第25話:襲撃!候補者狩り
「レイド!!」
「っ!――氷刃剣!!」
先に仕掛けたのは向こうだった。
候補者狩りは呪文で両手に持っているであろう、フードで隠した武器を強化して突っ込んで来た。
それに対してステラが俺を振るい、真っ正面からぶつかった。
けど、それで正解だ。俺は氷の魔剣だぞ。
まともに触れれば武器だろうが凍結する。
目の前で鍔迫り合う様に押し合う中、相手の武器が凍り始めた。
「っ! ゴウ・レイド!!」
「きゃっ!?」
『なに!?』
この野郎、凍りついたからって更に強化してきやがった!
迷いがないのか、こいつ!?
「バク・レイド!!」
『させるか!――アイス・シルド!!』
俺は咄嗟にバランスを崩したステラを守る為、盾魔法を唱えると、俺達の間に雪の結晶の盾――アイス・シルドが現れた。
そこへ候補者狩りが武器を強化しながら突っ込んできて、盾に怯むことなく武器を振るってきた。
そしてアイス・シルドと激突した瞬間、巨大な爆発が起きた。
『こいつ!? 殴ったら爆発する魔法か!?』
幸い、アイス・シルドは破られてないが亀裂が入っていた。
なら一層のこと、砕けてやるよ!
『ステラ! 盾を砕く! あれやるぞ!』
「――っ! 分かった!」
こういう時、思考がリンクするのは助かる。
説明がいらないから、連携には便利なんだ。
そして俺は亀裂の入ったアイス・シルドを砕けさせると、氷の破片が周囲に飛来した。
『今だステラ!』
「アイスガ・ランス!!」
よし! 砕けた破片が一斉に氷の槍になったぞ。
それをステラがコントロールしてくれて、一斉に候補者狩りへ放たれた。
「っ!?――ソニク!」
「うそっ! 肉体強化まで!?」
『速い! 高速移動――脚強化か!』
俺達が槍を放った瞬間、間合いにいた候補者狩りの両足が光った。
そう思った時には、一瞬で奴は俺達と距離を取っていた。
『だけどやる事は同じだ! ステラ! 奴を逃がすな!』
「分かってる!」
俺の言葉にステラはアイスガ・ランスの軌道をすぐに修正し、今度こそ奴へと放った。
――周囲を覆う氷の槍。これだけの数、防げる筈がない!
俺はそう判断して、少なくとも相手へのダメージを期待していた。
だが、俺の想いと裏腹に奴は、腰を低くし、両腕を高速で連打していた。
「バク・ガンレイド!!」
「遠距離魔法……!」
おいおい嘘だろ、万能過ぎるだろ。
あれは衝撃波なのか、奴が両腕を連打する度に飛んでくる爆発する何かがアイスガ・ランスとぶつかった。
しかも適当じゃない。確実に狙いを定めて放ってきていた。
『なんて奴だ……! ステラ! 一気に決めないとマズイかもしれない!』
「うん! ニブル! 大きい魔法行くよ!!」
俺達は頷き合うと、俺は一気に魔力を解放した。
それと同時に巨大な魔法陣が背後に現れ、ステラも身構えた。
そして、アイスガ・ランスが無くなった瞬間、俺達はそれを放った。
「『アイスガ・ハルバドン!!』」
これでどうだ! 雷小僧すら倒した攻撃魔法だ!
「『いっけぇぇぇぇぇ!!』」
巨大な氷のハルバードが候補者狩りへと向かって行く。
これだけの攻撃だ。きっと倒せる!
事実、奴も流石に驚いた様子を見せた。
「なっ! 大きい!?――なら! 《《ラドゥガ》》・レイガドン!!」
『GAOoooooooooooooN!!!!』
「向こうもデカイ!?」
『獅子の姿を模した衝撃波か!?』
奴が放ち、目の前で現れたのは巨大な双頭の獅子だった。
間違いなく奴の最大呪文だ。そうだと思いたい!
『ステラ! 俺の魔力をやるぞ! 絶対に打ち破れ!!』
「分かってる!! うおぉぉぉぉ!!!」
俺達はありったけ、可能な限りの魔力を込めた。
一応、余力は残すが相手の攻撃が重い!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハァァァァァァァ!!」
ステラも額から汗を滝の様に流している。
候補者狩りの声も辛そうだ。
俺達と奴の攻撃がぶつかり合い、周囲に衝撃波が及ぶ。
馬車の従者も思わず隠れてしまっているが、それで良い。
目の前だけだ。目の前だけに集中すれば良いんだ!
「うおぉぉぉぉぉぉ!!」
「ハァァァァァァァ!!」
アイスガ・ハルバドンと敵のラドゥガ級呪文。
その両方に亀裂が入った瞬間、大きな爆発と共に互いの攻撃は消滅した。
『相殺か!?』
「くっ……ごめんニブル! 押し切れなかった!」
仕方ないさ。相手の攻撃もかなり重かった。
絶対に負けないと、そんな覚悟を感じたぐらいだ。
『仕方ないさ……だが向こうも無傷じゃない筈だ!』
俺はすぐに候補者狩りへ意識を向けた。
あれだけの攻撃だったんだ。向こうだけ無傷という訳はない。
俺はそう思い、相手を見ながら砂煙が晴れて行くの待った時だ。
相手の姿が見えた。
その姿は衝撃波の影響だろう。フードが僅かに破損していた。
そして両腕から、ついに奴の武器が見えた。
『トンファー!?』
奴の両腕から見えたのは筒の様に見えたが、間違いなくトンファーだった。
――トンファー、そして肉体強化……まさか……!?
俺は嫌な予感がした。
だがまだ予想でしかない。本能が確信を得ていても早まるな!
「あなたは誰! なんでこんな事するの!」
「……」
ステラの言葉に相手は何も言わなかった。
ただ破損したフードの胸元を隠す様にし、その場から去ろうとしていた。
『逃げる気か!?』
「待って!」
ステラが叫んだが、相手はそのまま去っていってしまった。
――だけど、俺はその時に見てしまった。
候補者狩りの胸元にあったのは『魔石』の入ったネックレスを。
《《翼》》の生えたネックレスを。
「誰だったんだろう……」
ステラには見えなかったのは幸いだったのか、それとも不幸だったのか。
俺には分からない。だが分かった事はある。
――候補者狩りは《《ソフィア》》だ。




