ぱんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
20XX年、日本からパンダがいなくなった。
従来からの政治的緊張により、貸与の延長はなされず、返還期限がきたものから順次数を減らしてき、とうとう最後のパンダが上野動物園から旅立って数日。
夜明け前、日本列島の西端、暗雲の立ち込める東シナ海上空。
午前4時15分。
航空自衛隊南西航空方面隊司令部、那覇基地から2機のF-15がスクランブルを受けて飛び立った。
国籍不明機による、領空侵犯。
もはや確認するまでもなく、常態化している彼の国の挑発行為だった。
鈍色に輝く灰色の機体、ステルス機の姿はもうすでにロックオンされている。
数度の警告にもかかわらず、一切気にした様子もない腹立たしいほどの無頓着さで悠々と飛び続ける様。
こちらが撃つわけがないと確信しきっているのが明らかだった。
そしてその認識はこれ以上ないほど正しいもののはずだった。
だけど今は違う。
日本にはもうあれがいないのだ。
白と黒の、この世で最も愛らしい存在が。
日本人の皆が親しみ、何よりも大切なものとしてすべてを捧げてきたはずのあれが。
「ぱんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
彼に迷いはなかった。
それが日本人の総意だった。
パイロットの絶叫と共に、灰色の空を切り裂いて飛び行く空対空ミサイルAAM-4。
数秒後、迸る閃光。
大切なものを奪われた人々の思いは敵機に直撃し、レーダー画面からは高速で飛翔していた光点が完全に消失した。
そして数時間後。
一気に緊張感が極限まで達した中、猛烈な抗議を受けた日本政府の公式見解が発表された。
「ぱんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
内閣総理大臣による、宣戦布告に他ならなかった。
皮肉にもパンダ外交と呼ばれた政治的関係の有効性が何よりの形で証明されたのだった。
おわり




