第7話 紀伊馬
小さな会場が真っ暗になった。
そして開演のブザーとともに照明が照らされる。
そして舞台には3人の役者が。
1人は背が高くひと際目立つ。
演劇が続き照明が落ちると少ないながら拍手が。
出演者が横に並び「本日はありがとうございました」
と挨拶をして去って行く。
紀伊馬君の舞台が終わった。
この後私は演劇が終わったばかりの紀伊馬君に会いに行く。
楽屋訪問というものである。
狭い部屋で演者とお客が会話をしている。
私は紀伊馬君を見つけ声をかけた
「お疲れ様です。初めて見たけど面白かった」
「今日は見に来てくれてありがとう。文月さん」
そして演劇の内容を話していき、タイミングをみて
私は言った「以前小学校の裏手で紀伊馬君を見たって人がいた」
紀伊馬君は、驚き青ざめ狼狽している。
「クリスマスの頃って言ってた。スコップを持ってね」
「違う…違う…」
「紀伊馬君が犯人だったんだ」
「違う。俺じゃない。俺は盗っていない」
周りの演者とお客が何事かとこちらを見だした。
「紀伊馬君、外に出ようか」
私と紀伊馬君は楽屋を出た。
そして建物も出て、道端で会話を続けた。
「でもスコップ持った目撃情報は決定的だよ」
「わかった。確かに俺は掘り起こした。
でも中身は空だったんだ」
「それ本当?さっきから芝居していない?」
「違う。掘り起こしたのは認める。しかし空だったんだ。
頼む。信じてくれ」
紀伊馬君は私の両肩を手でつかみ、涙をながしている。
「まずは手を離して下さい」
「ああ。ごめん。冷静じゃなくなっていた」
「何故、掘ろうとしたんですか?」
「見てのとおりだよ。前にも言った通り、
公演には資金がいる。和久からタイムカプセルの
話を言われた時に思い出したんだ。
高そうなワインと金貨が入っているのを。
それで魔が差した」
「じゃあ本当に盗っていないんですね」
「ああ。絶対に盗っていない」
これで久喜君と紀伊馬君が掘り起こしたのがわかった。
ではどちらかが嘘をついているのだろうか。
すると日にちを思い出した。
久喜君の目撃情報は年末あたり。
紀伊馬君の目撃はクリスマスあたり。
ということは…
紀伊馬君の複数の連絡先を全て聞き、
別れることにした。
そして翌日また小学校の裏手付近に。
また紀伊馬君か久喜君の目撃情報が出るだろうと思った。
小さな子供がいたので写真を見せた。
「この中の人、見たことない?」
「あるよ」
「どの人?」
「このお姉ちゃん」
指を指したのは瑠璃川さんだった。




