第1話 タイムカプセル
普通の大学生。
私、文月は大学生になってから、学業では単位を気にし、
化粧も覚え、ちょっとだけアルバイトもしている。
ファッションにも気を配り、調べたりもする。
見た目も派手でなく地味でもなく、特徴がないと思う。
それは私だけではなかった。
幼馴染の綾瀬も似たようなものだ。
2人とも20歳になり、特に代わり映えのしない
大学生活を送っていた。
年の終わりが見えてきたころ、手紙がきた。
宛名をみると和久となっている。
誰だっけっと思い出しながら中身を読む。
『僕のこと覚えているだろうか。
小学生の時一緒にタイムカプセルを埋めた和久だ。
あの時成人式を迎えたらタイムカプセルを掘り起こそうと
約束したよね。
もうすぐ成人式がやってくる。
久しぶりに6人で集まって、一緒に掘り起こそう。
そして同窓会と成人の祝いをしようじゃないか』
そして連絡先が記されていた。
思い出した。
そういえばタイムカプセルを埋めた。
小学生の卒アルを引っ張り出す。
和久君がいた。
今どんなかんじだろうか。
私も見てみる。
若いと言うか幼い。
綾瀬も見てみる。
同様に幼い。
手紙には6人と書いてある。
私と綾瀬と和久君と…瑠璃川さんと久喜君と紀伊馬君だ。
翌日綾瀬に手紙のことを聞く。
綾瀬にも手紙が届いていた。
そして
「文月、タイムカプセルのこと忘れてたの?私は覚えていたよ」
そして参加するか聞くと、「もちろん」と言う。
何を埋めたか覚えているかと聞くと「まあ…ね」
と覚えているが言いたくなさそうだ。
私は昨晩考えたが何を埋めたか思い出せない。
ということは、大したものではなかったのであろう。
和久君に連絡をとってみた。
お互いの現状を話す。
すると同じ大学に通っていることが判明。
お互い驚いた。
和久君は大学以外ではアルバイトをやっていると言う。
何をやってるのと聞くと、バーテンダーと言った。
かっこいい。
せっかくなので綾瀬と一緒に和久君の働いているお店に
行ってみるという話になった。
大学構内で和久君と待ち合わせをした。
びっくりした。
イケメンだ。
隣りをみると綾瀬も驚いている。
一緒に和久君の働いているBARに向かうが、
バーテンダーをやってるだけあって、話が面白い。
イケメンで話し上手ってすごすぎでしょ。
こりゃもてるなと思った。
綾瀬をみると、狩人の目になっている気がする。
3人で店に着くと、和久君はもうすぐ店を開けるから
ちょっとだけ待っててという。
しばらくして店が開いた。
白いシャツに黒いベストとスラックスの和久君が
ドアを開けた。
イケメンすぎる。
私と綾瀬はカウンターに案内された。
カウンター越しに会話をするが、和久君の話は
まったく飽きない。
すごい才能だ。
何か飲むと言われメニューを渡された。
正直お酒は詳しくない。
綾瀬を見ると「会えて嬉しいみたいなカクテルってある?」
と、和久君に聞いている。
こういう頼み方もありなのか。
和久君は「かしこまりました」と答えて作り出す。
細長いグラスに薄いオレンジというか茶系のような色の
お酒が綾瀬の前に置かれた。
「キールというカクテルです。
カクテル言葉はあなたに出会えてよかった」
綾瀬はやや下を向いた。
イケメンからこんなことを言われて照れてるようだ。
私は「飲みやすいのでお願い」と注文した。
まるでオレンジジュースをそのまま出されたような
お酒を出された。
「ファジーネーブルです。ピーチリキュールと
オレンジジュースで、とても飲みやすいですよ」
1口飲むと確かに飲みやすい。
意味はあるの?と尋ねると、
このお酒にはそういうのはないとのこと。
なんか綾瀬に負けた気がした。
そうして昔話を。
綾瀬と和久君は小学生時代もよく覚えているようで、
話が盛り上がっている。
私は思い出したら時々参加というかんじだ。
そして肝心の待ち合わせの場所と時間を。
もういっそ当日3人で行こうかぐらいの話になった。
そして私達は店を出た。
タイムカプセルを掘り出す当日。
私と綾瀬は一緒に指定された場所に向かった。
和久君はアルバイトの用事があるとういうので、
別々に向かうことになった。
待ち合わせ場所に着くと、和久君と長身の男の人がいた。
和久君から紀伊馬だよと言われた。
綾瀬は「ひさしぶり~」と言って話し出した。
紀伊馬君は劇団で役者をやっているという。
私は役者なんてすごいと言うと
「小さな劇団なんで全然すごくないよ。
正直役者と名乗ってよいものか」という。
貧乏劇団で紀伊馬君は演劇の稽古より、
アルバイトをしてる時間の方が長いと言う。
そして女性がやってきた。
瑠璃川さんだ。
なんとなく覚えている。
てかめっちゃ美人だ。
現在はアパレル会社の営業をしているそうだ。
和久君と話してるのを見ると、
美男美女でお似合いだと思う。
最後に小柄な男性がきた。
久喜君という。
現在はフリーターをやっているとのこと。
いくつか掛け持ちでやってるとのことで、
年齢からすると、まずまず稼いでるらしい。
こうして6人が集まったので、
さっそく小学校の裏手へ。
移動中、綾瀬がスマホで5人の写真を撮っていた。
目的の場所に着き、
木の下に埋めたタイムカプセルを掘り起こすことに。
和久君がスコップを借りてきたので、
紀伊馬君が俺がやるよと言って掘り出した。
5人は悪いと思っていたが、
「こういうのは1番でかいやつがやるのが効率がいい」
と言ってくれた。
掘り出して少し経った。
綾瀬が「1メートルぐらいじゃなかったっけ?」
和久君も「どのぐらいの深さだっけ?」
久喜君は「そろそろじゃないの」
そう言っていると、金属製のものが見えてきた。
タイムカプセルを掘り出したのである。
ちなみにこれは耐腐食・防水ステンレス鋼製。
例えばプラスチックや木材だと
湿気や浸水や破損などで中の物に影響が出る。
和久君が親に頼んで買ってもらったものだ。
いくつものネジを回していく。
いよいよ8年ぶりにご対面というわけである。
そして蓋をとった瞬間、みんなが驚きの声をあげる。
中身がない。
空っぽだったのだ。




