第11話:VS大地の貴族・グーラン・アスライト(2)
俺を強く握り、ステラはグーランへと駆けて行く。
それを見てか、グーランは槌を再び地面へと叩きつけた。
「アースド・スネイガ!!」
うおっ!? こいつ、いきなりデカイ呪文を使って来やがった!
地面から俺等を呑み込める程の岩の蛇が、牙を向け、口を開きながら迫ってくるぞ!?
『まずい! 早く防御の魔法を――』
「大丈夫! このまま刀身に魔力を頂戴! ニブル!」
おいおい!? 大丈夫なのか!
俺は咄嗟に防御魔法を使おうとしたが、ステラはそれを拒否した。
だがステラも戦い慣れているのは事実だ。
俺と意識がリンクしているのもあって、考えだって分かっての提案の筈。
『あぁ! よし分かった! 好きにしろ! 受け取れ魔力!!』
俺はステラの案に乗り、更に魔力を自身に纏うと、俺は周囲を凍らせる程の強烈な吹雪を纏った。
「行くよぉ!!」
目の前に岩の蛇が迫った時、ステラは立ち止まった。
すると、そのまま両足に力を入れて踏ん張ると、俺は思いっきり振った。
そして、岩の蛇とぶつかると、俺の刀身はそのまま岩の蛇を口から両断していく。
くそっ! なんて重い攻撃してくるんだ!
間違いなく、攻撃の重さだったら雷小僧よりも上だぞ!
けどステラも俺も負けてねぇ!
ステラは手から血が出るんじゃ、そう思う程に俺を握り、一切態勢を崩さずに岩の蛇へ立ち向かっていた。
「どりゃあぁぁぁぁぁ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉ!!』
そして気付けば、そのまま岩の蛇を両断した。
両断された蛇は崩れながら消えていき、それを見たグーランは目を大きく開いて驚いた様子だ。
「なっ! 馬鹿な!! 魔法がまともに使えない下級貴族が、何故これ程の呪文を!?」
「うおぉぉぉぉぉぉ!!――氷刃剣・狼牙一閃!」
驚いている暇はねぇぞ。今度はこっちの番だ。
魔法の才能はステラにはない。それは確かだが、武器の扱いや戦闘能力だったらお前よりも遥かに上だ!
俺が内心で叫ぶ間にも、ステラは一気に高速で間合いを詰めていた。
そして一気に氷結の一閃をグーランへとお見舞いした。
「ぐあっ!? そ、そうだ……この氷魔法がそもそもおかしい!! これ程の魔法や魔力をどうやって――!」
浅かったか。
奴はまた槌で攻撃を防ぎ、そのまま吹き飛ばされたが、明らかに最初より余裕が消えている。
冷や汗だろう。俺の影響で周囲が冷え込み、氷結する中、奴は汗びっしょりだ。
『やれる! いけるぞステラ!』
「うん! もう少しだと思う!」
ステラも終わりが近いのを確信したのだろう。
僅かに肩の力が抜けるのを俺は感じた。
ステラからしても余裕ができたのだろう。
侮りじゃない。強者側としての確かな予感で。
だが、その言葉にグーランの額に血管が浮かぶのを俺は見た。
「舐めるな!! 下級貴族が!! この程度で私は、負ける上級貴族じゃない!――グラン・スピアドン!!」
そう叫びながらグーランが槌を叩きつけると、今度は巨大な岩の突起が次々と生え、俺達に迫ってきた。
けど分かる。ステラとリンクしているから俺にも。
ステラには大量の突起物が迫る中でも、奴への道が見えていた。
「視えた! そこだ!!」
ステラは飛び出す様に走ると、次々と突起物を蹴りながらグーランへと向かって行った。
まさに八艘飛びだ。本当に身体能力と戦闘力は凄いな!
そんな事を俺が思っていると、念話がステラから掛けられてきた。
――ニブル! <アイスガ・ソルドン>を!
――よっしゃ! 任せろ!
俺とリンクしているからステラ自身に魔力・魔法云々は関係ない。
だから自然と念話も使えるし、こうやって意思疎通が容易なのが一番助かる。
俺も準備がし易いって訳だ!!
「行くよニブル!!」
『おう!』
気付けば一瞬で奴の間合い!
奴も驚いた顔をしているが、撃つのこっちが速い!
「『アイスガ・ソルドン!!』」
「っ!――ゴレムス・ハンド!!」
なっ! 岩の腕――!?
野郎、タッチの差で呪文を唱えて攻撃を防ぎやがった。
俺とステラが放った氷の斬撃は、巨大な岩の腕に防がれたが、そのまま岩の腕を破壊はした。
だがやはり直撃は出来なかったか、服を乱しながら奴は俺達に背を向けて逃げていた。
「馬鹿な……! この私が追い詰められているのか!? 私は<大地>のグーランだぞ! それをあんな……下級貴族にぃ!!」
奴は髪も乱して平常心を失い欠けていたが、目からは闘争心が失われてはいなかった。
そんな相手を見てステラも再度身構えた。
「惜しい……浅かった」
『気にするな! 奴の魔力だってもう少しだ! 次で決めるぞ!』
追い詰め過ぎた相手程、質が悪いのは魔物と戦って理解している。
それはきっと、人間にだって該当する筈だ。
実際、アイツ笑ってるから奥の手があるんだろうな。
「クククッ……アハハハハ! 褒めてあげましょう下級貴族――いやブルーハーツ家! まさかここまでやるとは、腐っても古き英雄の家柄って事ですか。だが! これで勝ったとは思うな! 見せてあげましょう! 私の最大呪文――」
奴はそう言うと、槌を再び地面へと叩きつけた。
だが今までと違うのは、その土に込められた魔力量だ。
先程の比じゃない魔力が込められた槌を叩きつけると、周囲に地響きが鳴り始めた。
「これは……!」
『デカイのが来る……!』
俺達は身構えた。
きっとこれがグーランの最後の攻撃になるだろうから。
そして、それは訪れた。
「出でよ!!――<グランド・テオ・ゴレムス>!!」
『Aaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!』
『なっ! デカイ!!』
「これってゴーレム!?」
咆哮と共に目の前に現れたのは、一つ目の岩の巨人――ゴーレムだった。
今までの魔法のどれよりもデカく、そして強い力が込められている。
そして、それ程までの呪文なのだろう。
グーランは額からは疎か、全身から汗を流しながら魔力を維持していた。
「ハァァァァァァ!!! これが……私の……最後の……最大攻撃呪文だ!!」
まさに必死の形相だった。
これで全てを終わらすと、負けられないんだと、奴からの覚悟が感じられた。
だがこっちだって負けられないんだ。
折角、出会えた持ち主をいきなり敗北者にはさせねぇ!
『行くぞステラ!! こっちも最大の攻撃魔法だ!!』
「うん! お願いニブル! 行くよ!!」
ステラのイメージと、俺のイメージを一つに。
そしてそれを呪文にするんだ!!
――アイスガ・ハルバドンじゃ、まだ足りない!
それを越えた呪文を創るんだ!!
「『ブリザイド・ヘル・ニブルヘイム』!!」
それは巨大な吹雪――巨大な氷の魔剣――俺を模った様な剣だった。
その剣は真っすぐに飛んでいき、ゴーレムを砕きながら、やがて貫いた。
そして完全に氷結させると、ゴーレムは完全に砕け散った。
だがそれで終わらない。そのままグーランへと魔法は向かって行く。
そんな状況下で俺は確かに見た。
敗北が決まっても尚、笑みを浮かべるグーランを。
「アハハ……出し切ったんです。悔いは……いや、やはり悔しいですね」
その言葉を最後にグーランは、ブリザイドの衝撃に吹きとばされた。
そして、その衝撃によって奴のネックレスの『魔石』は砕け散った。
『終わった……ハァァ』
「終わったね、ニブル」
気を張り過ぎて情けない声を出す俺と違い、ステラは俺を一回振るうと、鞘へと戻した。
本当に強い子だよ。あれだけの激闘だったのに笑ってるんだから。
そして同時に優しい子なんだよね。
「……ねぇ、ニブル」
ステラは何か言いたそうにしていた。
でも、言わなくても分かるさ。
『分かってるよ……治療して欲しいんだろ? あのグーランと、雷小僧を。それぐらいの魔力は残してるさ』
「うん……ありがとう、ニブル」
散々、下級貴族って馬鹿にされてたのにこれだよ。
まぁ良いか。勝者の特権って事だな。
俺はそう思いながら倒れているグーランと雷小僧の方を見るのだった。




