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③未来のために

「帝国の兵!? なんで此処に……。しかも武装してるわ」


 冒険者組合(ギルド)の門の入り口を見据え、ルティアは眉を寄せた。

 石畳を打つ足音は多く、数にすれば三十人くらいだろうか……。

 辺りには緊迫した空気が漂い始めている。


「見ろよ、あの男……」


 キーノスの言葉で気付く。

 兵士達の先頭に立つ男に見覚えがあった。

 忘れもしない、魔王討伐隊で指揮を任されていた帝国軍の将軍だ。


「ギルドになんの用事だ!」


 アビゲイルが牽制するように、声を張り上げた。

 すると帝国軍の将軍は、腰に備えた剣の(つか)を握りこみ、威圧的な態度で返してくる。


「ここに、ヴィルヘルム殿下が逗留されていると情報が入った。我々は殿下をお迎えにきたのだ! さあ、案内してもらおうか!」


 ――お迎えなんて嘘だ。


 ヴィルヘルムを捕らえにきたのだ。

 国民は知らなくとも、ルティア達は真実を知っている。

 

(お迎えなんて調子の良いことを言って、本当は口封じの為に連れて行こうとしているだけだわ!)


 前国王の暗殺の真実を闇に葬るため、今度こそヴィルヘルムを始末するかもしれない。

 そうなれば、アナイナの命だって危険だ。


(居場所もバレてしまった。――アナイナ! アナイナのことを守らなくちゃ!)


 守ると言った約束をルティアは忘れてはいない。

 アナイナは、今、このギルドのどこかに居るはずだ。

 探しに行かなければ!


「このギルドは一般人も利用してんだ! お迎えだって言うなら、その武装解いてから来やがれっ!」

「うるさい! これは王命だ! 逆らうと言うなら冒険者だって容赦無く斬るぞ!」

「そんな勝手なことさせるかっ――!」


 一触即発の事態。

 帝国軍は決して引かないだろう。

 それどころか、将軍の合図で兵士たちは剣を抜き、冒険者組合(ギルド)に足を踏み入れる。


(人を相手に戦うことは、鍛錬以外に無かったけれど……)


 ルティアは己の剣を抜く。

 ここを突破されるわけにはいかない。食い止めなければ。

 同じ血の通った人間に剣を向けることは、本当はしたくない。

 兵士達だって、命令に従っているだけなのだ。

 ……けれど、戦うより他に道は無い。


「ルティア、俺も戦う――!」

「フレッド! 相手は魔獣じゃない、人間なのよっ!?」

「解ってる! けど、俺は自分の望む未来のために剣をとるんだ。魔王の脅威が去った時代の潮目に、俺は俺の望む未来の選択をする!」


 決意を込めて、フレッドが剣を引き抜く。

 帝国の兵が、ルティア達を取り囲むように陣形をつくり始めている。

 背中合わせで剣を構えたルティアとフレッドは、お互いの呼吸を合わせた。


(いくわよ! ――フレッド!)


 すぅっと息を吸って止めた瞬間、勢いよく飛び出した。

 そのスピードに帝国の兵は驚き、隙だらけの攻撃を仕掛けてくる。

 二人は剣が振り下ろされるより早く兵士の懐に入り、がらあきの腹を蹴り飛ばし、足払いで転ばせ、柄を持つ手を捻り上げたり、銃を持つ兵に対しては、ルティアは迷わず手投剣(しゅとうけん)を投じた。

 ザシュ、と太腿に突き刺さり、動きを封じることに成功する。


「はっ……はっ……」

「っ、さすがに、数が多いわね……」


 ふたたび背中越しに、フレッドと乱れた呼吸を合わせるルティア。

 一方で、じりじりと間合いを詰めてくる帝国兵。

 呼吸を合わせ、すぐにまた攻撃を再開する。


(数が多くたって、強さなら魔獣のほうが何倍も上だわ……!)


 そう気合いを入れて、ひとりの兵士の剣を弾き返した時だった。

 露出している肌の表面が、ぞくりと粟立った。

 

『邪魔はさせぬ――』


 空気を震わせたのは、冒険者組合(ギルド)総支配人(マスター)の声音と、放たれた水神(すいじん)の魔法。

 ルティアの足元を、太くうねる質量のある水が、蛇のように大地を這い、兵士達の足に絡まっていく。

 やがて水は弾けた。

 そこには透明な水の壁が展開され、兵士の達がこれ以上前に進めぬよう阻む。

 

「くそっ!」


 憎々しげに将軍がこちらを睨めつけている。

 兵士のなかには魔法を使える者もいたが、水の壁はびくともしなかった。

 顔色ひとつ変えず、総支配人(マスター)は将軍に向かって言う。


其方(そなた)の王に伝えるが良い。我は……冒険者組合(ギルド)は、ヴィルヘルム殿下を全面的に支援するとな――」

「!!」


 将軍の顔が一瞬にして真っ青になる。

 その場にいる誰もが、総支配人(マスター)の言葉を信じられぬ気持ちで聞いていた。


「それって……つまり……」


 ――ヴィルヘルム個人の後ろ盾として、冒険者組合(ギルド)がつく。

 これは最大の権力を有したのと同義だ。

 大陸各国は、この先、ヴィルヘルムのもとに纏まっていくだろう。

 世の中が、ひっくり返る瞬間だ。

 

(ただの王位簒奪じゃない……、冒険者組合(ギルド)を味方につけるなんて考えたわね!)


 きっと、ヴィルヘルムか、アナイナがこの作戦を編み出したのだろう。

 そしてガーリア帝国の王と言えども、巨大な組織である冒険者組合(ギルド)を敵に回すなんて馬鹿げたことはしないはずだ。


「我はヴィルヘルム殿下と契約を交わすため此処に来た。さあ、我の冒険者よ、ともに来るが良い――」


 ルティア達は、総支配人(マスター)につづいて、ギルドの中に足を踏み入れた。

読んで頂き、有難うございます!!


完結まで残すところ、あと三話となりました。

最後まで宜しくお願いいたします!


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