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殺しアイランド~ザイキン12個集めてみた~  作者: 葵尉
2章 第1回殺人コンテストお題は「焼き鳥」
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26 お酒は多く飲むものではありません

26 お酒は多く飲むものではありません



 マイジと赤鬼の対決ミニゲーム──酒を飲め飲め!は、いよいよ終盤を迎えていた。


 終盤と言っても制限時間はない。ただ、彼と赤鬼が飲み終えた容器(ジョッキ)の山から察するにそろそろ勝負がつく頃だと思う。


 シドウ「マイジのおっさんすげーな。呼吸を忘れて飲んでるぜ」


 アスカ「それは鬼も同じ。2人のせいでジョッキにお酒を注ぐ青鬼たちの方が追い込まれているもの」


 漆「もしかしてあのおっさん赤鬼に勝ったりして。そんで島から脱出できたりしてね」


 サイセ「──多分だけど赤鬼が勝つよ」


 残酷な少女の一言は応援会場と化していた砂浜を白けさせるには十分。


 だが俺も赤鬼が勝つと思っている。きっとマイジはこの酒飲み対決に勝てない。


 ギヨウ「それはどうしてなのサイセちゃん。あなただってマイジさんに勝って欲しいでしょ?」


 サイセ「勝って欲しいよ。でもマイジさんは昨日お酒をたくさん飲んだ。だから不利だと思う」


 キケツ「そういえば君達の洞窟は昨晩賑やかだったようだけどお楽しみだったわけだ。でもどうやって酒を?」


 ギンター「タマゴだ。マイジの荷物にだけ酒が入っていたらしい」


 ウラハ「つまりマイジはハメられたんだな。マヌケなおっさんだ」


 チカイ「それじゃあまるでマイジさんが殺人をすることを、タマゴが知っていたみたいじゃないですか」

 

 確かにこのマイジのためにあるようなミニゲームと言い、タマゴに予知能力があったとしか思えない。もちろんそんな超能力があるとは思えないが。


 「どうなんだタマゴ。お前はマイジがツエヘシを殺すことを知っていたのか?」

 

 タマゴ《流石の僕でも誰が誰を殺そうとしているかは分からないよ。けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは、監視システムを通して知っていたよ》


 タマゴは重要なこと──監視システムの存在をあえてはっきり言った。


 おそらく監視カメラはあるんだとは思っていたが、俺たちにバラしたところで何も問題ないと判断したんだろう。


 タマゴ《みんな色々考えすぎだよ?()()()()()()()()()()()()()()()んだ。純粋に、どう人を殺すかが大事なんだよ》


 タマゴ《参加者である罪菌(ザイキン)の君たちは殺しという快感と、殺されるかもしれないという恐怖を楽しめばいいんだよ? それが死の遊び。()()()()()でしょ?》


 何が楽しめだ。こんなことさせられて、こんなもの見せられて楽しめるわけがない。


 タマゴ《ほらほら! 君たちのマイジさんが苦しそうだよ? 仲間でしょ? 君たちの仲間を殺した仲間でしょ? 同じ罪菌(ザイキン)でしょ? 応援してあげなよ!》

 

 この酒飲み対決の勝敗には興味が失せていた──つもりだった。


 だが、かけていた眼鏡が落ちても顔を真っ赤にしても、必死に戦うおじさんの姿を見ると気にせざるを得ない。


 しかしジョッキを口に運んでいたマイジの手は既に止まっている。さきほどまで必死に酒を注いでいた青鬼達も暇をしている。

 

 シドウ「赤鬼は全然ペースが落ちてない! やべーぞおっさん!」


 漆「何もやばかないわよ。別にマイジが負けたところで私たちにデメリットなんてないんだから」


 ・・・漆の言った通りだ。俺たちにはマイジが勝とうが負けようが何も関係ない。


 むしろ俺としてはあいつが勝ってこの島から脱出される方が気に食わない。


 俺にはもうシドウのように注目したり、サイセやチカイさんのように見守ったり、ギヨウさんのように応援しようという心がなかった。


 気にはなるが、彼を応援する気にはなれなかった。

 

 タマゴ《あっれれ〜? マイジさんギブアップかな〜?》

 

 マイジは呼吸をするのもやっとで眼球が揺れている。


 きっとあれじゃあ椅子から立ち上がれないだろうな。タマゴの声すら聞こえていない。彼は酔っているなんてもんじゃない。あれはもはや酒が溜まったタンク。


 それに比べてあの赤鬼は作業のように酒を口に運んでいる。中身は人間なんだろうが一体どんな酒豪なんだか。


 ギヨウ「あんた諦めてんじゃないでしょうね! お酒好きなんでしょ! 飲みなさいよ!」


 30歳のおばさんが海に向かって吠える。息子や旦那の尻を叩いて背中を押すような声援


 その声援が届いたのかは分からないがマイジは最後の力を振り絞るようにジョッキを握った。

 

 マイジ(・・・今の声はギヨウさんか?全く元気な人だ。あんな人ともっと早くに出会えていたら──いやいや余計なことだ。人生で一番大切なのはお酒だ)


 マイジ(でも──もう、飲みたくないよ。今はそう、暖かい味噌汁が飲みたい。ワカメと豆腐の味噌汁。いや、具がなくてもいい。味噌汁が飲みたい。女房が作った味噌汁を──)


 マイジは最後の力を振り絞るようにジョッキを(あご)まで運んだが、それが口に入ることはなかった。


 お酒は胸から足元へ滝のようにこぼれ、ジョッキが彼の足元でガシャンと砕け散る。全員が彼の敗北を見届けた。


 タマゴ《勝負あり! 勝者は赤鬼! 敗者のマイジ博和はこれより()()されまーす!》

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