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擬人化娘達と行く異世界道中  作者: 森田ムラサメ
第1章 異世界暮らしの始まり
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第4話 祝杯のための買い物

  金貨30枚。とりあえずありあわせの袋に入れたが何ともまあ大金が手に入ったもんだ。金銭価値のわからない俺でも何となくイメージはつく。



「ねえ、アオバ」


「なんだ?」


「もう少し穏便に済ませた方がいいんじゃない」


「そうか?」


「だっていくら何でも金貨30枚はもらいすぎだって」


「まあ、これも作戦のうちだからな、飯は宿とってからにするか」


「うん。でもなんかアオバって旅慣れてるね」



 旅慣れてる。うん、そんなことは全くない


 ずっと家にいたようなもんだからな。まあ、アニメやRPGがいかに役に立つかということがよくわかった。しかし、思い通りに行っているかというと微妙だ。俺はよくある最強系ではない。最強になったところで死ぬかもしれない危険なことはやりたくないが。



「大通りから離れていいの?」


「うん、まあ大通り周辺は高いだろうから、少し外れていながらも治安はいいってのがベストだけどな」


「そんなとこあるの?」


「知らない。というか、旅とかしたことないからなんとなく感覚で探してる感じかな」


「大丈夫なの?」


「なんとかなるだろ」


「うーん。そういうもんなのかな」



 話ながら歩いていくと少し路地に入ったところに宿を見つけた。割と見た感じは綺麗だし、ちゃんとしたつくりの建物になっている。こんなところに宿を建てて儲かるのだろうか。金がないなら中心からすごく離れたところに行けばいいし。金持ちなら大通りの大きな宿に泊まればいい。冒険者なんかは多少治安が悪くても強いから大丈夫だろうし。間を取るなんていかにも日本人らしい発想で選んでしまった。



「あ、あれなんかどうだ、建物の前も綺麗で一本入った路地にある。立地条件はパーフェクトだけど」


「いいんじゃない」


「よし、まあ入ってみるか」



 異世界の宿を初めて借りるのだがシステムとかはどんな感じなのだろうか。イメージは旅館とかみたいなんだけど、これでなんか思いつきもしないようなシステムだったら嫌だな。まあ、よっぽどじゃなければ金は足りるだろうし、そもそも相場がわからない地点でダメな気がする。これは生活しているうちにだんだんと身についてくるんだろうか。とりあえずできることはボラれないようにすることぐらいだろう。



 ゆっくりと扉を開けると中は一階は食堂とカウンター、二階は客室になっているようだ。



「すいません、宿泊なんですけどー」



 なぜか誰もいないので声はかけてみたが返事がない。


「すいませーん、お邪魔しまーす」



 その時、しわがれた声で返事がした。


「邪魔するなら帰れ」


「あ、えっと」


「……」


 ただでさえ静かな路地裏がさらに静かになる。この老人は何が言いたいのかわからない。ここは宿屋のはずだが……


 いや、めんどくさいタイプの可能性がある。老舗旅館の旦那、いや高級料亭の板前。ともかくそんな手イプは嫌だ。



「冗談じゃ」


「……」


「……」



 無駄に静かな空間が広がる。助けてほしい。

あまりにもつまらない冗談は良くないと思う。この空気からどうやって和やかなムードにすればいいのだろうか。もっと人と話せるようになっておけば良かった。



「久しぶりの客人じゃ、カギはないから好きな部屋へどうぞ。代金は一泊銅貨5枚で朝食、夕食付じゃ」


「は、はい」



 高いのだろうか安いのだろうか? そもそも、この世界の通貨は十進法なのかわからない。何ともまあ、不親切な異世界に来たもんだ。



「エレナ、行くぞ」


「ちょっと待って」


「なんだよ?」


「おじいさん、この値段はいくら何でも安すぎるわ、何か裏でもあるんじゃないの」


「エレナ、失礼だから疑うことから入るのは良くないぞ」


 エレナを止めればよかった。というか安すぎるなら別に怒らなくてもいいんじゃないか。



「いかにも、裏、といえば裏がある」


 あるのか。裏ってなんだよ。案外異世界って危険なのか。そんなことが頭に浮かんだがすぐに撃墜された。



「わしの老後の楽しみでな、老い先短いながらに少しは人の役に立ちたくての」


「なんで、いくら何でもこれじゃ生活できないでしょう」


「いやいや、これでも昔は名の知れた冒険者でな、蓄えならあっての。納得いかないならお嬢さん、毎晩夕食のときに話でも聞いてくれぬか。その手間賃じゃ」


「そういうことなら、分かったわ。ごめんなさい」


「謝らなくていい。わしも久しぶりに話し相手ができた。とりあえずお前さん達、二階に荷物でも置いておきなさい、カギなどなくとも客なんていないから安心していいぞ」


 

そういって老人とは思えないような大声で笑う様子を見ると金銭面では本当に困っていなのだろう。冒険者儲かるのか。



「ありがとうございます」



 二階へと上がる階段はかなり急で危ないが二階の廊下は広く割と部屋も大きい。しかも、室内は綺麗で、シンプルな机とクローゼット、小さな窓がある。思っていたよりもおしゃれな空間だ。だが、一番の問題はベッドが一つしかないことだ。



 まあ、寝袋でも買って俺は床で寝ればいいか。

流石に、一緒に寝ようなんて言えるわけがないし、言ったら間違いなく爆裂弓の餌食にされるだろう。

でも寝袋なんてあるのか。視察も兼ねて外に行く。ちょうど空腹感も増してきたころだ。



「よし、エレナ。飯食いに行くぞ」


「うん」



 確か、大通りの焼き鳥みたいなのの屋台のほかにも屋台があったからなんか適当に買い食いできるだろう。買い食い、なんと胸の躍る言葉だろうか。きっと俺以外の人間は今まで学校が終わったら親友、恋人なんかと買い食いとかして青春謳歌していたのだろう。何年遅れの春だろうか。



「さっき、なんでエレナあんなに食いついたんだ? 安い分にはいいだろうに」


「うーん、なんとなくかな。別に、私は人の事心配するような人間じゃないし」



 素直じゃない。

なんとなくそんな気はしたが間違いなく爺さんを心配しているのだろう。まあ、お婆さん助けて死んだ俺の言う事でもないが、人にやさしくするのは良いことだが世の中には悪い人間もいる。俺みたいに虚勢を張って人間に耐える人間にはならないで欲しいものだ。



 そういえば、大通りなのに人通りがほとんどない。田舎なんて言ってたが、ここ田舎の田舎なんじゃないか。飯食い終わったらどうせ冒険者ギルドに行くだろうから地図かなんか確認しておいた方がいいかもな。



「さて、とりあえず細かいのがないから金貨1枚を予算にまとめて買うことにしよう」


「了解。じゃあまずは串焼の屋台に行こ」


「うん、そうするか。というか一本いくらなんだろう。まあ、聞いてくるからエレナは待ってて」



 値段の表記がないせいでどれぐらいだかわからないな。



「すいません、この串に刺さってるやつ一本いくらですか?」


「これか? これは言い値で売るけどまとめて買ってくれんなら安くするぞ」


「あ、金貨つかえます?」


「金貨か。手数料はかかるがこの店で両替してやってもいいぞ」


「じゃあ、金貨1枚、全部銅貨にしてください」


「じゃあ、手数料の銅貨2枚で998枚になるな、その山ひとつで10枚だからってめんどくせえな、手数料は2枚でいいからまず銀貨にしてくれ」


「銀貨だと金貨1枚は何枚ですか」


「何枚ってお前100枚に決まってんだろ、そんなことも知らないで大金持ち歩てたのか、気をつけろよ」


「じゃあ、串焼き30本で銀貨1枚でお願いします」


「おお、気前いいな。まいどあり、袋に入れるぞ」



 革袋までついてきたんだけど銀貨にもそんな価値があったのか。元の世界のワンコインの代表格とは全く違く待遇だ。



「エレナ、ほいこれ」


「ありがと」


「とりあえず、あそこの広場に椅子があるみたいだから持ってくか」



 あ、しまった飲み物買い忘れた。うーんまあなくてもいいか。いや、異世界最初の食事に祝杯もつけられないのはかなり残念だな。



「エレナ、飲み物ってどこに売ってるかな」


「うーんとどっかの屋台にあるんじゃない」


「飲み物も屋台で売ってるもんなのか?」


「さあ」



 あ、あれか酒類ぽいけどエレナって何歳なんだろう。いや、まてよここは異世界か。どうも日本の癖が抜けないな。というか、俺もまだぎりぎり二十歳ではないが。



「エレナ、お前、酒大丈夫か?」


「うーん。飲んだことないからっていうかまだ何も食べたことないから」


「あ、それもそうか」


「アオバは飲めるの」


「うーん、飲んだことないからな。お互い挑戦してみますか」


「うん。そだね」



 こうして祝杯を挙げるため俺たちは次の屋台へと向かった。

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