とある衛星の話
とある衛星は人類にとって最も馴染みのあるものだった。
――故にこそ、宇宙進出に向けて一番初めの目標がこの衛星への到達となった。
人類とは恐ろしいものでその衛星への進出をあっさりと果たしてしまった。
「どうでした? あの衛星は」
問われて帰還したパイロットは語った。
「実に荒涼とした世界だ。我らが水に満たされた故郷とはまるで違う」
「それでは現状では資源らしい資源は見つからないと?」
「その場ですぐに使える資源は見つからないだろうが。それでもこの一歩は本当に偉大なる一歩だよ」
誇らしげに語るパイロットの言葉はそのまま全人類の誇りへと繋がった。
その通りだ。
今までは自らの星の中で生きるしかなかった人類が、確かに新しい星に――場所に辿り着いたのだから。
*
――遡ること、XXX億年前。
「新しい星は実に豊かな星だ」
「あぁ。水と緑に満たされている。こんな場所が存在していたなんてな」
人類の祖先というにはあまりにも遠すぎる時間の隔たりがある生き物たちは新たに見つけた星に興奮するばかりだった。
「さぁ、早く移住をしてしまおう。こんな何もない星なんか捨てて――」
……遥か未来で新天地としてこの星に人類が到達するのはあまりにも皮肉な話であるかもしれない。
まして、この場所から自分たちが来たなんて知りもしないのだから。




