27 車でバビブベブーン
27 車でバビブベブーン
タマゴ《勝負あり! 勝者は赤鬼! 敗者のマイジ博和はこれより処刑されまーす!》
「処刑だって!?」
ウラハ「しょけいってあの・・・処刑?」
タマゴ《言わなかったけ?これは命をかけたミニゲーム。勝ったら脱出。負けたらそりゃ〜。処刑だよね?》
アスカ「それはちょっと飛躍的じゃないかしら?」
タマゴ《だってマイジ博和はツエヘシ隆を殺したんだよ? 殺人犯はどうなるべきなの?》
ギヨウ「だ、だからってマイジさんを殺すこと──」
タマゴ《改めて言うけどお前達は全員犯罪者。罪の菌。ザイキンなんだよ。そもそも処刑されて当然なわけ》
涙ながらに訴えたギヨウさんに小学生が容赦無く言い放つ。とても見た目通りの子供とは思えない冷たい表情と希望のない声。
俺たちは現実を今一度、叩き込まれた。誰も何も言い返せない。
それでも犯罪者は処刑されて当然なのか?仮に犯罪者だとしても、どうしてそんな風に扱われるんだ。
タマゴ《マイジ博和の処刑方法は〜》
これも奴にとっては楽しいことなのだろう。だからすっかりお馴染みとなったドラムコールが鳴り出す。
椅子から崩れ落ちたマイジは青鬼に拘束され立たされているが、顔はガックリと下を向いている。
既に本人に意識はないだろう。逃げようとしても逃げられないだろうに青鬼は抜け目がない。
タマゴ《車でゴー! ゴー!だよ》
発表と共にビッグ烏骨鶏がまた騒がしくなる。
酒と机や椅子が片付けられて代わりに1台の黄色い車が用意された。普通のよくある乗用車だが黒い船の上では目立つ。
先ほどタマゴが言ったこととあの車を足して俺の脳内では悲惨な未来が見えた。あの黄色い車が処刑に使われることは間違いないだろう。
ギンター「タマゴ。1つ質問を良いか」
タマゴ《どうぞー?》
ギンター「その処刑とやら。痛みを最小限にしてなるべく楽に逝かせてやれるものなのか?」
タマゴ《ありゃりゃ。ギンターさんも案外アホなんだね》
シドウ「怒るなよギンター」
ギンター「誰かさんじゃないんだ。あんな挑発にはのらん」
いや、ちょっとは怒れよ。俺が短気みたいじゃないか。
タマゴ《みんなにも教えてあげよう。このマイジ博和がどんな罪を犯したのか! それを知ればこんなザイキンは死んで当然だと思えるよ!》
それには俺も食いついた。知ったところで島の脱出に役立つ知識だとは思えないが知りたい。
タマゴ《このおっさんはね〜。なかなかのクソ野郎なんだよ》
ギヨウ「酷く言い過ぎよ! 少しは人の心ってものがないの!?」
タマゴ《それがクソ野郎でも優しく言ってる方なんだよね。てかさ最後まで聞いてからそう言ってくれるかな、おばさん?》
はっとしてそのおばさんを見るとすでにチカイさんが彼女を押さえていた。だがこんな場面で禁句を言われたにも関わらずギヨウさんは意外と冷静だ。
チカイ「ギヨウさん。気持ちは分かりますがどうか、堪えてください」
ギヨウ「ノリトくんじゃないから大丈夫よ」
この人までそれを言うか。まあそんな冗談を言える余裕があるなら良いけど・・・。
タマゴ《当時31歳だったマイジ博和は複数の女子高校生に対して──》
タマゴはニュースを伝えるアナウンサーを真似して、マイジの罪について説明しだした。
タマゴ《その後サラリーマンとなったマイジは40歳の冬に盗難車で飲酒運転。8人をひき逃げ。6名が死亡し2名は重傷》
過去には俺の知らないマイジ博和がいた。痴漢をして盗撮をして、盗難までして更に飲酒運転。そして人を殺して逃走。
自己紹介の時にどうして俺はマイジのことを殺人をしない人間だと思ったのだろう。あんなやつと一緒に笑っていたなんて思い出したくもない。
タマゴ《みんなしっかり聞いてくれたかな? 最低なゴミクズ野郎でしょ? まさにマイジヒロカスだよね!》
タマゴ《こんな奴がどう処刑されようがどうでも良いよね? できる限り苦しんで死んで欲しいよね?》
俺は最初からあのおじさんに裏切られていたんだ。こういう人間って、そういうことかよ。呆れて何も言えない。
ギヨウさんをちらっと見たが彼女も俺と同じ気持ちらしい。砂浜に両手をつくギヨウの背をサイセが片手でさする。
船の上にいる人殺しのクズに向かって彼女が吠えてエールを送ることはもうないだろう。
タマゴ《それじゃあマイジ号! はっしーん!》
誰にも止められることなく青鬼に連行されたマイジは黄色の車に乗せられる。先ほどまで酒を飲んでいた赤鬼がその運転席に座ると黄色い車はどんどん加速していく。
ビッグ烏骨鶏の甲板の上を車はぐるぐると回る。見ているこちらの目が回りそうな速度。
車はドリフトをショーを始めてタマゴと青鬼達はそれを見て両手をあげて大喜び。その時のタマゴはとても小学生らしかった。
タマゴ《ゴー! ゴー! ゴー!》
車はドリフトをやめると加速しながら船の周りを1週、2週と走る。そして4周目が始まろうとした時突然──車は海に飛び込んだ。
黄色の車が海に突入し水しぶきが上がった直後──海中で大きな爆発音が轟く。海底から押し上げられた水は車の部品と共に水の柱を作り、再び海へと消えた。
その後もモニターは海面を映し続けたが浮いてきたのは車だった黄色い鉄くずだけ。
タマゴ《はー。面白かったー。最後も派手でいいね!花火なんかも打ち上げれば良かったな〜。あ、ええと、これで第1回殺人コンテストは終了だよ》
タマゴ《第2回のお題の発表は後日行うね! それじゃあみんなお元気で〜!》
──いつの間にかモニターが消えていた。そして砂浜にはそれぞれの荷物が入った箱がすでに落とされている。
……ああ、そう言えばまだ、午前中だったんだな。




