虚無の真実(第2部 / 償いと希望)
アルヴィオンの告白を聞いた仲間たちは、深い同情と理解を示した。
「アルヴィオン様」レネミアが外交官らしい冷静さで言った。「過去は変えられませんが、未来は変えることができます」
「そうです」サフィが明るく励ました。「今は愛を取り戻したんですから、これから良いことをすれば大丈夫です」
カレンも騎士らしい率直さで答えた。「過ちを認めて償おうとする姿勢こそ、真の勇気です」
アルヴィオンが深く頭を下げた。「皆の優しさに、心から感謝する。しかし、私が犯した罪は重い。世界中の人々に与えた苦痛を、必ず償わなければならない」
「どのように償うつもりだ?」慶一郎が尋ねた。
「まず、虚無の力で失われたすべてのものを復元したい」アルヴィオンが決意を込めて答えた。「建物、記憶、そして人々の絆…すべてを元に戻す」
ナリが科学的な観点から質問した。「それは可能なのでしょうか?」
「虚無の力を完全に制御できるようになった今なら、可能だ」アルヴィオンが説明した。「虚無は破壊の力だが、同時に創造の力でもある。無から有を生み出すことができる」
「それって、とんでもなく高度な技術ですね」ザイラスが感嘆した。
「ただし、一人では無理だ」アルヴィオンが仲間たちを見回した。「皆の愛の力が必要だ。特に、慶一郎の調和の炎と、娘セリュナの愛が」
セリュナが前に出た。「お父様、私ができることは何でもします」
「ありがとう、セリュナ」アルヴィオンが娘を愛しそうに見つめた。「そして慶一郎よ、特別な料理を作ってもらえないだろうか?『記憶と絆を蘇らせる料理』を」
「任せろ」慶一郎が力強く答えた。「最高の料理を作ってやる」
エレオノーラとマリエルも協力を申し出た。
「天界の力も使ってください」エレオノーラが天使の翼を広げた。
「愛の女神様の祝福も込めます」マリエルが愛のペッパーミルを掲げた。
ヴォラックスが古代龍としての知識を提供した。「古代龍族に伝わる『創造の儀式』を使えば、失われたものを完全に復元できる」
「では、今日の夕方から儀式を開始しよう」アルヴィオンが決定した。「世界の修復作業を始める」
昼過ぎになると、世界各地から希望的な報告が続々と入り始めた。
「第四都市から連絡です」ザイラスが通信魔法石を握りしめた。「消失していた人々が戻り始めています。しかも、記憶も完全に戻っているとのことです」
「第五都市でも同様の現象が」レネミアが外交網からの情報を伝えた。「『調和の音楽院』も完全に復元されています」
リーザが料理人ネットワークからの報告をした。「各地の料理店でも、失われたレシピや食材が戻ってきています」
慶一郎が安堵の表情を浮かべた。「アルヴィオンの力が、良い方向に働き始めたってことだな」
「しかし、完全な復元にはまだ時間がかかります」アルヴィオンが説明した。「特に、人々の心の傷を癒すには、愛の力が必要です」
その時、街の人々がぞくぞくと中央広場に集まり始めた。記憶を取り戻した彼らは、アルヴィオンが虚無王ネクロファーグだったことを知っているはずなのに、恐怖ではなく感謝の気持ちを表していた。
「アルヴィオン様」一人の老人が前に出た。「あなたが私たちの記憶を戻してくださったのですね」
「いえ、私は皆さんに苦痛を与えた罪人です」アルヴィオンが頭を下げた。
「でも、最後は愛を選んでくださった」老人が微笑んだ。「それが大切なことです」
子どもたちも、怖がることなくアルヴィオンに近づいてきた。
「おじさん、セリュナお姉さんのお父さんでしょ?」一人の少女が無邪気に尋ねた。
「そうです」アルヴィオンが優しく答えた。
「だったら、いい人だね」少女が笑顔で言った。「セリュナお姉さんは優しいから、お父さんも優しいに決まってる」
その言葉に、アルヴィオンの瞳に涙が浮かんだ。
「子どもたちは、純粋ですね」マリエルが感動して呟いた。
「ああ」慶一郎も頷いた。「愛は、憎しみよりも強いってことの証明だな」
夕日が西の空を橙色に染め始めた頃、アルヴィオンは立ち上がった。
「では、世界修復の儀式を始めよう」アルヴィオンが宣言した。「皆の愛の力で、この世界を完全に癒そう」
街の人々も、仲間たちも、みんなが手を繋いで大きな輪を作った。愛と希望に満ちた儀式が、いよいよ始まろうとしていた。




