ラスゲ
…ゲームの中にまずはようこそ。
「上、下、上、下、右、左、右、左、selectボタン連打!!ぁぁぁぁぁぁ」
現在、地球上が灼熱と化す真夏の8月。住宅街のど真ん中に在る一軒の家から奇声が響き渡っている。
「ちくしょー!!なんでだよっー。一生涯でこれ以上のボタン連打はないぞっ」
まだ・・・。足りないのか・・・。と心の中で呟きながら、長髪の少年が階段を優雅に降りて行く。
「(ΦωΦ)フフフ…。皆の衆、これはお待たせ申した。僕の名は、ルイ・エルフィン様だ。」
少年は、一息付きそして再度口を動かす。
「待ちに待った、今日という日はご存知の通り”ラストワールド”の発売日だ。この日を、何度待ち詫びた事か。1サイクル事にタイムスケジュールを組み、情報回収務め、ターニングポイントの宿泊調査、今日のアンケートコーナー・・・。僕ほどの有能な戦士が他に居たで在ろうか。ふはははははははっ・・・」。
✖✖ 1章 謎の声 ✖✖
「見て、あの家から・・・また、変な寄生が聞こえるわよ。ほんと…気味悪い。」
「ほんとに、気味悪いわよね。私、もう隣の町に引っ越そうかしら…」
何時まで、続くのか分からない”ママ友”と呼ばれるマダム達の会話が道端で聞こえる。
その頃…。某コンビニの雑誌コーナーで、一人の男子学生が一冊の本を手にする。
”オカルト研究会による、真の世界の輝き”。
何だ…。この、嘘臭いネーミングセンスは。今時、この類のオカルト本何て流行るのか。
男子学生は、そう思いながらもページをめくった。そして、順にページをめくってゆき、ある項目がその目に飛び込んだ。
”高級住宅街ど真ん中にそびえ立つ、華やかな豪邸から響き渡る、聞こえてはいけない声”。
「まっちんー!何、してんだよー。こんなところで、立ち読みなんて連れないなー!」
聞き覚えのある声が、僕の耳に飛び込んで来る。
彼の名前は、桜庭準太。僕が、通っている八乃瀬学園でのクラスメイトだ。
僕は、彼の事を友人だなんて公言した事も無いが、彼は僕にベッタリと付いてくる。
「へーっ。まっちん、オカルト本なんて読むんだー…んっと、見せてみ。」
君達は、オカルト現象を信じているかね。
もし、信じていない方達が居ればはっきりとこう告げよう。
”オカルト現象は、架空の話や構想上の話と言われているがそうでは無い。”
”オカルト現象は、この世界に確実に存在している。それを、裏付けた確信的な正体がこの現象だ。”
住む都と呼ばれる高級住宅街のど真ん中に建つ、華やかな一つの豪邸。
だが、この豪邸はただの豪邸では無い。別名”叫びの屋敷”とも呼ばれている。
すまない…。すまない…。驚かせてしまったかな。
ただ、叫びの屋敷といっても、ゾンビに襲われている奇声がする訳では無い。
言うならば、それとは正反対なポピュラーな絵となっているのが、この屋敷の最大の謎だ。
毎日、午後3時。必ず、この時間に在る少年の声が住宅街に響き渡る。何時も、同じフレーズを発する。
決して、長時間続くのでは無く、18秒程度で謎の奇声は何時も鳴り止む。
ここまでの話だと、ただ毎日変わっている少年が大声で奇声を浴びている…迷惑な事件だ。
だが、問題はそこでは無い。”在るべき存在が、そこには無いのだ。”
奇声が、響き渡っている豪邸には住んでいる住人は愚か、中は蛻の空だ。そして、豪邸と呼ばれるのは過去の栄光。
今は、10年前…。起きた、火災で豪邸の姿は無くなっている。
だが、謎の声は今も響き渡っている。”毎日、午後3時の秒針が指し、動き出す18秒の間。
…ゲームは、まだまだ続きます。