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夢見る少女


澪峰小夜子の通う青坂南女子高校は県下でも優秀なお嬢様校として有名だった。


小夜子は特別お金持ちな訳でも、優秀な訳でもない平凡な女生徒であったが、制服がかわいいからという理由で入学試験をパスする程度の頭脳は持ち合わせていた。


物心付いた頃から夢とはいえキスは経験済みであることから、中学生の頃には色恋沙汰にはとりわけ興味もなく、高校からは女子校に通い出した小夜子にまともな恋愛経験はなかった。むしろ彼女は夢の主がいつか迎えに来てくれることを信じて止まず、17歳になっても恋人ができたことがなくてもどこか余裕の表情だった。


姿は見えずとも、きっと夢の主は優しく抱擁力のある方に違いないわ。だって、わたしのことを小さな頃から見守って来てくれたんだもの。


───小夜子は少し夢見がちな少女であった。



そして土曜日、夜明け前。


小夜子は甘く暖かな眠りの余韻に朦朧としながらも、瞼を少しだけ上げた。声は聞こえなくても、姿が見えなくても。


(今日も来てくれた)


高校生になった今でも、夢の主との秘密の逢瀬は当然続いていた。

初めは空気の中に気配を感じるだけだったのに、徐々にその輪郭や血の通う温かみを認識できるようになっていた。



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