31 オムライス大好き!!
31 オムライス大好き!!
とうとうやって来たタマゴを殺す〝オムライス作戦〟の実行日。昨日、一昨日で予行演習、イメージトレーニングはバッチリ。
そんな日の朝、いつものタマゴの愉快な歌が目覚まし時計の代わりに流れた。
作戦のことがバレたのではないかとヒヤヒヤしたが、用件は俺たちへ発表があるとのこと。
どうせ殺人コンテストのお題の発表だろう。でもそんな発表はもはや無意味。なぜなら今日あいつを、タマゴを殺すからだ。
全員がまるで試験前の生徒のようにピリピリしている中、一番重要なシドウだけは普段通りニヤニヤしていた。
実際こいつはテスト前の10分休憩でも大声で人の邪魔をして笑っているか、寝ているのどちらかだろう。
教室じゃ勘弁だがシドウ、この島でお前は今日最高の生徒になるぞ!
シドウ「ん?どうしたノリタク」
「あっ、あぁ。今日は頼んだぞ」
シドウ「おう! 任せとけ!」
******
────砂浜
モニターに姿が映し出されるなりタマゴは愉快に歌い出す。
タマゴ《ぷっぱか♪ ぷっぱか♪ ぷっぱかプー♪》
サイセ「ぷっぱかぷっぱかぷっぱかプー」
ギヨウ「サイセちゃんはとうとう歌うようになったのね」
シドウ「ぷっぱか! ぷっぱか! ぷっぱかプー!」
タマゴ《良いね! みんなノリノリだ!》
シドウのあのコミュニケーション能力の高さには心から尊敬する。
青鬼になんの抵抗もなく話しかける彼ならタマゴとも親しくやれるだろう。だからこそ彼はタマゴを誘い出す役に抜擢された。
そしてこの2日間、やつはモニターの中のタマゴと積極的に言葉を交わしていた。
だけどあのバカ、急に歌いやがってビビったぞ。なるべくいつも通りにしろって言ったのに。
タマゴ《それじゃあみんなお待ちかねの第2回! 殺人コンテストのお題を発表します!》
また誰かが誰かを惨殺して、見せ物として処刑されるあの最悪の出来事が始まろうとしている。
けれどオムライス作戦のことに奴が触れなかったことで俺は皮肉にも安堵の息をもらした。
シドウ「ちょ〜! っと待ったー!!」
コンテストのために流れ始めたドラムコールをシドウの雄叫びが押しつぶす。
もともと声のデカいあいつだが今のはどんな逃走犯でもその場で止まるであろう大音量。
たまらずタマゴもドラムコールの再生を止めて反応する。
タマゴ《えーとー。何かあった?》
シドウ「いや〜。タマゴさんよ〜。そろそろ船から降りて、この場で発表してくれても良いんじゃないかな〜って思ってよ」
シドウ「その方がなんて言うか盛り上がると思うんだよ! なあノリト?」
「あ、ああ!そうだな。司会者が会場にいないのはなんか変だしな〜」
こいつ今俺にパスするアドリブを入れてきやがった! 焦ったじゃねえかよふざけろ!
頼むから台本通りにやってく。よりによってなんでタマゴに嫌われている俺をチョイスした! 殺す気か!?
タマゴ《んー? 僕が現場にいないと寂しいの?》
ギンター「この殺人コンテストの主催者たるお前はこのコンテストを盛り上げる為なら、出来るだけ協力してくれると、俺は記憶しているが?」
サイセ「私もタマゴに会いたいな。一緒にあの楽しい歌。ぷっぱかしたいよ」
タマゴ《え〜。そこまで言われたらしょうがないな〜》
正直この程度の誘いで奴が出てくるなんて俺は思っていない。だが別に今日出てこなくても良い。いつか、たった1回でも出てくればそれで良いのだ。
それにタマゴは意外とノリが良いタイプでそしてお祭り事が好きな小学生。そう、タマゴは子供だ。みんなそこに期待した。
もしもやつが本当にあの映像通りの小学生なら、特別警戒もしないであっさり出てくるんじゃないかって賭けたんだ。
タマゴ《けど僕が出て行ったらこのビッグ烏骨鶏の中が心配だな〜》
タマゴ《それに、ここから出て良いのか僕わからないし》
シドウ「ちょっとくらいなら大丈夫だって。それにあのビッグ烏骨鶏には鬼がいるだろ?」
タマゴ《そ、そうだけど〜》
シドウ「発表の間だけで良いから頼むよ! みんなタマゴに会いたいんだ!」
シドウはアスカが考えた台本通りに台詞を言った。見ていても違和感がない。
まるで本音で言っているように見える。いや、あれはきっと本音だ。
にしてもシドウには俳優の才能があったんだな。だが世間のためにこの島だけの話にしておこう。
そんなシドウを援護するために俺たちもなるべく会いたそうな表情で、モニターのあいつに視線を送り続ける。
さあ来いタマゴ。俺たちはお前のことは嫌いだが、お前に会いたいのは本当だぞ。
タマゴ《そこまで言われたら仕方ないな〜。じゃあ特別だよ?》
ウラハ「え、まじで!?」
シドウ「本当かタマゴ! ビッグ烏骨鶏から出て、島に来てくれるのか!?」
タマゴ《だってみんな僕に会いたいんでしょ〜?》
シドウ「会いたいよタマゴ! さあ来てくれ!」
タマゴ《じゃあ今から向かうねー!》
友達と話すような口調でそう言うとタマゴは椅子から立ち上がり映像から消えた。それから数分は何も反応がなく黒船は沈黙を続ける。
漆「今から向かうって言ってたけど、マジ?」
チカイ「さすがに予想外でしたね」
シドウ「どうしよう。俺めっちゃ緊張してきた」
アスカ「大丈夫よ。それはここの全員がそうだから」
ギンター「おい! 船から何か出たぞ!」
じっと黒船を見つめていると、ビッグ烏骨鶏から黒い飛行物体が飛び立つのが見えた。
飛行機? ドローン? もしくはミサイル?
だがきっとあれにタマゴが乗っている。誰もがそう感じていた。
黒い未確認飛行物体は真っ直ぐ砂浜に近づいてくる。




