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ふたりぼっちの恋  作者: さけ茶漬け
日直なんてやるもんじゃない
5/17

新しい友達?

 部活、帰宅で校内には残っていない静かな放課後の廊下を微妙な距離間保って歩く友哉と詩織。


「......」

「......」


 互いに言葉も発することもなくタッタッ歩く音だけ響いて、それがかすかに反響するだけ。何とも言えない空気が二人の間に流れる。

 どうしてこうなったのか、詩織は自分自身の提案に後悔はしていない。しかし......


(......き、気まずいよ)


 相手が話し掛けてくれれば、それに返答していれば問題ないし、複数人でも他の人の話を聞いていれば気が紛れる。

 だが、この状況は初めてだ。二人きりで会話がないのが、こんなにも気まずいものだと初めて知った。


(まぁ、私自身が武中君に話し掛ければいいんだけどね)


 そう、詩織が友哉の話す相手(・・・・)になれば、解決するのだが。


(それができるならこの状況になってないよね)


 後ろをちらりと見る。自分は悶々といろいろ脳内が騒がしいのに、もう一人の彼はこの状況に慣れているのか全く気にしてる様子はない。


(......図太い精神の持ち主なのかな?)


 まだ、友哉のことをぼっちだとは知らない詩織には彼の余裕っぷりには理解しかねるところがあった。




本当は詩織の提案を断り、帰っても良かったのだが。


(今回は仕方ねぇな、朝の件もあるし)


 これは自己満足の罪滅ぼし。不可抗力とは目の前にいる彼女の下着姿を見てしまった。今日限り、友哉は彼女の言う事を聞こうと決めていた。

 もちろん、そのことを詩織に言うつもりはない。余計な関係、深い関係にならないいためだ。


(波湊さんは悪くない。俺自身の問題だ)


 詩織には「私のこと嫌いなのかな」と思われた方が、例え明日からギクシャクしたやり取りをすることになっても好都合だった。

 所詮、この1週間の関係だ。


(......チラチラこっちを見てくるのは気になるな)


 詩織が友哉の方をチラチラ見てくるのを嫌ではないのだが、気になって仕方ない。自分から話し掛けるのはやぶさかでない。


「さっきから何? チラチラ見て」

「あっ、いや......あ、の」


 唐突に話し掛けられ、何を返答すればいいのか分からず言葉が出てこない。元々話すのは苦手な詩織。困り焦りあたふたしていると。


「そ、そんなに慌てなくもいいだろ?」


 何も悪くない友哉が申し訳なさそうな表情で宥めてくる。あまりの動転っぷりに見ている方が焦ってしまう。


「ご、ごめんなさい」

「いや、いいけどさ」

「わ、私話すの好きだけど......苦手で」


 落ち着きを取り戻した詩織はゆっくりと静かに自分の苦手なことを伝えた。友哉の質問には答えれてないが、今のでも一生懸命だった。


「へぇ、そうか。そんなことより職員室に着いたぞ」

「えっ、あっ、本当だ」


 友哉に指摘され、確認すると職員室の前に到着していた。詩織は何とも言えない気持ちになった。

 そんな詩織のことは露知らず、さっさと終わらせたい友哉はノックをして職員室に入室する。その後に続いて詩織も入室する。


「失礼します」

「失礼、します......」

「武宮先生はいますか?」

「武中! こっちだ」


 職員室には朝と同様にコーヒーの苦い匂いが漂っていた。武宮先生の机にもマグカップに注がれたコーヒーが置かれていた。

 先生は口をコーヒーで湿らしてから口を嬉しそうに開いた。


「わざわざ二人で出しに来てくれたのか~、仲いいのか?」

「......今日はたまたまですよ」

「ふーん、そうか。んじゃ、明日もよろしくな」

「はい、お願いします」


 日誌を先生に渡して、軽く頭を下げ詩織と退出した。


「俺、帰るから、じゃあな」

「あっ、うん......」


 素っ気ない友哉の挨拶に短くしか、返すことができず友哉はすぐにその場去っていった。そのスピードは決して速くはないのに詩織にはとても早く感じられた。

 追いかけて呼び止め話をしたい、無言でもいいから近くにいたい。たった一言、たった一言発するだけで状況は変わる。それなのに出ない。

 そして、友哉の姿は視界から消えた。


「私は......ただ」


 誰にでもできる、すぐに叶えられる願い。でも、詩織にはとても難しい願い。


 それは......



「私はただ友達になって欲しいだけなのに」


 その呟きは当然、友哉には届きはしなかった。

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