21 殺人の夜に
21 殺人の夜に
洞窟へ戻るとそこは宴会場になっていた。
マイジ「2人ともどこに行っていたんですか? まあいいや、さあ飲みましょう!」
「いや俺は未成年だから!」
酒臭いし顔も赤い。マイジさんさてはもう出来上がっていた。
マイジ「ちょっとくらい良いじゃないですか! 私たち犯罪者なんですから!」
サイセ「そうだぞー。のりだくものめー」
誰が言ったかと思えば頬をピンクにしたサイセだった。まさか・・・子供なのに飲んだ? いや、この大人達が飲ませたのか!?
「・・・サイセ? 飲んだのか?」
サイセ「のんでーねーよのりだく」
いや、完全に飲んでるじゃないか。ばりばりやっている。
でもこの状況だしな。少しでも楽しそうなら良いか(良くない)。だが、真面目に怒ってこの雰囲気を壊すのもどうかと思う。
それに俺たちはマイジさんが言ったように既に犯罪者。どうせ生きて帰れるかも分からない。これが最後の自由かもしれない。
なら、楽しんでもらおう。
「あれ? アスカさんはもう寝ているんですか?」
ギヨウ「少し飲んだだけでダウンよ。弱いみたいだね」
「意外ですね」
アスカさん既に寝袋に入っていた。気の強そうな彼女の意外な弱点を発見。これは今日の成果だな。
チカイ「マイジさんお酒はどれが美味しいんですか?」
マイジ「うーんやっぱり日本酒だね!でもチカイちゃんはシャンパンとかワインが似合いそうだ」
その後もこんな調子で宴会は続いた。
ギンターも加わりギヨウさんとマイジさんの大人組は楽しそうだ。シドウは未成年のはずだがちゃっかりその大人の輪の中に参加。不思議とその光景に違和感はない。
サイセはいつの間にかギヨウさんの膝の上で寝ていた。こちらの洞窟は雰囲気共に明るかったが対照的に明かりもなく、静かな向こう側の洞窟が気になる。
寝ているのなら別に良いのだが文句を言いに来そうな漆でさえ静かなのは不気味だ。
チカイ「ノリトさん。これ美味しいですよ。飲みませんか?」
「・・・すごい色だね。色々と混ぜたでしょ?」
チカイ「はい! マイジさんが美味しいと言ったものを全て!」
チカイさんが手渡してきたグラスには緑色の液体の中に、紫と黄色の水玉模様が浮かんでいる。
一体何を混ぜたんだ。しかもよくこんな物を人に笑顔で手渡せたものだ。彼女のことだし悪気はないのだろうけど。
「チカイさんは飲んだの?」
チカイ「先にノリトさんに味見をしてもらいたくて」
「・・・あはは」
これ色が完全に毒だよ。体内に入れちゃいけない色だよ。それを俺に渡すなんてひょっとして俺を殺したいのかな?
でも彼女に笑顔で差し出されたら飲まないのは男じゃない。
「いただきます!」
チカイ「えっ!?」
彼女特製ドリンクを一気に流し込む。舌で味わうなんてことはしない。渡した本人が驚いているがそれは気のせいだと思いたい。
シドウ「ノリが良いなノリト!」
マイジ「ノリトだけにね!」
ギヨウ「つまんないよまいじのおっさん」
特製ドリンクを飲み終えたが気のせいかチカイさんが後悔しているようにも見える。でもこれ意外と不味くは──
チカイ「ノリトさんノリトさん! 起きてください! 死んじゃ嫌です!」
シドウ「・・・嘘だろノリト! ノリト!」
ギンター「おいおい君たち。それは芝居だよな?」
******
同時刻──砂浜
ツエヘシ「ほら見てよキケツさん。炎って綺麗でしょ?暖かいし優しさもあるんだよ」
波の音が眠気を誘う夜の砂浜。そこに眠らぬ男が2人いた。
1人の手元では赤く揺れる光が波の動きに合わせて踊っている。
キケツ「確かにね〜。この場所だとライターの炎でも綺麗に感じるよ」
ツエヘシ「違うよ。炎はいつでもどこでも綺麗なんだよ。それにそんな名前で呼ばないでよ。彼女にはちゃんと名前があるんだから」
ツエヘシ「彼女は常に僕の味方で僕を応援してくれるんだ。どんなに寂しい時でも彼女がいれば乗り越えられるんだよ。そう、例えトイレの中で独りぼっちの時でも彼女の美しい舞を見れば僕は──」
キケツ「ツエヘシ君──決心はついたのかい?」
ツエヘシ「・・・うん。彼女がいれば僕はなんでもやれるよ」
キケツ「じゃあ力を貸すよ」
ツエヘシ「ねえねえキケツさん。キケツさんは誰が美味しいと思うの?」
キケツ「私に一口くれるのかい?」
ツエヘシ「うん。手伝ってくれたお礼にね」
キケツ「理想はサイセありやだよ。でもチカイ零那も良い」
キケツ「ノリト翼も男にしては柔らかそうだよね。シドウ大誠も若い分筋肉が美味しそうだ」
「じゃあその中の誰かを狙って頑張るよ」
ライターの炎を見ながら砂浜を歩く彼は、そこにあった赤く細い箱を開けた。深夜、炎に照らされた鉄串を1人の男が手に取った。




