表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

159/182

愛を信じる者(第2部 / 新たな調和)

儀式の最中、慶一郎は重要な決断を迫られていた。

「慶一郎よ」アルヴィオンが厳かに言った。「最後の仕上げに、あなたの調和の炎の全てが必要だ」

「全てって?」慶一郎が尋ねた。

「あなたの調和の炎を、世界の修復に完全に使い切るのです」アルヴィオンが説明した。「しかし、そうすると…」

「俺の料理の力が弱くなるってことか?」慶一郎が察した。

「その可能性があります」ナリが科学的な分析をした。「調和の炎の量子場を世界規模で展開すれば、慶一郎様の個人的な能力に影響が出るかもしれません」

エレオノーラが心配そうに言った。「慶一郎様、無理をなさらないでください」

「そうです」マリエルも反対した。「あなたの料理の力は、私たちにとって大切なものです」

しかし、慶一郎は迷わず答えた。「やるさ。世界中の人々の幸せのためなら、俺の力なんてどうでもいい」

「慶一郎様…」セリュナが感動に震えた。

「でも、約束してくれ」慶一郎が妻たちを見回した。「もし俺の料理の力が弱くなっても、あんたたちは俺を愛し続けてくれるか?」

「当たり前です」三人が声を揃えて答えた。

「あなたの料理が美味しいから愛しているのではありません」エレオノーラが涙を流した。「あなただから愛しているのです」

「神様への信仰と同じです」マリエルが愛のペッパーミルを握りしめた。「条件つきの愛ではありません」

「千年間、あなたを待っていたのは、調和の炎があるからではありません」セリュナが確信を込めて言った。「あなたの優しい心があるからです」

その言葉に勇気づけられて、慶一郎は調和の炎を最大限に燃やした。

「それじゃあ、やってやるぜ!世界中のみんなを幸せにしてやる!」


慶一郎が調和の炎の全てを解放した瞬間、奇跡が起こった。

世界中の消失したもの、失われた記憶、切れた絆、すべてが完全に復元された。それだけではなく、人々の愛の力も以前よりも強くなっていた。

第一都市では、感情を失っていた人々が涙を流しながら抱き合っている。第二都市では、記憶を操作されていた人々が真実の愛を思い出している。そして、世界中のあらゆる場所で、愛の奇跡が起こっていた。

しかし、最も大きな奇跡は、慶一郎自身に起こった。

調和の炎を全て使い切ったはずなのに、彼の心に新しい力が宿っていた。それは『愛の調和の炎』と呼ぶべき、これまでよりもさらに強力で美しい力だった。

「これは…」慶一郎が自分の手のひらを見つめた。

「愛を与えることで、より大きな愛を受け取ったのです」アルヴィオンが説明した。「これが愛の真の法則です」

アガペリア女神の声が空から響いた。

『よくやりました、愛する者たちよ。あなたたちの愛が、世界を救いました』

女神が再び地上に降臨し、四人を祝福した。

「慶一郎よ、あなたの新しい力は『真の調和の炎』です。これまでの調和の炎を超えた、愛そのものの力です」

「真の調和の炎…」慶一郎が新しい力を感じていた。

「エレオノーラ、あなたも『愛の天使』として覚醒しました」女神がエレオノーラの翼に触れた。すると、翼が虹色の美しい光を放ち始めた。

「マリエル、あなたは『愛の聖女』として完成しました」愛のペッパーミルが金色に輝き、神聖な力を増していた。

「セリュナ、あなたは『愛の古代龍』として新たな境地に達しました」セリュナの鱗が虹色に輝き、美しさを増していた。

「そして、アルヴィオン」女神が最後に言った。「あなたは『愛の王』として復活しました。虚無の王ではなく、愛の王として」

四人の力が完全に一つになった時、世界は新しい時代を迎えた。愛と調和に満ちた、本当の意味での平和な時代が始まったのだった。

夜空に満天の星が輝く中、すべての戦いが終わった。愛が虚無に勝利し、世界に真の調和がもたらされた記念すべき夜だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ