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①王位簒奪の準備



 ルティア達は帝都に向かっていた。

 アナイナとの約束を果たす為である。



 あの夜、想いを通わせたリュードと集落に戻ると、そこにはフレッドとキーノスの姿があった。

 二人はルティアをひとりで旅に行かせてしまった事を悔やみ、心配し、わざわざ追いかけてきたのだという……。

 ルティアが驚いたのは言うまでもない。

 何より嬉しかったのは、フレッドが見違えるほどに元気になっていた事だ。

 最後に会った時、フレッドは言葉が発せるようになっていたものの、旅ができる状態ではなかった。「もう二度と戦えない」と言っていたのだ……。

 その弱々しい姿に胸を痛めたルティアだったが、今のフレッドはすっかり元通りに近い。


「――俺はもう大丈夫だよ」


 そう言って微笑むフレッドに、ルティアは(こら)えきれず泣いてしまった。

 かつて戦いをともにした四人は、お互いの無事と再会を心から喜んだ。


 話題は「ガーリア帝国」の内情にうつる――


 フレッドとキーノスが、ガーリア国の帝都でアナイナと会った後、囚われのヴィルヘルムを助け出したことを語る。

 これは王位簒奪(おういさんだつ)に向けて大きな一歩だ。


(着々と準備は進んでいるようね……。あとは「()()」をいつ起こすか――)


 アナイナは相当な「きれ者」なのは確かだ。

 きっとルティアが思いつきもしない戦略を打ち立てているのだろう。

 ただ心配なこともある。


(今頃、ヴィルヘルム王子がいなくなったことに気付いた帝国王は、血眼になって捜しているに違いないわ。アナイナの身も危険だわ……)


 世間ではヴィルヘルムは長い外交に出ていることになっている。

 しかしそれは真っ赤な嘘で、ずっと神殿の塔に幽閉されていたのだ。

 逃げ出したと知ったら、帝国は本気を出して捜索にあたるはずだ。アビゲイルがそばにいるから大丈夫だとは思うが、もしも見つかってしまったら確実に殺されてしまう。

 キーノスが話を続ける。


「オレ達が帝都を出るとき、アナイナさんから、()()()()」を流すように頼まれた」

「……噂? どんな?」

「亡き前皇帝の「()()()()()」が、とうとう帝都に戻ってくるらしい……ってな」

「!!」

「考えましたね……」


 リュードが深く頷く。

 彼もまた真実を知る者のひとりだった。

 魔王との戦いに備えて、最後の御業(みわざ)を習得するために神殿に潜り込んだときに、幽閉されているヴィルヘルムと会っている。


(うわさ)ってのは大抵、尾ひれがつくもんだろ? だからオレ達は『ヴィルヘルム殿下がとうとう帰ってくるらしい』のあとに『どうやら現帝国王はヴィルヘルム殿下に王位を譲るつもりで帰国させるらしい』ってのを付け加えたんだ――ああ、これはフレッドの案だけどな……」

「うん。遅かれ早かれ、この噂は帝国王の耳にも届くはず……」

「帝国王にしたら、これは厄介な噂ね……」

「でも、この噂が国民達に広がるほど、ヴィルヘルム殿下は(おおやけ)に、堂々と、王城の門をくぐれるはず……多分、アナイナさんもそれを狙ってたんじゃないかな?」

「……なるほど……」


 フレッドの投じた一計にただただ感心するルティア。

 

(私が帝都を離れてもうすぐひと月……状況は大きく変わっているのでしょうね……)


 着々と王位簒奪に向けての(こま)を進めているアナイナとヴィルヘルム。二人は魔王のいなくなったこの世界で、帝国が進もうとしている道に対して強い危惧(きぐ)を示していた。

 ガーリア帝国はいずれ諸外国を攻略するつもりだろう。そう黒い噂も囁かれている。

 国民の未来もためにも、戦争をするわけにはいかない。

 そのために、アナイナとヴィルヘルムは立ち上がる決心をしたのだ。


「ルティア……貴女はどうするのですか?」


 愛しい者の声が、ルティアの心を甘く揺らす。

 やっと再会できたリュード。

 ずっと一緒にいることを誓ったばかりだ。

 しかし、ルティアにはアナイナとの約束が残っている。


(私はアナイナに「必ず戻る」と言った。アナイナも私の力が必要だって言ってくれたわ……)


 ――アナイナを助けたい。

 何が出来るかは分からないけれど……。


「私は帝都に行きます。アナイナと約束したから……」

「わかりました。では、わたしも一緒に行きます」

「リュードさんも? い、いいの……?」

「はい。貴女をひとりで行かせるわけにはいきません。それに……もう離れたくない」


 真っ直ぐなリュードの言葉に鼓動をはやめていると、隣にいるキーノスがわざとらしく咳払いをする。

 そしてフレッドが苦笑いを浮かべながら言った。


「せっかく恋人同士になった二人を邪魔したいわけじゃないんだけど、俺達も一緒にいっていいかな?」

「――邪魔なんてそんなっ!」


 ルティアは顔を赤くしながら首を振った。


「俺達はガーリア帝国の人間じゃない。だけど帝国とはそれなりに因縁がある。……正直、あの魔王との戦いを忘れられたら、どんなに楽だろうって思ってる」

「フレッド……」

「それに俺は王位簒奪とかも、はっきり言って興味がない。だけど……ルティアが、仲間が傷つくのだけは絶対に見たくない」

「!!」

「だから力を貸すよ、ルティア」

「オレもだぜ――」

「有難う、みんな……」

「へへっ……久しぶりに四人で旅ができるな」


 パーティ再結成だ! と嬉しそうに笑うキーノスに胸が熱くなる。

 ルティアにとって心強い仲間たち。

 

 そして集落にレーヌを残し、ルティア達は帝都に向かうことにした。


 

読んで頂きありがとうございました!

誤字報告もありがとうございました!


完結、間近、どうぞ宜しくお願いいたします。


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