回転寿司
三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうご。
スマホを傾けると、百合の花が咲く。
大きな白い花びらを外へと広げ、軸の黄色はよく映える。
けれど主張しすぎることもなく、百合の花の一部として馴染んでいる。
白い花びらには、所々に水溜まりができ、光を浴びて輝いている。
「……」
まぁ、我ながらうまく撮れたものだと思う。
だからこうして、スマホの壁紙にしているんだけれど……うぬぼれが過ぎるな。
あの子にも、この写真は好きだと言ってもらえたから、気分転換に別の物に変えても、気づけばこれに戻している。
「……」
回りはガヤガヤと騒がしい。
時折、スピーカーから呼び出し番号が鳴り響き、その度に店員が歓迎のあいさつをする。
ここまで徹底しているのも凄いと思う。
でも見た所、このホールに居る店員って1人か2人なんだよな。
その2人だけの声だとしたら、店内に聞き渡るほどの声を出しているのだから、恐れ入る。
「……」
私の家族はすでに着席をして、何を食べようかと頭を悩ませている。
私自身はいつも頼むものも順番も決まっているので、早々に済ませている。
たまに期間限定とか食べるけど、ここのはその辺には惹かれない。
―某寿司チェーン店に来ていた。
「……」
ネットで騒がれている、ガチャガチャのある方ではなくて。
なんと言えばいいのか……青色の看板の寿司屋?
あぁ、某超人気声優の声が聞き放題の店と言えばいいのか。
「……」
土曜日なので、家族で外食に来ているわけだ。
妹たちの部活帰りで、少々昼食には遅い時間だが。
おかげですんなりと入れるから願ったりかなったりだ。
「……」
目の前に座るのは、末っ子と母親。
私の隣には次女が座っている。
私はすでにスマホを持ってしまっているので会話には参加しない。
「……」
どうやら、次女のタイムカプセルの話で盛り上がっているようだ。
今年中学3年生の次女は、高校受験を待ちつつ、卒業を待っている状態だ。
私も同じ立場ではあるのだけど、こちらは推薦だからあまり心配されていない。
「……」
3年生でもタイムカプセルってしたっけ……と思いつつ、耳を傾けつつ、スマホをいじりつつ、注文がやってくるのを待っている。
全員中学は同じところに通っているので、早々ルールや行事が変わることはないと思うのだが。
「……」
あぁ……でも確かに何かやったような気もしなくはない。
何を入れたかとかほんとにしたかとか肝心な部分は覚えていないが……何せ私があの中学に通ったのは結果的に一年半ぐらいだ。
2年の二学期から入ってきたから。
「……」
中学の頃の記憶なんて……あの子との記憶しかない。
いやまぁ、確かにたかが数年前の記憶ではあるのだけど。
放課後に一緒に図書室に行ったり、掃除の時間に喋ったり。
目が悪かったから2人で並ぶように前の席に座ったり、昼休みは教室でダラダラしたり。
「……」
今もあまり変わらないような気もするが。
同じクラスではないから、休み時間にそう簡単に会えないのは、割としんどかったりする。
さすがに3年経てば慣れたくなくても慣れてしまうが。
「……」
しかしもう、そんな時期なのか。
まぁ、確かに、あっという間に夏休みを終えて、9月を迎えて、2週間が経とうとしている。
この後は、文化祭があって、3年生はより本格的に受験勉強に励むことになる。
私の推薦の試験日は12月だ。
「……」
それまでにまた出願の事とか滑り止めの事も考えないといけないし。
その前にそもそも、そこで合格できるように面接の練習と小論文の練習も詰めていかないといけないし……文化祭とかやっている場合ではなかったりする。
「……」
ま、3年生は舞台発表なんだけど、そんな難しいことはしない。
部活のほうも3年生と2年生でとはなっているが、当日は基本1,2年生で回すので、こちらはあまりすることはない。展示の準備はするけれど。
「……、」
これから先が面倒で億劫で、だるくなりだしたあたりで。
ピンポーンと、タッチパネルが音を出す。
ようやく注文したものが届いたようだ。
「……」
とりあえず、今は忘れて昼食を食べるとしよう。
……なんだこれ。
「……誰の注文、」
お題:タイムカプセル・百合・ネット




