18 焼き人間完成!?
18 焼き人間完成!?
「サイセ!!」
目の前で串の先端を向けられたサイセは人形のように動かない。恐怖で手足が動かず迫り来る死から逃げられない。
それは彼女が幼い子供だからじゃない。誰だってそうなる。俺ですら動けないんだから。
対して漆は目、鼻、口──顔にある穴を大きく開き興奮を全開。獲物を追い詰めてそのまま串を振り上げそして、一気に振り下ろす。
串はこのままサイセの頭を貫くだろう。何をしたってもう間に合わない。俺は目を閉じた。
──直後、パンッ──という弾けるような音が聞こえてきた。これが鉄串が人の頭を貫通する音か。
リンゴが果汁を垂らして潰れるような音を想像していた俺にとっては派手に思えた。
漆「……ギンタァァァアッシュ! この、くそヤロウが!」
漆が怒ってる? ギンターが何かをした?
ギンター「誰でも良い! 早く漆を抑えろ!」
ギンターの呼びかけに反応して目を開けると衝撃的な出来事が目の前で起きていた。尻をついて倒れるサイセとサイセに串を向ける漆──の、その間に彼が立っていた。
あと数センチでサイセに刺さるというその串を、ギンターが両手でがっちりと押さえ今も漆ごと止めている。
漆「ちょっ、馬鹿力すぎるでしょ! 押しているのになんで串が動かないのよ! 後少しなのに!」
ギンター「お前こそ女なのに凄い力だな。何かやっていたのか?」
漆「ああやっていたよ兵士を少しね! お前と同じような白人兵士を殺しまくったよ!」
ギンター「──そうか」
漆はその串ごとギンターに身動きを封じられている。必死の挑発も冷静な彼には効果が無い。これなら俺でも助けられ──
ギヨウ「サイセちゃん早くこっちに!」
シドウ「諦めろ漆! 俺は柔道をやっていたんだぜ!」
ギヨウやマイジたちに連れられてサイセはその場から脱出。シドウとアスカが漆を羽交い締めにして彼女を無力化。俺が何もすることなくあっという間に決着がついた。
漆「降参。こうさんよ。こうさ〜ん」
漆はタコのように脱力して諦めた。砂浜に落ちた鉄串をギンターが持つとシドウとアスカは漆を解放した。
漆「で、ギンターは誰を殺す気?」
「しまった! 次はギンターか!」
すぐに彼を警戒したが、彼は串を持ったまま海の方へと向かって行く。
ツエヘシ「ま、まさか串を捨てる気?」
マイジ「なるほど、その手がありましたか」
キケツ「でもそれはルール違反になりそうだけどねぇ」
殺人コンテストを妨害することがルール違反になることはもちろんギンターも分かっていたんだろう。彼は串を捨てずに元々入っていた赤い箱に戻した。
ギンター「漆。俺は殺人はしない」
漆「ふーん。案外つまんないのね」
ギンターがこちらへ戻ってくる。俺は真っ先に、気になったことを彼に尋ねた。
「どうしてギンターは漆と同じ洞窟に行ったんだ?」
漆がこの場から離れて行くのを確認したギンターは俺にだけ聞こえる声で答えてくれた。
ギンター「スパイみたいなものだ」
スパイ。言葉通りの意味なら漆たちの行動を見張ってくれていた、ということだろう。
ただ、ギンターがそういうことをする人間だと分かってしまうと、彼のことを今後信じて良いものか・・・。
シドウ「漆! どこに行くんだ!」
漆「何しようが勝手でしょ? シドウはそんなに私のことが好きなの?」
シドウ「ちげえよブス! お前はまずサイセに謝れよ!」
漆「はあ? 謝って済む問題じゃないのはやった私でも分かるんだけど?つーか、私たちは殺し合う存在。いい加減理解すれば?」
砂浜に散らばる物資の箱から自分の箱を引き当てた彼女は、中身を持つと森へ向かった。ウラハ、ツエヘシ、キケツも彼女を追いかけるように森の中へ消えた。
「ギンターはこっちにいて良いのか?」
ギンター「俺はもう漆のチームにはいられないだろうからな。それよりサイセは大丈夫か?」
サイセ「だい…じょう…ぶ……さっきは…ありがとう」
彼女はまだ恐怖に囚われ小動物のように怯えて震えている。誰だって殺されそうになったらこうなるよな。今は女性陣に任してそっとしておこう。
シドウ「んじゃ飯食うべノリト!」
「・・・ああ。そうだな」
全くこいつは空気を読んでいないのか読んだ上でこう言っているのか。呆れそうになるけど、ほんといいやつだな。




