「ぷっぱか♪ ぷっぱか♪ ぷっぱかプー♪──ほら、僕がタマゴだよ?」
その歌声は何よりの証明。幾度も聞いたこの歌声。今日の朝も聞いたばかりの歌声。
紛れもなくこの子供が、あのタマゴ。それでも俺たちはまだその事実を受け入れたくなかった。
だって映像で見ていたあれがまさかそのまま目の前に現われるなんて、思わなかったんだ。
タマゴの正体はひょっとして大人なんじゃないかってそう思っていたんだ。むしろそうであって欲しかった。だってその方がまだ、殺しやすいじゃないか。
タマゴ「そうだ! せっかくだしみんなと一緒に朝ごはんを食べようかな!」
シドウ「お、い、良いな。そそ、そうしよう。みんなもいいよな!? な?」
シドウですら戸惑っている。でもこうしてタマゴと会話が出来ているあいつはほんと、大した男だ。俺たちなんて首を縦に振った返事しか出来ない。
タマゴ「OKビッグ烏骨鶏! ご飯よろしく!」
海上の黒船に向けてタマゴは肉声で頼んだ。船に届くわけもない小学生の声。
やはりこの島自体に何か、カメラやマイクなどの細工がされているんだろうか。そして今あの船の中には誰がいるんだろう? 鬼以外にも人間がいる?
タマゴが砂浜にいる間に黒船のコントロールを奪う──これはギンターが提案した別の作戦。
だがドローンをこちらに飛ばしてくるということは、やはり鬼も含めて何者かがあの中にはいるのだろう。侵入作戦は採用しなくて良かった。
けれどいつかは、あの船の中に入って東京へ帰りたい。
タマゴ「荷物来たよー。みんな気をつけてね〜」
アスカ「もう少し丁寧に荷物を運んではくれないの?」
タマゴ「これはとても丈夫な箱だから大丈夫だよ?」
箱が丈夫だからって落として良いわけじゃないだろう──なんてことは当然言えない。少しでも彼の機嫌を取らなければいけないんだから。そう、こいつは今王子様。
タマゴがこの場にいてもいつも通りドローンは箱を落としていく。俺はすっかり慣れてしまったがアスカさんは不満を隠せぬ顔で自分の箱を探していた。
全員が自分の荷物を受け取り朝ごはんのサンドイッチを手に取る。味はツナ、チーズ&レタスそして卵。
タマゴ「それじゃあみんなで一緒にいっただきまーす!」
タマゴを殺すために結束していた俺たちとは思えない、バラバラのタイミングでのいただきますが砂浜にお披露目される。
どうして俺たちはあんな小学生にメンタルまでコントロールされているんだ。それも相手はたった1人だぞ。
チカイ「タマゴ・・・くんはやっぱり卵が好きなの?」
タマゴ「卵大好きだよ! 毎食卵料理がいいなー!」
ギヨウ「卵は1日1つにしなきゃダメよ〜」
ウラハ「最近の研究ではそれは嘘らしいよ?確か食べるほど良かったんじゃないかな」
キケツ「まあ何事も食べ過ぎは良くないよ」
サイセ「ねえタマゴ。後で一緒に歌おうよ。その、ぷっぱかプーを」
タマゴ「いいよ。みんなで歌おうよ! 合唱だ!」
俺は無言でサンドイッチを口に運ぶ──ふりをしながらアスカ、漆、ギンター、シドウらと目で確認をした。
それを悟られないためにチカイさん達に会話を任せている。
彼らがタマゴと上手く話せるか心配だったが不思議なもので、間に食事が入ると緊張する相手でも会話が弾むようだ。
おかげで変な歌を歌うことになってしまったが、盛り上がっているなら良しとしよう。
ここまではほぼ作戦通り。タマゴを殺すオムライス作戦は食後、合唱の時に持ち越しだ。




