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第10話:VS大地の貴族・グーラン・アスライト(1)

 眠りについていた俺とステラだったが、不意に『危険感知』のスキルが発動した。


 瞬間、俺とステラは同時に目を覚ました。


『ステラ! 敵襲だ!!』


「うん! 行こうニブル!」


 ステラは鎧も付けず、マントだけ羽織い、俺を持ってテントの外へと出た。


「あれ? お嬢様……どうしました?」


 俺達が外に出ると、そこには焚火の前で見張りをしていた騎士達がいたが、今はそれどころじゃない!


「皆! 警戒して! 敵襲!!」


「なっ!」

 

 ステラの叫ぶ様な声に騎士達はすぐに立ち上がって剣を抜いたが、それと同時だった。


 地面を揺らす轟音と共に、地面が割れ、爆発の如くテントや騎士達を吹き飛ばしたのは。


『飛ぶぞステラ!』


 俺は間一髪ステラだけでもと『浮遊』を使い、ステラごと宙に浮いた。


 騎士達には悪いことをしたが、そこまでの余裕はなかった。

 

「皆!? ニブル!! お願い!」


『分かった! すぐに降りるから待ってろ!』


 俺は焦るステラの言葉を聞いても、可能な限り冷静でいられるよう頑張った。


 騎士達が心配なのも分かる。

 だが今の攻撃には魔力が感じられた。つまり敵が近くにいるんだ。


 油断は出来ないが、地上に降りたステラはすぐに倒れている騎士達の下へ向かい、俺をかざして回復魔法を使った。


 すると、倒れている騎士達はすぐに意識が戻った。


「うっ……お嬢様……! ご無事ですか……!」


「一体なにが……!」


「分からない! けど敵がいるのは確か! 候補者かもしれないから皆気を付けて!」


 ステラの言葉に騎士達は立ち上がると、剣を構えて周囲を警戒し始めた。


 ステラも周囲を見渡すが、土煙のせいで今一視界が悪い。


 くそっ、まさかの連戦の可能性。それを考えてなかったのは俺のミスだ。

 

 スキル『危険感知』がなかったら危なかった。

 しかし敵はどこだ? もっと『危険感知』を鋭くして――背後!?


『ステラ! 後ろだ!』


「っ! 誰!!」


 俺の言葉にステラは振り返って俺を構えると、そこには土煙に紛れて立つ、一人の青年が立っていた。


 茶髪で少し痩せ型だが、奴の獲物である槌を構える姿を見る限り、見た目以上に筋力はあるんだろうな。


 しかもこれだけの攻撃をしといて、ニヤリと笑っているのもあって不気味だ。


『ステラ! 奴を調べるぞ!――『鑑定』!』


 <鑑定>

 グーラン・アスライト

 魔力:920

 スキル:大地魔法・槌術・魔石(呪文強化)・鉱物鑑定・鉱物加工術


『大地魔法に槌術……それに『魔石』!? コイツも候補者か!』


「グーラン・アスライト……って事はアスライト家!?」


『知ってるのかステラ!?』


 俺の言葉にステラは力強く頷いた。


「アスライト家……大地魔法を得意とする上級貴族だよ!」


「ほう、私を知っているとは……野蛮な下級貴族とはいえ褒めてあげましょう」


 うわっ、なんだこの纏わりつく様な口調は。

 変態インテリって感じですげぇ嫌いだわ。


 しかし『鑑定』で『魔石』ってあったし、やっぱりコイツも候補者なのか?

 

 俺はジッと奴を観察してみると、奴のネックレスに雷小僧やステラと同じ『魔石』が填まっている事に気付いた。

 

『ステラ! やっぱり『魔石』だ! 奴は候補者だぞ!』


「うん! 分かってる……! 鉱石や採掘で財を成す上級貴族だもん! 候補者じゃない筈がない!」


 ステラはそう言うと俺を握る手が強くなった。

 そして手を出して、後ろで身構える騎士達を制止させた。


「皆は下がって! ここは私とニブルが!」


「しかしお嬢様!?」


「どの道、これは候補者同士の戦いだから……お願い」


 ステラが願う様にそう言うと、騎士達は悔しそうに噛みしめながらも下がってくれた。


 ハッキリ言って助かる。

 配下を使っていいとは聞いていたが、優しすぎるステラじゃ逆効果だ。


 きっと騎士達が心配で戦いに集中できなくなるし、悪いが足手纏いだ。

 これで戦いに集中できるぞ。


 俺は内心でそう思っていると、大地小僧――グーランはニヤリと笑っていた。


「クククッ……! 私は別に全員の相手でも良かったですが、そこは腐っても候補者。良いでしょう。貴族らしく一騎打ちと参りましょう」


 そう言ってグーランは槌を地面へ叩きつけた。


 だが悪いな。こっちには俺がいるんだ。

 一騎打ちじゃなくてすまんな。


『やるぞステラ!』


「うん! やろうニブル!」


「ククク……何やら気合いは入っている様ですが、所詮は下級貴族。すぐに同じ目に遭わせてやりますよ。――アイツみたいにね!」


 そう言ってグーランは槌を、とある場所へと向けた。


 その動きに俺とステラは思わず向いてしまったが、そこには一人の青年が倒れていた。


――っていうか、アイツは!?


『雷小僧!? どうして……!』


「ライド・ボルッテクス!? 何があったの!?」


「制裁ですよ! アナタに敗北し、上級貴族の顔に泥を塗った奴にね!」


 あの野郎。雷小僧は嫌な奴だったが、コイツはそれ以上のクズだな。

 

 他者をボロボロにしておいて、何とも思ってない態度で笑っていやがる。

 こんな奴が万が一、貴族の王になったら世も末になるぞ。


『負けられないぞ、ステラ!』


「うん! 最初から負ける気はないよ!」


 ステラはそう言うと俺を握る手を強め、構え直した。

 それを見てグーランは槌を再び地面へ叩きつけた。


「アハハハハ! まさか私にも勝つつもりですか! 嘗めない方が良いですよ! 貴族位はボルテックス家に劣るとはいえ、私も上級貴族の候補者!――勝てると思わない事です!」


――っ!? 奴の槌に魔力が!? 槌の強化呪文か!


『ステラ! 攻撃が来るぞ!』


「ハンマガ・グランダム!!」


 俺が叫んだ瞬間、奴の槌が魔力を浴びながら一気に伸びた。

 そして槌部分がステラに迫った瞬間、俺は咄嗟に防御に出た。


『させるか! アイス・シルド!!』


 俺が唱えた瞬間、俺達と槌との間に、巨大な雪の結晶の形をした盾が現れた。


 そして、奴の槌はそのまま盾と激突すると、盾には僅かに亀裂が入った。

 だが想像の範囲内だ。魔力を適当な量にして作った盾だ。


 僅かな亀裂は許容範囲だ。

 奴も驚いている顔をしているし、まずは上々だ。


「氷の魔法だと……! まさか下級貴族風情がそんな魔法を使えるとは!?」


 伊達に氷の魔剣じゃね! 俺とステラを嘗めんなよ!


「ありがとうニブル!――よし! 行くよ!!」


 今度はこっちの番だと言わんばかりに、そこは流石はステラだ。

  

 攻撃を防ぎ、僅かな隙が生まれたのを見逃さず、彼女は俺に吹雪を纏わせながら走り出した。


 そして一気に間合いに入ると、そのまま俺を振るった。


「氷刃剣・狼牙葬」


 おぉ! まるで狼の牙の如く! 

 巨大な氷狼を彷彿させる一撃をステラが放ったが、グーランも咄嗟に槌で攻撃を受け止めた。


「ぐあっ!?」


 受け止めたグーランだったが、ステラの一撃は凄まじかった様だ。


 衝撃に耐えきれず後ろに下げられたグーランは、槌を振り回して付いた氷を払うと、再度身構えた。


「やりますねぇ……! これはボルッテクスよりも楽しめそうだ!」


『まだ余裕がありそうだなアイツ……ステラ!』


「大丈夫、私だって余裕バリバリだよ!」


 そう言ってステラが俺を握る手が強くなるのを感じる。

 どうやら、やる気は十分みたいだな!


 よし! 間もないが第二戦目! 

 やってやろうぜ!


 こうして俺とステラの候補者の戦いの第二戦目が幕を開けた。



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