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侯爵夫人・前

私はとある伯爵令嬢です。幼い頃、初めて婚約者に会った時に恋を知り、失恋を知りました。

婚約者は2人になると大好きなアマーリアの話ばかり嬉々として話していました。将来結婚したかったけど、家同士の繋がりがあるから仕方無く私と結婚するんだと……

その言葉は、幼い私の心に深く突き刺さりました。


私が初めてアマーリアに会ったのは、12歳の時出席したお茶会での席でした。

婚約者が言うように、彼女は凛とした美しさを持つとても魅力的な女性でした。一方の私は、何の取り柄もない女の子です。

婚約者のアマーリアへの隠そうともしない愛は有名で、私は真実の愛を引き裂く悪役のような存在だと良い見世物になっていました。

結局私は、そのお茶会でその後顔を上げる事が出来ませんでした……

家に戻ると、一緒に出席していた母に酷く叱咤されました。何をどうあがいても私は将来侯爵夫人になるのだから、何事も無いかのような笑顔で顔を上げていなさいと。

貴方は何も悪いことはしていないのだからと……現に侯爵家からの婚約破棄の打診も無ければ、婚約者も婚約破棄をする意思は無い様です。

結婚前のちょっとした遊びだと信じて、結婚後はきっと諦めてくれるのだと信じて令嬢教育も頑張りました。

15歳になる頃には、私は立派な淑女として社交界でも認められ、婚約者からも結婚を前倒ししたいと言われ舞い上がってしまいました。

結婚準備も婚約者と一緒に大急ぎでして、とても充実して幸せな日々を送っていた頃、事件が起きました……アマーリアが病気で亡くなったそうです。


婚約者は悲しみに打ちひしがれて「何故だ!なぜ死んだんだアマーリア!1日でも早く君を愛人にしたくて結婚も前倒しにしたと言うのに!」と泣き叫んでいました……

そうです、令嬢教育を頑張り少しは美しくなった私を認め、アマーリアを忘れてくれたんだと思っていたのは全部間違いだったのです。

1日でも早く私と結婚したいから結婚を前倒ししたんだと思って喜んでいたのに、全部1日でも早くアマーリアを愛人に迎えるためだったのです。

私は絶望のどん底に落ちると同時に、心の何処かでは歓喜していました。だってアマーリアはもういないのです。

今はまだアマーリアへの愛が大きいかもしれませんが、きっといつかは私の方を向いてくれる、そう思うと嬉しくて仕方なかったのです。あの日までは……


私達の結婚とアマーリアの死は家同士の関係が特に無いので延期されることもなく、そのまま結婚式は執り行われることになりました。

婚約者も普段通りの様子に見えて、安心しました。何事もなく式に晩餐会が終わり、いよいよ初夜です。

ずっと、アマーリアを思い続けていた婚約者ですが、そんな婚約者を私はずっと思い続けていたのでやっと結ばれると思うと、とても嬉しかったのです……

ですが、婚約者は私にアマーリアを重ねて抱きました。行為中ずっとアマーリア、アマーリアと呼ばれ、涙が止まりませんでした。

そんな涙さえも、初めてで痛かったよね?ごめんねアマーリアと舐め取られてしまいまいた。

それからも昼はまともですが、寝室に入ると毎晩同じことの繰り返しで、いつしか私の心は壊れてしまったんだと思います。

毎日夜が来るのが怖く、激しく求められることが苦痛でしかありませんでした。


そんなある日、気晴らしにと買い物に出た街でアマーリアによく似た15歳くらいの少女を見つけました。みすぼらしい服装で、見るからに貧しい家の少女でした。

すぐに少女に話しかけ、家に案内して貰うと病気の母親と働きに出ている父親、10歳くらいの弟がいました。

弟に父親を呼んで来てもらい、有り金全部と後日またこれだけ持って来ると言う約束をして、少女を買ったのです。そう、お金で少女を買ったんです!

本人もこれで家族が楽になる、母の病気も医者に見せれると喜んでくれました。

もう体を売るしか道はないかと思っていた所だったので、侯爵家の愛人になれるのならこんな良い話はないと……

そう言って貰えて心が少し軽くなりました。屋敷に戻り、彼女に身支度をさせ、客間に待機させました。

旦那様にも体が辛いので、相手を見つけてきたので今日はここで休んでくださいとお願いして寝室へ戻りました。

きっと今頃少女をアマーリアと呼んで抱いている事でしょう……涙が止まりませんでした。

自分でも、何を思っての涙なのか感情がごちゃごちゃで、朝まで泣き続けてしまいました。ですが私は時期侯爵夫人です。朝になったらまた仮面を着けて過ごさなければいけないのです。


旦那様は、少女をとても気に入ってくれたようでしたので、これからは少女の方へ行っても大丈夫だと話しました。

それからも旦那様は毎晩少女の元へ通いました。私も体調が優れなかったので、やっと解放されて1人で寝れるようになってほっとしたものです。

数日後、私の懐妊がわかりました。この子が男児なら、もうあの苦痛から解放されると、子供には申し訳有りませんが本気でそう思ってしまいました。

少女の元へ妊娠の事実を伝えに行き、まだ暫くは負担をかけてしまうと伝えると、遠い目をしていました。

少女も好きでも無い男性とは言え、毎晩別人の名前で呼ばれながら抱かれるのはさすがにキツかったようです。

ですが、お金も貰ったし頑張ると言ってくれました……

私は焦りました。少女が壊れてしまったらまたこちらに戻ってきてしまうと……少女の心配では無く、本気でそう思ってしまったのです。

なので顔立ちは違っても、髪と瞳の色が同じ女性を探させることにしました。自分のために……


同じ頃、義父である侯爵様に少女の存在がばれ、どうするつもりだと問い詰められました。

なので涙ながらにもう辛いのですと、せめて妊娠中だけは認めてくださいとお願いすると、本宅ではダメだから愛人用の別館を用意すると言ってくれました。

あと数人増やす予定だと伝えると驚いていましたが、少女が精神的に壊れそうだと話すと許してくれました。

人選はお義父様にも相談すると言うことで話がまとまりました。

さすがに侯爵家の愛人が少女のような平民ではダメだと、末端でも良いから貴族の名の付く令嬢でなければならないと……

確かに生まれるかもしれない子供の事を思えば簡単な話なのに、何故私は気付かなかったんでしょう?やはり私も壊れているようですね。


それからはお義父様がアマーリアと同じ黒髪の女性を3人連れてきてくださり、別館が出来るまでは離れで生活してもらうことになりました。

1番のお気に入りは私の連れて来た少女のようですが、他の女性達も順番に抱いているようです。

私のお腹が膨らんできた頃、少女も懐妊しました。お義父様は平民の子だからと悩んでいましたが、結局は生ませることにしたようです。

私が元気な嫡男である息子を出産して暫くしたころ、産み月より早く少女が産気付いてしまったようです。

3日間と言う難産ののち無事男の子が生まれましたが、少女は衰弱が激しくそのまま亡くなってしまいました……

アマーリアの死に少女の死はさすがに旦那様が耐えられないと思い、子供を産んだら家に帰って良いと言う約束だったんだと言う苦しい言い訳をして、少女の死は私とお義父様だけの極秘事項にしました。

生まれた子供は小さいけど元気で、私が我が子と一緒に育てることにしました。もちろん1人じゃ無理なので乳母も一緒です。

子供に授乳をしていると、自分が必要とされているのを感じられて心が満たされていくようでした。


子供達が少し大きくなってきたら、またあの感覚を味わいたくて赤ちゃんが欲しくてたまらなくなり、旦那様にお願いしました。

行為はやはり変わらず、アマーリア、アマーリアと何度も呼ばれ苦痛でしかありませんでしたが、赤ちゃんの為なら我慢出来ました。

暫くして、目論み通り懐妊出来ましたが、やはり精神的にどっと疲れてもう2度としたくないと思いました。

赤ちゃんも無事生まれて数ヵ月がたち、のんびり午後の授乳をしていたある日、お義父様が生まれたばかりの赤ちゃんを連れて来ました。

愛人の1人に子供が生まれたそうです。この女の子も侯爵家の娘となるので、私が育てろとの事でした。

とても驚きましたが、赤ちゃんは好きなので嬉しいです。確かに、本妻の子供と愛人の子供で教育の差をつけるのはよくないですよね。任せてください、立派な侯爵令嬢にしてみせます!

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