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擬人化娘達と行く異世界道中  作者: 森田ムラサメ
第1章 異世界暮らしの始まり
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第3話 田舎町

「ようこそ、バルン村へ」



 そんなロールプレイングのような挨拶をされ街へと入った。持ち物といえばドラゴンから剥ぎ取った物ぐらい。まずはまあ、どっかでドラゴンの素材を売った後でテンプレではあるけど冒険者ギルドとやらに登録しようと思う。



「随分静かな街ね」


「そうだな、でも所々に出店があったりするから夕方ぐらいになったら人も集まるんじゃないか」


「ふーん。あ、あれ美味しそう」


「焼き鳥かな?」

 

 そこでは串に刺された何か肉っぽいものが焼かれている。何とも言えない香辛料のにおいが煙に乗って道に流れてきている。いかにも異世界って感じが良い。



「じゃあ、ドラゴン売ったら昼飯もかねて食いに来るか」


「いいの!?」


「ああ。お前が倒したんだから別にいいんじゃないか」


「でも、あれだけじゃだいぶ余るよ」


「いくらぐらいになるんだ?」


「うーん。鱗と角と羽が一枚だから、たぶん金貨20枚くらいにはなるはずよ。本当は肉とかも売れるんだけど……」 


「爆発で木っ端微塵になっちまったからな」


「ま、まあ、金貨20枚もあったらしばらくは遊んで暮らせるはずよ」


「ほう。しかしまあ、あんま金貨とか言われても相場がわからないから何とも言えないんだよな」


「さっきから、買い物したことないとか金貨を知らないってどこから来たのよ」


「というか、弓だったお前が何でそんなこと知ってんだよ」


「それは、呼び出されたときから知ってた感じかな」


「かなって……」


「じゃあ、あんたは何で呼吸の仕方を知ってるだって聞かれたらどうすんのよ」


「そりゃ、生まれた時からに決まってんだろ」


「金貨の話もそれと同じよ」


「そういうもんなのか」


「そうそう。あ、あれが商業ギルドじゃない?」


 そこには日本語で『商業ギルド』と書かれていた。

神様って凄いな。やっぱり良いことをすると良いことが返ってくるんだな。そんなことを考えているとまんま言葉が漏れた。


「お、日本語だ」


「ニホンゴ? なによそれ」


「ん、ああ。なんでもない」


「変なの。まあいいや、早速入ろっか」


「そうだな」



 しかし、今更あたりを見渡してみると日本語が書かれてたり、聞こえてくる言葉も日本語で、なんか本当にロールプレイングみたいだ。どれぐらいの文明レベルなんだろう。道行く人の防具とか武器とかはなんとなく中世みたいだけど、魔法なんかも存在するから分野によっては前の世界よりも高いものもあるかもしれないな。



 そんなことを考えながら商業ギルドへ向かうと建物の前で人にぶつかってケンカに……なんてこともなく至って普通にたどりついた。まあ、そんなことになったら俺の隣の人が木端微塵にしてくれるだろうけど。



「ここだな」



 扉に手をかけると木製でありながら重圧感のある立派な扉であることが伝わってくる。押すと鈍い音を立てながら開く。



 少し薄暗い室内にはほとんど人はおらず受付の人に声をかけられた。いきなり冒険者に睨まれるとかないのだろうかとも考えたが、ここは商業ギルドだった。血の気の多い冒険者がここに居るはずも無いわけだ。



「ようこそ、商業ギルドへ。本日のご用件はなんでしょうか?」


 猫なで声でいかにもマニュアル通りの対応だ。


「……」

「……」


「どうなさいました?」


「あ、いや俺たちその、田舎者で初めてこういうところに来たので」


「そうでしたか。それではカウンターの前でお待ちください」


「はい」


「……」

「ん、どうしたエレナ?」


「いや、田舎者なんて言ったら絶対なめられるし、その、恥ずかしい……」


「お前なあ、別に恥ずかしくはないだろ、あとちょっとした作戦の意味もあるから」


「声が大きい」


 そういってエレナは思い切り俺のことを叩いた。


「何で叩くんだよ?」


「別に」



 うーん、いまいち俺には女心がわからないらしい。それとも妙に豪華な弓だったし変なプライドがあるのだろうか。



「何か、お買い物ですか?」


「あ、いや。その、換金を」


「換金、と言いますと何かお売りいただけるんですか」


「はい。これなんですけど」


 ドラゴンの素材だ。翼で鱗とかは包んである。


「これはドラゴンの物でしょうか」


「はい。ドラゴンですけど」


「すみません、少々お待ちください。鑑定士を呼びますので」


「はい」



 そういって受付嬢はカウンターの奥の部屋に行ってしまった。さて、田舎者で相場がわからないを理由に金貨50枚ぐらいで買ってくれとでも言ってみるか。鑑定士を呼ぶぐらいの品なら相当珍しいはず。



 そんなことを考えているとエレナが話しかけてきた。



「ねえ、顔怖いよ」


「え、そうだったか?」


「うん。凶悪犯みたいだった」


「そうか……」



 無意識だった。うん。凶悪犯ね、あとで鏡があったら見てみよう。いや確かに笑うのは苦手だけど、そんなことを言われたら多少傷つく。


「すいません。お待たせしました。こちらがギルド直属の鑑定士です」


「いやどうも、鑑定士です」


 そういって丸禿のオッサンがやってきた。受付嬢みたいな人が来ると思ったのに残念だ。

 

 確かドラゴンは金貨20枚の価値はすると言っていたから、12、3枚は上乗せできるのかな?

まったく金銭感覚が無いからかなり強気でいかないとボラれそうだ。



「で、幾らくらいになりますかね。こちらとしては金貨50枚ぐらいいただきたいんですが?」


「50枚ですか? 流石にそれじゃあ利益が出ませんよ。しかし、珍しいですな子供のとはいえドラゴンだなんて、あなた方はさぞお強いんでしょう」


「いえいえ」


「そうですね、25枚でいかがですか?」


「田舎からわざわざ売りに来たんですよ、10枚ぐらいおまけしてください」


「35枚ですか? 流石にそれじゃあ……」


「そうですか、なら帰りますね。ここじゃ話にならない。もっと高値で買う人もいるでしょうから」


「あ、せっかく来て下さったなら……」


「でも、こちらも労力に見合った額を頂けないとね」


「分かりました。30枚でいかがでしょう」


「じゃあ、それで売りましょう」


「ありがとうございました。今後ともご贔屓に……」



 お、これは凄い。俺もしかしたら才能あるのか。

それとも神様のお力か。これを生かせば天才商人になることも可能なのでは。いやいや、流石にそれ程でも、あるな。



 ニヤつきながらギルドを出る。するとそのタイミングでエレナが話しかけてきた。


 

「話してる時の顔もう少しどうにかならなかったの」


「え? そんな酷かったか」


「酷いとかじゃなくて、詐欺師みたいだったよ」


「ちょっと、それ言ってくれよ。俺もしかして威圧してたのか」


「多分。だって最後の方、おじさん声震えてたじゃん」


 そうだったのか、完全に無意識。それに無自覚だ。悪気もないし脅迫めいたことがしたいわけでもないのに凶悪犯だの詐欺師だの酷い話だな。



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