調和の未来(第1部 / 最初の目的地)
永遠の家族宣言式から一週間後の朝、第三都市は出発の準備に沸いていた。慶一郎たち四人が世界を旅して愛を伝える『愛の巡礼』に出発する日だった。
朝の空気は水晶のように透明で、薄いピンク色の雲が空をやわらかく彩っている。街角には見送りの人々が集まり、花束やお守りを手にして別れを惜しんでいた。風は温かく、桜の花びらが舞い踊って、まるで祝福の雪のように美しい。
中央広場には、特別に用意された『愛の馬車』が停まっていた。それは虹色に輝く美しい馬車で、古代龍族の技術と人間の工芸が融合した芸術作品だった。馬車を引くのは、アルヴィオンが贈ってくれた天馬で、純白の翼を持つ美しい存在だった。
「準備はできましたか?」セリュナが旅装に身を包んで現れた。彼女は古代龍族の旅服を着ており、銀色の刺繍が朝日に美しく輝いている。
「ええ、完璧です」エレオノーラが天使の旅装で答えた。彼女の翼は旅用に小さく畳まれているが、神聖な光は変わらず美しい。
「愛のペッパーミルも準備万端です」マリエルが聖女の旅装で微笑んだ。彼女の装いは質素だが、神聖な威厳に満ちている。
「俺も準備完了だ」慶一郎が特製の料理道具を背負って現れた。『真の調和の炎』を使える特別な調理器具一式を携えている。
アルヴィオンが見送りに現れた。「娘よ、そして新しい家族よ、気をつけて旅をするのですよ」
「お父様も、お元気で」セリュナが父に抱きつく。
「第三都市は私が守ります」アルヴィオンが約束した。「ここは皆さんの帰る場所として、いつまでも愛で満たしておきます」
仲間たちも次々と見送りの言葉をかけた。
「必ず戻ってきてくださいね」サフィが涙を拭いながら言った。
「私たちも、ここで愛を伝え続けます」カレンが騎士らしい決意で答えた。
「外交ルートは確保しておきます」レネミアが王女らしい配慮を示した。
「科学的サポートも万全です」ナリが通信用の魔法道具を渡した。
馬車に乗り込んだ四人の最初の目的地は、『忘れられた村』と呼ばれる小さな集落だった。そこは世界の辺境にある村で、長い間戦争や災害に見舞われ、人々が愛を見失っている場所だった。
天馬の翼が広がり、馬車は空高く舞い上がった。眼下に広がる世界は美しく、緑の森、青い川、金色の麦畑が絨毯のように続いている。
「美しい世界ですね」エレオノーラが感嘆した。
「この美しい世界に、愛を取り戻させましょう」マリエルが決意を込めて言った。
「古代龍族として、この世界を守る責任があります」セリュナが威厳を込めて答えた。
「よし、最高の料理で、みんなを幸せにしてやる」慶一郎がべらんめえ調で張り切った。
数時間後、一行は『忘れられた村』に到着した。村は確かに荒れ果てており、人々の表情は暗く、希望を失っているように見えた。
「ここが最初の挑戦の場所ですね」エレオノーラが村を見下ろした。
「大丈夫です」マリエルが愛のペッパーミルを握りしめた。「愛の力があれば、必ず希望を取り戻せます」
四人は村の中央広場に馬車を止めて、すぐに活動を開始した。




