第27話:ソフィア
街――貴族や平民が関係なく通う街で騒動が起こっていた。
「逃げろ! 巻き込まれるぞ!!」
「《《候補者同士》》の戦いだ!!」
貴族、平民、商人、大人子供が関係なく、その周囲から逃げ出していく。
そして逃げていく者達とは正反対の場所に、二人の人間がいた。
片方は礼装を着た白毛の青年。腕輪に『魔石』がはめ込まれていた。
もう一方の者はフードを纏っていて姿は分からない。
しかし、フードから覗く翼のネックレスにはめ込まれた『魔石』が、この人物――候補者狩りも候補者である事を示していた。
両者は街中にも関わらず、互いの武器である杖とトンファーを構え、呪文を唱えて戦っていた。
木々をなぎ倒し、建物を損壊させ、地面に穴が空いても、どちらも戦いは止めなかった。
「ドルクガ・ファング!!」
「ゴウ・レオレイド!!」
白髪の候補者が杖を振るうと、現れたのは巨大な魔犬の頭部が現れた。
それに対し、候補者狩りがトンファーを振るうと巨大な獅子の頭部が現れ、両者の術は互いに衝突した。
魔犬と獅子。互いがお互いを喰らおうと数分ぶつかり合うと、やがて均等が崩れた。
魔犬の頭部に亀裂が入り、獅子が最後は噛み砕いてしまった。
そして獅子は、そのまま白髪の貴族へ襲い掛かった。
「そ、そんな……! 私の最大呪文が破れ――うっ、ぐわぁぁぁぁ!!」
最大呪文が破られ、震える貴族だったが最後は獅子に飲み込まれ、その場から吹き飛んでしまう。
そして地面へ腹から叩きつけられると、苦しそうな表情で候補者狩りを見ていた。
「……」
そんな相手に候補者狩りは近付き、目の前へ立った。
それを見て、青年は慈悲を願った。
「まっ! 待ってくれ……! 『魔石』は見逃してくれ……! わ、私は……貴族王になるつもりはないんだ! 少しでも長く生き残ればそれで良い! だ、だから頼む! 見逃して――」
「黙りなさい」
しかし候補者狩りは、その言葉を一蹴した。
そして青年の腕輪へトンファーを叩きつけ、青年の『魔石』は粉々に砕け散る。
「ひぃぃぃぃ!!」
容赦なく『魔石』を砕き、危うく腕ごとやられそうだった青年は情けない声をあげた。
それを見て、候補者狩りは静かに言った。
「消えなさい」
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その言葉に青年は立ち上がり、フラつきながらも背を向けて走って逃げて行った。
それを見届けた候補者狩りは、それを見ていて静かに呼吸を整えていた。
「……フゥ、これで8人目。でもまだ遠い。――待っててね、レイ。必ず助けてあげるから」
候補者狩りがそう言った時だった。
背後から馬の足音と共に、声が聞こえた。
「ソフィア!!」
そう呼ぶ声。その声の正体を候補者狩りは知っている。
振り返った先には、見覚えのある蒼髪の少女が険しい表情で自分を見て立っていた。
「……ステラ」
そう言って候補者狩りがフードを取ると、そこから薄紫色の綺麗な髪と共に少女の顔が――ソフィア・ロウガーデンが顔を見せた。




