14 殺す方が楽だよ〜
14 殺す方が楽だよ〜
アスカ「なるほど、お題の〝焼き鳥〟ってそういうことね」
キケツ「正しくは〝焼き人間〟だけどね」
ツエヘシ「や、焼き人間・・・」
みんなもお題の焼き鳥の恐ろしさに気がついたか。
本当にタマゴは嫌なやつだ。だが、今思えばどうしてあんな夜ご飯だったのか納得できる。
サイセ「そういえば私さっきのご飯が入ったお弁当箱、砂浜に置いて来たままだ」
ツエヘシ「ぼ、僕もだ」
マイジ「ならあの青鬼に持ってくるように頼めば良いんじゃないかな?私たちの暮らしをサポートするはずだからね」
アスカ「というわけだから、シドウくん青鬼にそう言って──」
青鬼「リョウカイシタ。トリニイク」
青鬼たちはアスカに対して返事をすると砂浜へ走って行った。青鬼が普通にランニングをするその姿はとてもシュール。
ウラハ「やっぱり誰とでも青鬼と会話ができるんだ」
サイセ「シドウしか会話が出来ない方が面白かったのに……残念」
シドウ「おいこら!何が面白いんだよ〜」
漆「──あんたらまだそんな仲良くしてんの?」
シドウがサイセの頭を激しく撫でて俺たちの空気が明るくなりかけた時、漆がまた水を差す。
漆「その中の誰かに自分が〝焼き鳥〟にされるかもしれないのに?」
シドウ「どういう意味だよ。俺にも分かるように言ってくれよ」
アスカ「シドウくんにも分かるように言うと、焼き鳥は1つの串に肉を刺して焼きます。つまり」
ギンター「──この中の誰かを串刺しにして焼き殺せってことだ」
シドウ「……おいおい! そんなの無理だろ? いくらなんでも残酷すぎる!」
漆「キケツ藍也ならすでにやっていそうな殺し方だけどね」
キケツ「さすがに人間の丸焼きは私でも食べたことがないよ。そもそも下処理をしないのは──」
「殺し方について考えちゃダメだ! 俺たちの目的は誰かを殺すことじゃない! 島から出ることなんだ!」
漆「呆れた。まだノリタクはそんなことを言うの? さっきの調査でこの島から出るには殺人しかないんだって、身にしみてないのかなー?」
「調査は完璧じゃなかった。漆、お前でも気がついていないのか?」
「俺たちはこの2つの洞窟も青鬼も、島を調査した後に初めて見つけたんだ」
漆「・・・それは私も思ったよ。こんな洞窟は確かにさっきはなかった」
「青鬼は隠れていたのかもしれない。けど、洞窟が移動するなんてありえない」
「つまり俺たちはまだこの島の全てを見ていないんだよ!」
漆「でも1人でとっとと島から出るのと12人で島から出るのじゃ・・・」
漆「どっちが楽で! 簡単で! 現実的か! あんたでも分かるでしょ?」
「ああ、誰でも分かるさ!」
シドウ「え、俺は分かんねえよ?」
ギンター「すまんシドウ。ちょっと黙ってくれ」
「と、とにかく俺はまだ可能性がある限り、殺人は最後の手段として取っておくべきだと思う!」
漆「あんたはまるでそれが全員の意見のように言ってるけど他の奴らはどう思ってるのよ?」
漆「本当は早く誰かを殺して帰りたいとか思ってないの?」
彼女はその威圧的な態度を黙っていた皆に向けた。彼女と目が合った者は反射的に自分の気持ちを主張する。
ツエヘシ「ぼ、僕は、そう。楽な方がいい。人の肉の味も知りたいし。串刺しの人間とか、少し見てみたいっ!」
キケツ「私もそうだね。せっかくこういうデスゲームをしているんだからやっぱり久々に食べてみたいね」
マイジ「そりゃあ島から早く出たいけど殺す勇気は私にはないよ」
チカイ「私はノリトさんと同じです! 殺人はすべきではないと思います!」
漆「じゃあさ、私と同じように殺す派は右の洞窟。」
漆「ノリタク派はそっちの左の洞窟に行きなさいよ」
ギヨウ「待って漆さん。勝手にそういうことを決めても良いの? ルール違反にならない?」
ギヨウのその質問にはちょうど砂浜から帰って来た青鬼が、荷物を持ったまま答えた。
青鬼「ダイジョウブダ。ルールイハン、ナラナイ」
漆「ってことだから。私らはノリタク派の奴らに協力しない」
漆「だからと言って右の洞窟に来たやつのことも私は仲間だと思わない」
「漆……お前のことはもう止めないよ。でも俺は殺人を起こさせない!」
「だからもしもお前たちがそうしようとしたらそれは、絶対に阻止するからな!」
漆「やれるものならやってみなさいよ?」
俺と漆は数秒睨み合う。奴が赤い髪を振り向けたタイミングで俺も背中を見せた。
左右2つの洞窟に分かれる俺たち12人。4人の青鬼も2人に分かれてそれぞれの洞窟へ荷物を運んだ。
******
ノリタク派──左の洞窟
俺と同じ洞窟に来たのはアスカさん、シドウ、ギヨウさん、マイジさん、サイセ。そしてチカイさんの合計6人。
今この場にいないキケツ、ツエヘシ、ウラハ、ギンターの4人は漆の洞窟に行ったことになる。
ギンターがこっちに来ないのは意外だった。殺人を起こさせないために彼は協力的だと思っていたから残念。
知識や経験、単純な力など様々な点で考えても、彼はこの場で最も戦力になる男だろうしな。
チカイ「まずご飯。食べませんか?」
彼女の提案で洞窟の中で円になった俺たち7人は無言で味付けのないおにぎりを頬張る。
普段なら食べない無味のおにぎりでもお米の安心感からか俺は涙が出そうだった。
そして今はあまり食べたくない焼き鳥も全てを食べきった。モモ、つくね、軟骨。全てが美味しかった。
お腹は元気になっても心身ともに疲れていた俺たちは歯を磨いた後、特に話をすることはなかった。
洞窟の中にはすでに寝袋や灯などが用意されており、その居心地の良い環境に違和感を抱くこと横になった。
長かった1日がようやく終わる──ということの方がみんなにとって重要だったのだろう。
団結させようと思っていた12人は1日持たずに分裂してしまった。
明日から本当の戦いが始まる。もう誰も信用できない。いつ誰に殺されるか分からない。そんな最悪な日常が始まってしまう。
それでも俺はこの島から脱出してみせる。1人でも多くの人と共に!




