10 イライラは良くないよ
10 イライラは良くないよ
────数時間後
ギヨウ「また、砂浜に戻ってきてしまいましたね」
ギンター「島の内側と外側で島を合計2周。俺の計測ではあれから少なくとも4時間以上は経ってる」
ウラハ「結局、何もなかったじゃん」
気がつけば海はオレンジ色。写真に撮って自慢したい風景に変わっていた。しかし誰もテンションは上がらない。
ひたすら歩いたのに収穫がゼロ。この島には自然以外何もなかった。
森の中は草と木と湿った土。白い砂浜はひたすら波の音を島に届けているだけ。
紛れもなく調査の成果は無し。認めたくないが時間と体力の無駄。この調査を提案した俺はみんなからの不満の標的になるだろう。
シドウ「てかもう夕方じゃん。メシどうすんだよ」
ツエヘシ「う、海なら何か魚がいるんじゃないかな」
マイジ「森なら果物がありそうだね!」
サイセ「海は知らないけれど森は無駄だよ」
マイジ「それはなんでだいサイセちゃん」
サイセ「歩きながら探したけど何も食べられるものはなかった」
漆「へー。サイセはそういうの詳しいんだ」
サイセ「別に・・・」
サバイバルをする気満々の彼らは各々アイディアを考えている。俺への不満なんて全くなかった。
お腹が空いているのにみんな偉いな。俺だったら強く当たってしてしまうよ。
シドウ「やっぱ魚か〜!」
アスカ「竿がないのにどうやって釣るの?」
ウラハ「まさか潜って素手で獲るつもりじゃ・・・」
シドウ「お前らには無理だがこの俺ならいける。ギンターさんもどう?」
ギンター「バカか。サメがいたら死ぬぞ」
漆「──そうだ。死ねば良いんじゃん」
夕陽に照らされた顔で彼女がそう呟くと穏やかな砂浜の空気が一変。
漆「あんたらはピクニックして忘れた?この島から出るには誰かを殺さなきゃいけないんだよ」
「だけど殺人はしちゃダメだ!」
漆「ならノリト。あんたが私らのために殺されなさいよ!」
「な、なんでだよ!? とりあえず落ち着けよ漆!」
俺に詰め寄る漆。彼女に触れられたら殺される。恐怖を感じた俺は後ずさりしつつ、みんなの輪の中へ避難した。
漆「あんたのせいで無駄に疲れてんのよ! 結局脱出の方法は見つからない! なら殺すしかないじゃない!」
「待て待て待て!そもそも俺1人が死んでも出られるのは、」
「俺を殺して挑戦状をゲットして、対決ゲームに勝った奴だけだろ?」
漆「……あんた、よくルールを覚えていたわね。もしかして殺る気?」
「違う!!」
──叫んで否定したがみんなも俺から引いていた。俺を殺す勢いで詰め寄って来た漆ですら今は少し距離をとっている。
ギンター「やめろ2人とも」
彼はその巨漢で俺の視線上に立ち視界を塞ぐ。漆が見えなくなりおかげで気持ちが落ち着いた。
チカイ「2人ともお腹が空いてイライラしているんですよ。分かります。私も怒ってしまいそうですから」
おっとりとした声のまま無表情のチカイさんがそう最終警告をすると全員何も言えなくなった。
彼女が怒ったら怖いのはなんとなくイメージ出来る。だがそれ以前にみんな疲労が蓄積して何も言えなかったのだろう。
俺のことを殴りたいやつ殺したくなったやつは漆の他にもいると思う。でもお腹が満腹になればそれも変わるかもしれない。
だから今は食料確保が最優先だ。しかしそんな時、余計にイライラさせるあいつの変な歌声が島に流れ始めた。
タマゴ《ぷっぱかぷっぱかぷっぱかプー♪ ぷっぱかぷっぱかぷっぱかプー♪》




