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ふたりぼっちの恋  作者: さけ茶漬け
日直なんてやるもんじゃない
4/17

ぼっちの放課後

 午後のSHRが終了して友哉は母から何か連絡がないか確認すると同時にアプリゲームを起動させる。

 いつもならアプリゲームを起動させることなく荷物を纏め、教室を後にするのだが、今日はそういう訳にはいかなかった。


(ちゃんと謝らないとな・・・・・・)


明日でもいいか、と思ったがお礼や謝罪などは先延ばしにするとしにくくなるものだ。だが、そういった場面に遭遇したことがないため、実際にどうなのかは友哉に分からないのだが。

 昼休みにでも良かったのが、人の視線が多くて自分がそれを気にしてしまうため断念し、放課後にしたのだ。


(たった一言のためにぼっちが教室でアプリゲームか・・・・・・・・)


 心の中で自虐し背もたれに体を預ける。すると、椅子がギシっと悲鳴を上げた。その内壊れるのではと若干の不安を抱き、姿勢を正す。そして、アプリゲームを続けた。


 30分後、気が付くと教室から生徒が大分減っていた。部活動や委員会などで忙しいのだろう。


(・・・・・・・・波湊さんはまだ帰ってねぇな。もう少し減ってからでいいか)


 極力、視線をなくしたい友哉は波湊が帰らないか様子を伺いながらさらにアプリゲームを続けた。




 詩織は悩んでいた、困っていた。

 日誌のとある1ページを開いた状態で頭を抱えていた。他の生徒が楽しそうに談笑しながら教室から何人出ていっただろうか。もちろん、数えてなどいない。

 視線は日誌のとある項目に集中している。


『日直2人から一言』

(どうしてこんな項目がぁぁ! どちらか一人いいじゃないですか!)


 項目に怒りをぶつける詩織。当然、ぶつけたところで項目が変化することはない。

 詩織自身は『いつもと変わりない1日でした』と簡単に書いたのだが、相方の友哉には書いてもらっていない。

 この状態で提出すると再提出になる。『どうせ明日も日直だから明日でいいよね?』という考えは詩織の思考にはなかった。

 どうやって話し掛けようか、怒られたりしないか、冷たい態度を取られたりしないか、同じ思考がぐるぐると回っている。

 さらに付け加えると朝、下着姿を見られた件もあり、話しにくい部分がある。


(でもあれは覗いた武中さんが悪い・・・・・・・・いや、開けっ放しだった私にも非があるのでは・・・・・・・・いやいや、そんなことは、いやでも・・・・・・・・あぁ! 今日は考えることが多すぎです!)


 日誌の件に朝の覗きの件、いつも以上に思考をフルに使い過ぎて涙が出てきた。

 と、ふっと自分に影が陰りその方向に俯いていた顔をを動かすと・・・・・・・・。



 人がかなり減ったので友哉はアプリを閉じて、謝罪後すぐに帰れるように鞄に荷物を纏め、席を立ち詩織に近付く。

 詩織の左後ろで立ち止まり、肩に触れようとした瞬間、詩織の顔がこちらを向いたのだった。そして、異変に気が付く。


「おい、なんで泣いてんだよ」

「ぇっと・・・・・・・・な、なんでも・・・・・・・・」

「そっか」

「ぁ、あの・・・・・・・・これ、か、書いてください」


 段々と小さくなるしゃべり方だが、どこか嬉しそうに日誌の例の項目を指す詩織。まさか友哉の方から来てくれるとは思っておらず、予想外の展開が詩織は嬉しかった。


「どっちか1人でいいじゃんか」

「私もそうおもっ!?」


 自分と同じ考えだったことを嬉しく思い、賛同しようとした時だった。

 友哉が詩織の机の上に若干乗る体制で「シャーペン貸してな」と言って、日誌に一言を書いてくれた。シャーペンを置き、日誌を閉じ手にすると友哉は体制を戻して言う。


「俺出しとくで・・・・・・・・それと」


 友哉は他の人には聞こえないように詩織の耳に近付けて小声で。


「朝のことは悪かった、ごめんな」


 それだけ言うと友哉は手を振って帰ろうとした。しかし、制服が何かに引っ掛かりふらつく。何かと思い振り向くと何故か顔を真っ赤にした詩織が制服の裾をガッチリ掴んでいた。

 原因はこれか、と思考より何故、詩織は自分の制服を掴んでいるのか、という思考の方が勝った。


「まだ・・・・・・・・」

「一緒に! 日誌を出しに行きましょう!」


 友哉の言葉と重なるがそれが消えるくらい、つまり、かなりの声量で掴んだ理由を叫んだ。詩織は我に返りさらに顔を赤くして俯いた。

 いまいち状況の理解が出来ていない。

 友哉としては断りたいのだが、さっき謝罪した手前、断りにくい。何か良い断り方ないかと模索すると1つ出てきた。


「波湊さん、誰かと帰らねぇの?」

「・・・・・・・・」

「波湊さん?」


 詩織の空気が一気に変わり、戸惑う友哉。


(地雷でも踏んだか! 俺は!)


 何か言おうとする友哉より早く詩織が取り繕った笑顔で否定してきた。


「大丈夫です・・・・・・・・一緒に帰る人、いませんので・・・・・・・・」

「そ、そうか・・・・・・・・」


 どういうことか、なんて質問は不要だった。何故なら察してしまったからだ。


(波湊さんは俺と同じぼっちなんだ) 


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